第一章 化け物狩りの少年
1
「誰かー! 生きている人はいますか?」
父さんとの思い出が詰まった地下室に別れ告げ、地上に這い出してから幾日か経った。
けれども、行く先々で映像で見た美しい山河や緑の田畑は広がっておらず、ひび割れた茶色い大地がだだっ広く続いているだけだった。
地面から少しだけ顔を覗かせている不揃いな大きさの白い棒は、恐らく白骨化した人間の骨だろう。
何日も雨が降っていないようだ。川も完全に干上がっている。
もう、この地球上には僕以外に生存者はいないのだろうか。
それを考えると途方もない憂鬱感に襲われて、引き返したくなる。
(……いや。弱気になっちゃだめだ。絶対に生きてる人間を見つけるんだ!)
ぱちんと頬を叩き、気を引き締めて再び歩き出した時だった。
バァンバァン。
どこかから二発、銃声が響いた。
(……生存者だ!)
「おーい!!」
僕は夢中で音のする方角へ駆け寄った。
近づくと、大人の男と少年とが銃で撃ち合っている場面に遭遇した。
結果は驚くべきことに、少年が勝った。
頭から倒れた男性の手がぴくりと動いたが、少年が男の顔を原型が無くなるまで銃器で何度も殴って追い打ちをかけた。
「ちょっと、やり過ぎだよっ!」
暴挙を止めようと必死な僕に、赤髪の少年がギラリと視線を動かして威嚇する。
「あ? なんだよ?! お前も
年は14、15といった所か。大きな布で覆われた口元以外の隙間からは、日に焼けた褐色の肌が見える。
「ば、化け物って?」
「んー、でもまだ子供だしな」
少年は何やらぶつくさ呟き、途端に僕から興味を失ったようにそっぽを向くと、慣れた手付きで死体の懐を漁り始めた。
「そういう君だってまだ子供じゃないか……っ」
僕は少年の態度に憤慨するも、死体の足に引っ掛かってみっともなく転んでしまった。
「……いや、やっぱりないな。鈍臭いし」
少年は僕の失態を真顔で分析すると、もう用が済んだらしくすくっと立ち上がった。
「待って!」
僕は少年を引き止めた。
「ねぇ、お願いがあるんだけど……」
「んー?」
「僕も君の仲間に入れて」
「……お前を?」
少年は心底驚いた表情で僕を見やった。
「うん。駄目かな?」
地上で初めて出会った人間が彼だというのもある。
けれど、僕は淡々と同胞を殺す目の前の少年についてもっと知ってみたくなっていた。
「……そうだな。狩りが出来たら、お前を仲間と認めてやるよ」
少年は一瞬だけ考え込むような仕草をすると、悪戯を思いついた子供のようにニヤリと笑った。
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