第007話「反撃」

「真弓伏せて!」


 唐突にかけられた声に真弓はすぐに反応した。身をかがめ頭を守る。


 ダァ――ン!


 衝撃音と共にマモルの身体が吹き飛んだ。

 スローモーションのようにゆっくりと吹き飛ぶ弟。


「マモル!?」


「真弓!」


 マモルを吹き飛ばしたのは軽トラックだった。

 運転しているのは銃夢だ。玄太郎は助手席で硬直してしまっている。これだけのゾンビに囲まれてしまっていては【蘇生者】は指を動かす動くことられできないだろう。


「バカ真弓! 何してるの!」


 銃夢が身を乗り出して叫ぶ。

 恐る恐る身を起こす真弓の隣に抜身の刀を持った刀子。


「刀子ちゃん……」


 彼女らは危険を顧みず真弓を助けに来てくれたのだ。

 

「……早く乗って。奴らが来る」


 真弓が瞳を潤ませながら彼女を見上げた。

 刀子に手伝ってもらいながら真弓は車の荷台に乗り込んだ。

 迫りくるゾンビたちを銃夢は銃で、刀子は刀でけん制する。それぞれの武器には【三渓の湯】が仕込まれているのだ。


「弓と矢は回収してある」


 刀子に言われ真弓は頷いた。

 

「――来たよ!」


 前方にゾンビの群れ。

 銃夢がアクセルを踏む。

 キュルキュルキュルキュル!

 土煙を上げて車が走り出した。

 車はゾンビを跳ね飛ばし進む。


「銃夢! できるだけ!」


「ああ、わかってる!」


 銃夢は巧みに車を操作しできるだけゾンビに当たらないようにして車を走らせていた。いくら【蘇生】で身体の傷が回復するといっても回復不可能なほどのダメージを与えてしまっては意味がない。


「ゴメンね。いつか【蘇生】させてあげるから!」


 真弓は遠ざかるマモルの姿を目で追った。


「もう、無茶ばかりするんだから」


 銃夢に言われ真弓は涙が出てきた。

 みんなにいっぱい心配をかけてしまった。

 それだけでなく、みんなを危険な目に合わせてしまったことに自責の念に駆られる。


「なにかあったらみんなでフォローする。そういう約束」


 刀子が真弓の肩を優しく撫でる。


「うん。ごめんね」


 真弓はしばらくの間鳴きながら謝り続けていた。

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