第17話 僕自身の羅針盤
努々、僕は適格に僕自身の羅針盤を把握できないんだ。
どうして、ここに、――星の河を行き交う、大型船の構図を触れずにはいられないのか。
触れてはいけないと理会しながらも僕は詰まるところ、その湖沼の浮島に隠した三宝を触れようとしてしまうのか。
人を見切った大人でも無神経に大人を信頼し切ってしまう未熟な子どもでもない、何か、別の存在になりたい、と煩悩を見初める僕がいる。
子供のままならいい訳じゃない、と薄々、思っているのに。
ただ、今生を須らく、生きる僕に嫌気が差し込んだだけだ。
僕はその夜の淵、青い手鏡で僕の屈折した鬱屈した真顔を見た。
特徴のある一重瞼に辰砂のように赤い唇とまるで、新雪のように光る白い頬。僕は机上に置いて思わず、その手鏡を叩いた。
記紀神話にも比類を見ない、美妙と醜悪さと生死を天秤にかけた、磐長姫のように遠方の山の頂まで投げたかった。
なぜ、普段は誰からも慕われるような人望を持つ、聖職者のあいつはあんな過ちを僕に不埒に押し付けたのだろう。
あの、してやったりに三角に曲がった目つきと、獲物をしとめた点豹のように歪んだ唇。
ああ、地上の楽園に大火を欲した、悪魔と標榜したあいつの顔。
あのとき、僕もあいつも同様、本当に人間じゃなかったんだ。
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