第16話 青く、青く、決して


 あの話は本当だった、と薄や金木犀が清風と戯れる初霜月、僕はついに確信した。


伯父さんのあのつれない寒々しい態度と、茉莉子さんたちの揺すり満つような言動を目視して、僕は総合的かつ客観的に判断した。


 父さんに関わる、あまりにも複雑で入り組んだ重大な秘密。


 箴言に僕は欲する。


 くだらない。


 本当にくだらない。


 まるで、やらせのメロドラマみたいだ、と僕は愚鈍に僕自身の不信感を嘲弄する。


 僕の父親がどんな素性を持ち合わせている境遇で、どんな羨望を浴びるような人生を歩み、忌むべき存在の僕の出生によって、どんな算段を狂わせたのか、本当はどうでもいい、とこんな僕であっても薄々とは感付いてはいるんだ。


 


 文化祭も無事、終われば、来月の玄冬にかけて、刻々と迫る神楽の季節が到来する。


 銀鏡ではこの時期が一番そわそわしている、と伯父さんは前に会合で嬉しそうに話してくれた。


 神楽には普段の銀鏡の人口の倍以上の大勢の人出で賑わうという。


 


 北極星への愉楽を目前に控えても成長期に雨後の筍のように変化する、僕の身体の急激な変化は侮れない。


 ぎこちなく、ボーイソプラノの高音から低音へ声変わりをしてから、どれくらい青く、清く、決して、甘酸っぱくない、縷々とした月日が流れたのだろう。


 この重荷を抱えた身体はますます、時流に抗うのを逃すまい、と普遍性を持って諦めを受けいれた、大人になろうと努めていく。


 

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