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「ちょっ! 何してるの!」
鈍器でおじいさんに殴り掛かるアスランを僕は必死で止めた。
「この野郎がサラに触ろうとしたんだ! 思った通りだ! 俺たちを太らせて売る気だったんだよ!」
サラは大量の汗を搔き、震えながら眠っていた。
確かにおじさんの手には、布団が握り締めてあった。
しかし、それはララにかかっていた布団とは別のものだ。
「……そうだね」
僕はそのことに気づかないふりをして答えた。もう考えるのは疲れた。
少しして冷静になった僕たちは、ララが眠っている間におじいさんだったものの死骸を森の奥深くに棄てた。
その間犬は騒ぎ立てていた。
まるでおじいさんの死を
アスランは吠え盛る犬に溜め息を吐くと、一つ引き金を引いた。
きゃうん。犬は小さく鳴いて倒れた。犬の死骸はおじいさんと一緒に埋めてあげた。
「おじいさん達、急な用事で田舎に帰ったみたい」
「そう……」
翌朝、目覚めたララはおじいさんと犬がいなくなったことを深く追求してこなかった。
それは、僕にとって救いだった。いや、救いだと思いたかった。
それから僕たち三人は、木を切って小さな畑を耕しながら、小屋で暮らした。
その生活は、本当に穏やかで果てのない旅を続けていた日々が夢みたいだった。
でも、“幸せは長くは続かない。”この言葉もまた真実であるとやがて僕は知ることになる。
砂嵐が巻き起こるくらいに風が強い日、ドンドンと誰かが小屋の扉を叩いた。
「すまない! 少しの間、泊めてくれないか?」
「俺たちも戦争から逃げてきたんだ。そしたら、あんた達の家を見つけて」
「駄目だ! 今すぐ、出ていけ!」
アスランが怒鳴る。
「ここは、俺たちの楽園だ! 誰にも踏み入らせない!」
「アスラン……」
威嚇の為に銃を構えたアスランの前を小さな影が立ち塞がった。
「ララ!」
銃声と悲鳴が重なったのはほとんど同時だった。
「ララ! ララ!」
アスランは銃を投げ出してララの元へ駆け寄った。
「お兄ちゃん、もう止めて……」
「何を言ってるんだララ、死ぬな」
ララの腹に空いた小さな穴からたぷたぷと赤い血が溢れ落ち、水溜りを作り出していた。
「お願い、ウィンク……。お兄ちゃんを止めて……お兄ちゃんにもう誰も殺させないで」
その言葉を最後にララの手が地面に垂れた。
「ララ! ララ! ララァ!!」
アスランは泣きながらララを揺さぶった後、ララの身体を抱えて立ち上がった。
「大丈夫……大丈夫だララ。今、兄ちゃんが助けてやるからな」
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