「ちょっと、アスラン! どこ行くの」

「もうここにはいられない」

「……え?」

「ここは、俺たちの楽園じゃなかったんだ」


 と言って、アスランは小屋から出た。


 僕は、出会ったばかりの時と同じように彼の背中を追って。


 僕たちは宛てもなく歩いた。ひたすら歩いて、歩いて、歩き続けた。


 喉はカラカラで焼け付くように熱くて、足はボロボロになっても。


 アスランは構わずに歩き続けた。


「お願いだ! ララを……妹を助けてくれ」


 道中、人を見つける度にアスランは、助けを求めてその足元に縋りついた。


 しかし、皆、ララを見ると血相を変えて慄くだけだった。中には、失神した者もいる。


 無理もない。彼らにとっては、死体を抱えた少年が目の前に急に現れたのだから。


「……ララを見殺しにするやつは駄目だ。化け物と同じだ。殺してやる」


 決まって最後、アスランは彼らを撃ち殺した。


『お兄ちゃんにもう誰も殺させないで』


「……弾は大事に使わないともったいないよ」

「分かってるさ」


(……ごめん、ララ。約束守ってあげられなくて)


 ララを失ってぷつりと糸の切れたアスランは僕にも止められなかった。皮肉を言うので精々だ。


 自分達が生き抜く為に、いったい何人の罪のない人の命を奪ってきただろうか。


 果たして、この生にそれだけの価値はあるのだろうか。


 考えても答えは出ない。


 それでも、やはり僕たちは前に進んだ。


 未知の力に突き動かされるように。


 自分の達の最期を彩る終焉の場所に導かれるように。

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