第363話 みんなで遊ぼう!
気を取り直そう。今日はココナナに街を案内してもらうのだ。魔術具関連の道具や素材を扱っている店などを案内してもらう予定である。
店を見て回った後は、昼食の時間までココナナの工房で時間を潰すつもりだ。
昼食後は昨日と同じく写真撮影である。今日は昨日とは別の店だ。店への案内は昨日に引き続き、ティシアがしてくれる。
正直、昨日の夜から今日の案内を楽しみにしていた。
なにせ"
それに、"魔導鎧機"以外のココナナの作る魔術具にも興味を惹かれたのだ。
彼女の工房にはこれまで製作した魔術具がいくつもあるとのことなので、是非とも見せてもらうことにした。
なお、非常に残念な話だが、私では現状"魔導鎧機"に搭乗することはできない。
なにせ尻尾が邪魔になるからな。内部に入れないのである。
衣服と同じように穴を開ければいいのではないかと思ったのだが、私の尻尾の太さは、付け根の部分ともなるとかなりの太さとなる。
尻尾を通すには、"魔導鎧機"に巨大な穴を開けることになってしまうのだ。
ココナナの"魔導鎧機"にはただの装甲というパーツは一つもないらしく、仮に尻尾のために穴を開けてしまうと、彼女の現在の"魔導鎧機"と比べて大幅に性能が低下してしまうそうなのだ。
「では、いっそのこと5mぐらいの巨大な鎧を作ったらどうかな?」
「それなら問題無いかもしれませんが、それってもう鎧じゃないですよね?それに、リガロウに乗れなくなりますよ?」
だよなぁ…。今しがた想像した巨大な鎧もカッコよさそうではあるのだ。だが、あくまでも人間のサイズだから魅力を感じたのであって、人間のサイズを超えるようになってしまったら私はあまり意味を見いだせないのだ。
今後はリガロウと共に旅をするのだから、あの子に乗れなくなるなど論外である。
そんなわけで、私は現状"魔導鎧機"への搭乗を諦めざるを得なかったのだ。
角や翼のように尻尾も完全に体内に仕舞うことができれば、一気にこの問題が解決するのだが、生憎と進化を果たした今でも、私は尻尾を体内に全て納めることができないでいるのだ。
私の知る竜人であるグリューナやマーグにも、この問題を解決する術はない。
グリューナのドラゴンとしての特徴は頭部の角だし、マーグが持つはドラゴンの特徴は瞳である。参考にできないのだ。
まぁ、仕方のないことだと思って"魔導鎧機"に搭乗するのは諦めよう。まだ見ぬココナナ作の魔術具は大量にあるのだ。
ココナナに案内してもらった魔術具関連の店の製品は、かなり当たり外れがあるように感じられた。
品質に大きなばらつきがあるのだ。おそらく、一つ一つ個人で制作しているのが理由だろう。
店に陳列されている商品なのだが、ココナナならば時間はかかるかもしれないが製作自体は可能な筈だ。
それでもこういった店に足を運ぶのは、やはり少しでも早く完成させたかったからなのだろう。
それに加えて、別の理由もあるようだ。
「その中で特に品質のいい品、いわゆるアタリを探すのも醍醐味ですね!」
どこか掘り出し物見つける宝探しのような面白さを覚えるらしい。
そういえば、ココナナの言う、アタリの製品は、"魔導鎧機"にも使われているのだろうか?
「ココナナの"魔導鎧機"も、ここで購入した部品が使用されているの?」
「いえいえ!自分の命を預ける相棒ですからね!サニーのパーツは全て私が作っています!」
となると、掘り出し物探しは完全にココナナの趣味か。アタリを見つけることで、何らかの満足感を得られるのだろう。
「流石にサニーには使用しませんけど、こういったパーツは魔術具全般に使用されますからね。決して無駄ではありませんよ!」
ふと思い浮かんだ魔術具の試作品を製作する時などは、こういった店で購入した製品は非常に重宝するらしい。
魔術具の部品はどれも精密な物ばかりだからな。いくらココナナが手先が器用な窟人だとしても、流石に全ての魔術具を部品から作っていたら時間が掛かってしょうがないとのだろう。
ココナナから説明を聞きながら店内を見て回っていると、ひときわ目立つガラスのショーケース内に、マギモデルが展示されているのを確認できた。
当然だが、ピリカが製作したわけではない。おそらく、この店の主人が製作した物だろう。彼女のマギモデルと比べると、所々に荒が見受けられた。
金額は金貨250枚。おおよそ平均的な価格と言ったところだろう。
そういえば、ココナナはマギモデルに興味は無いのだろうか?
「アレは金持ちの道楽ですからねぇ…。冒険者である私達には無縁の玩具ですよ」
「アレを動かすの、楽しいんだけどなぁ…」
私は当たり前のようにマギモデルを楽しんでいるが、やはりそれは冒険者からしてみれば異常なのだろうな。
冒険者ランクが上がれば報酬は跳ね上がるが、それと比例するようにランクに合った装備や道具をそろえるのに膨大な資金が必要となるのだ。
装備や道具をそろえる必要がない私は依頼の報酬をすべて娯楽や美食につぎ込めるが、本来の冒険者は例え高ランクと言えど、一般人が想像するよりも資金に余裕があるわけではないようだ。
場合によっては"
ココナナとならマギモデルについて長々と語り合える気がしていたので、あまり興味がなさそうなのは残念である。
あ、そうだ!
私はティゼミアでピリカと共に自分でマギモデルを作ったんじゃないか!
家にいる子達へのお土産ではあるが、ここで使わせてもらってもいいのではないだろうか?
勿論、渡すのであればだれにも触れられていない完全な新品の状態の方が良いのかもしれないが、動作確認を口実に、ココナナにも使用してもらおう!
白状をすると、展示されているマギモデルを見ていたらマギバトルを行いたくなってしまったのだ。
「ココナナ、貴女の工房に着いたら、ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけど、良いかな?」
「勿論です。何でもは無理ですけど、可能な限りご要望に応えるつもりです」
良し、言質は取った。後はマギバトルを行うための施設なのだが、コレは手っ取り早く『
というわけで現在地はココナナの工房だ。施設は作業を行うための地下室と、思った以上に整理整頓されており、私達全員が入っても全く狭さを感じていない。
そこで私は何をしているかというと、『我地也』を用いてマギバトルのバトルスタジアムを製作中だ。勿論、許可は取ってある。
なお、何を作成するかは伝えていない。というか、"ダイバーシティ"達はマギバトルのバトルスタジアムをそもそも知らなさそうだ。
これからマギモデルで遊ぶと伝えたら、どんな反応をされるんだろうな?
マギモデルを気に入っている私としては、喜んでもらったり楽しんでもらえると嬉しいのだが…。
やはりココナナを含めた"ダイバーシティ"達はマギバトルのバトルスタジアムを知らなかったようだ。スタジアムが完成してもそれが何なのか理解できず、全員首をかしげている。
バトルスタジアムから少し離れた場所に手ごろな高さの作業台があったので、そこに私が製作した4体のマギモデルを置いて行く。
それぞれ私用、ラビック用、ホーディ用、ウルミラ用として作ったものだ。
「え…ええ…」
「うわぁ…あれだけで金貨1000枚は軽く飛びそうだぁ…」
「さっきの店で見たのより、できが良くね?」
「あの…ノア様、ソ、ソレはまさか…」
目の前の光景に、工房主のココナナすら状況が追い付けていないようである。
思わず震えた指で設置されたマギモデルを指さして、私に詳細を求めている。
「見ての通りマギモデルだよ。私がピリカと仲がいいのは新聞で知っていると思うのだけど、この国に来る前に彼女の店を訊ねたら、マギモデルの制作を手伝うことになってね。まぁ、そのおかげでこうしてマギモデルの製法を学べたから、自分で楽しむために何個か作らせてもらったのさ」
私とピリカが知己を得ていたこと自体は知っていたようだが、マギモデルを製作していたことは知らなかったようだな。
まぁ、私が彼女と共にマギモデルを製作していたのは、ティゼミアの人間達すら私が街を出るまでは知られていなかったのだ。
あれから1ヶ月以上が経っていたとしても外国のことでもあるわけだし、この国にまで情報が伝わっていなかった、ということなのだろう。
マギモデルを指差すココナナの瞳には輝きが宿っている。この様子だと、自分で購入する気自体は無かったようではあるが、是非一度は遊んでみたかったようだ。
「舞台も用意したことだし、昼食までコレで遊ぼう。実はソレ、私の家で一緒に暮らしている子達へのお土産なんだ。動作確認をしたくてね。付き合ってもらえる?」
「ハイヨロコンデーーー!!」
物凄い喜びようだ。小説の一説にあった、新しいおもちゃを買い与えられた子供のような顔とは、こんな感じなのかもしれないな。
なお、ココナナ以外のメンバーも誘ったのだが、壊してしまったら大変だからと言って参加を拒否されてしまった。
私が作ったマギモデルは、ピリカの制作したソレ以上に頑丈なので、遠慮する必要が無いのだが、壊してしまうというのは建前かもしれないな。
どちらかというとココナナ以外の"ダイバーシティ"達からは、恐れ多さのようなものを感じられた。ようなものというよりも、そのものなのかもしれないな
まぁ、私とココナナが遊んでいるところを見たら、彼等も遊びたくなるかもしれない。
遊び相手が増える状況は、こちらとしては非常に嬉しいのだ。
「遊びたくなったら、いつでも言ってね?」
そう告げてから、私とココナナは早速マギモデルを動かして遊ぶことにした。
"魔導鎧機"の操縦と通ずるところがあるからか、ココナナのマギモデルの扱いは実にスムーズだった。
初めて触る筈だというのに、以前トレーニングに付き合ったリアスエクよりも動きが良かったのだ。
これはマギバトルもとても楽しめそうだ。
昼食までの間、思いっきり遊び倒すとしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます