第31話 破門


 修学旅行から帰ってきたら、伯父さんたちに土井の柴漬けと抹茶のクッキーのお土産をサプライズで渡したら伯父さんたちは目を丸くして喜んでいた。


 勇一には妖怪グッズのご当地バージョンの京都・牛若丸のキーホルダーをあげ、あの人には多めに買った柴漬けと大根の漬物、抹茶のシフォンケーキ、そして、あぶらとりフィルムを上げた。


 あの人は最近、寝込みがちで昼間から、荒んだようにうたた寝している日が多い。


 お酒に溺れる日は格段に減ったものの、何かとあれば嗚咽の詩が聞こえた夜も多かった。


 何をあの人は咽び泣き、何をあの人は悔やみ、枯れ果てるまで明日を当たり散らすしかないのか、僕には口を噤むしかない。


 


 こっそり持ち歩いたあの書房で買った本を、隠し事を邁進するかのようにじろじろと窺いながら、部屋で籠って読んだ。


 少年詩人のアルチュー・ランボーという象徴派の仏蘭西の詩人の韻律詩編で、ランボーが十九歳のときに執筆したのが『地獄の季節』なのだという。


 


 それも、この作品でランボーは文学に絶縁状を叩きのめし、詩壇と孤高の如く、破門した。


 いくら、古典的な翻訳ものとはいえ、十九歳でここまでの詩を作成できたのが凄い、と純真に思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る