第27話 僕の安定性


 ああ、埃に背中が被ってもやっぱり、見つからない。


 それ以上、僕の方向性から言及するのはかなり、無理があったように感付いた。


 三学期になったらお待ちかねの修学旅行があるし、ほらほら、寸暇を惜しんで、束の間の安穏を貪ろうじゃないか。


 


 行き先の予定地は定番の京都と大阪だ。


 ちょうど、建国記念の日の前の、梅見月の中旬にあって、向こうでは新雪が降っているかもしれない、と温暖な南国に住んでいる人間特有の雪国に対する期待感にかすか、傷だらけの胸が膨らんだ。


 先刻、進路調査が初めて行われ、僕は第一志望に偏差値の低い定員割れの県立高校と書いた。


 


 うちには余裕がある貯蓄がない。


 学力じゃ、私学に代表されるような、トップ高も夢じゃないだろうけど、たぶん、大学に行く高額な費用も皆無だろうし、僕は一生涯どん尻のまま、地底を這いつくばるのだろうか。


 それなら、どこの高校に行こうが僕の安定性には一切、関係がないじゃないか。


 


 本当は何がしたいのか、全くもって見当がつかない。


 果てしない未来が見えず、覆いかぶさるような過去ばかりに、狭苦しく頭が垂れ、垂れていく。


 


 このまま、きつすぎる事態は暗転して、どこまでも奈落の底まで堕ちて行きそうなそんな不具合な予感がする。


 


 修学旅行で一番期待している名所は京都だった。


 一応、楽しい行事もあるし、幸運も巡ってくるから、物事をもう少し、良好に考えるよう努力しなくちゃいけない。


 ああ、そうだよ、泥沼に嵌ったら二度と軽々とは這い上がれないから。



 

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