3
旅の最初こそは順調だった。
食料に困ってやむを得ずロバを解体した頃、ララが体調を崩した。
僕とアスランは交代でララを背負った。
「お前、見かけによらず力持ちだよな」
「まあね。頑丈だって父さんのお墨付きだから」
「頭以外はな」
「ララ、アスランが虐めてくる!」
「ふふっ」
ララは徐々に背中の上にいる時間が長くなった。
瓦礫の中からビスケット缶を拾ったこともある。ビスケットは、3人で分け合って食べた。
ララには2切れ。僕とアスランは1切れずつ。それも僕にとっては楽しい思い出だった。
とある日は、寝床に丁度良い廃車を見つけた。
「僕が見張るから、2人は眠ってて」
「俺がやるから、寝てろよ
お前の見張りは信用ならない」
「じゃあ、交代で」
「駄目だよ! 3人一緒じゃないと、私寝ないからね!」
「……分かったよ、皆で寝よう」
ララを真ん中にして寄せ合って眠った。狭い車内だったけど、よく眠れた。
「……雨だ!」
髪の毛にぶつかった小さな感触に僕は顔を上げた。
「酸性雨か」
アスランが渋い顔をした。
「まだ世界が平和だった頃は、皆がどんなに願っても、雨なんか降らなかったのに。神様は酷いよな。こういう時だけ降らせるなんて」
荒れ地には雨除け可能な建物なんてなく、暫く酸性雨に打ち付けられた。
「お前……頭」
「?」
「なんでもない」
不自然に言い淀むアスラン。
ララの調子は悪化の一途を辿るばかりだし、僕も視界がノイズがかかったように
(酸性雨の所為で、ハゲてしまったらどうしよう……)
せめてもの救いは東に進むにつれ、草木の割合が増えたことだ。
いつかは楽園にも辿りつける。それを考えることで憂鬱さを吹き飛ばした。
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