第26話 デガダンスを気取って。
そのリストカットとかいうそれと、正義を武装し、苦笑し、溶け切った大衆性を成敗するための訓練を一緒にされたら困る、と僕は星の傷を辿りながら、しくじるように思う。
切っているときも多少の痛みは感じたが、流れる血の美しさに惑わされて、思わず、余計な心配は堕ちて、夜の底で息を呑んだからだ。
歳月が流れ落ちるのは桜が盛りを過ぎる晩春のように早い。
もう、少年期も最終地点に到達しようとする僕は誠心誠意な子供じゃないんだ、と不覚する。
父さんの件も考えないようになるべく努めたけれど、デガダンスを気取って、僕は姑息にもその不可思議な謎を斜め読みしている。
あれから、母さんのアルバムを探して、何とか、藁にも縋るように、手がかりを探そうとしたのだが、母さんの大学時代の写真はまるで存在していなかった。
予め、その秘密保持契約書を焼失させたたかのようにアルバムは忽然と姿を消していた。
あの人が留守にしたとき、隙を狙って、物置部屋を探ってもそれらしき手がかりははたと見つからず、僕の出生の固すぎる蕾のような事実は暗雲と化してしまった。
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