ニスマ王国へ往く!!
第302話 お土産タイム
久々のモフモフだ!やはりこの子達の触り心地は素晴らしい!
こちらを見て撫でて欲しそうに目を輝かせているウルミラがとても可愛い!すぐに撫でてあげよう!
ああ…堪らない…!サラサラでモフモフな毛並みが、私の表情を自然と和らげてくれる。
ウルミラを撫でていると、私の両肩にレイブランとヤタールが止まってきた。自分達も撫でて欲しい、という事なのだろう。勿論、撫でるとも。
良い…!柔らかくフワッフワな触り心地は相変わらずのようだ。気持ちよさそうに目を閉じている顔が本当に可愛らしい!
ああ!他の子達も撫でたい!しかし私の体は一つ!私の手は2つしかない!だが嘆く必要はない!私には『
この子達と同じ数の幻を出現させて全員を撫でまわす。フレミーとラビックは両手で抱きかかえて、ホーディとゴドファンスには、その体にダイブだ!全身で毛並みを堪能させてもらう!
幸せ………。
これを幸せと言わず何と言うのだろうか?今の私は、きっとこの子達に囲まれた時のルイーゼとそう変わらない表情をしているに違いない。
だが、それが何だと言うのだ。誰に見られるものでも無ければ、見られて困るものでもないのだ。
ちなみに私の本体は幻を出現させてからはモフモフに触れていない。その代わりと言うわけではないが、体にヨームズオームが絡まっている。
―ノア~、幸せそうだね~―
「幸せだとも。私がモフモフ好きなの、知っているだろう?」
勿論、ヨームズオームだって負けないくらい可愛いがな!
首を傾げながらつぶらな瞳で見つめて来るこの子の可愛さと言ったら、他の子達に勝るとも劣らない可愛さだ!
頭や顎を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を閉じるところもとても可愛い!やっぱりこの子を此処に連れて来て本当に良かった!これからも目一杯可愛がろう!ヴィルガレッドに会ったら自慢してやるのだ!
まぁ、その時はヨームズオームも連れて行くから、この子を甘やかす事に夢中で私の話が耳に入らないかもしれないが。
ヨームズオームの頭や顎を撫でながら広場を見てみる。
本当にアクレイン王国へ向かう時と比べると大分変ったものだ。
私の目の前には、色とりどりの花畑が広がっているのだ。しかも花の種類と色をしっかりとグループ分けしてあり、見栄えが良い。ラフマンデーは花畑の管理を実に良くやってくれているようだ。
いい物を見せてもらったし、今後は毎日見る事ができる光景だ。後でお礼を言っておこう。
そう思っていたら上空、ではなく巣から出てきたラフマンデーが私の本体のところまで急いで飛んで来た。
先程までこの子は眠っていたのだ。目が覚めたら私が帰ってきていたので、慌てているのだろう。
〈お帰りなさいませ主様!御帰宅を心よりお待ちしておりました!〉
「ただいま、ラフマンデー。たった1月程度で良くぞこれだけの花畑を用意してくれたね。実に見事だ。良い物を見せてくれてありがとう」
感謝の言葉を伝えたら、真上に跳び上がり、その後は不規則に広場中を全速力で飛び回っている。彼女の体には歓喜の魔力で満ち溢れている。
〈きょえええええ!!ひょおおおおおお!!しぃふぅくぅーーーーーっ!!!〉
ラフマンデーは相変わらずのようだな。彼女の様子を誰も気にしていないし、これが普通なのだろう。
さて、他にも気になる事は沢山あるが、そろそろ皆にお土産を渡すとしよう。
ティゼム王国から帰って来た時は城を案内してもらう事もあって城の最上階でお土産を渡したが、今回は態々そんな事をする必要はない。この場で渡してしまおう。
―何々ー?お土産ー?―
「うん。今回往って来た国で作られてるお酒。味は確認していないけどね」
―お酒ー―
ヴィルガレッドの住まいで酒を口にしてからというもの、ヨームズオームは酒というものがかなり気に入ったらしい。
この子へのお土産が酒だと分かると、とても喜んでくれた。
酒に喜んでくれたのは、勿論ヨームズオームだけではない。フレミーを始め、ホーディやゴドファンスも喜んでくれている。
〈やった!今回は私の分のお酒もある!〉
〈ほう…国ごとに作っている酒に違いがあるのだな〉
〈以前の酒と飲み比べて見るのも、面白いやもしれぬのう…〉
ティゼム王国の時にはフレミーへの個別の酒のお土産が無かったから、一層喜んでいるように見える。
ホーディとゴドファンスは国によって酒の種類が変わっている事に興味を持っているようだ。
しまったな…。ファングダムなら果物が豊富だったし、果物を材料にした酒が大量にあった筈だ。
国の存亡がかかっていたとは言え、旅行をしていた事を失念していたようだ。私は今更ながらにファングダムで碌にお土産を買ってきていない事に気付いてしまった。
今度ファングダムに行ったら、多めにお土産を購入して来るとしよう。
ヨームズオームを含めた酒好きの4体はやはりこの場で酒を飲む、という事はしないらしい。後で4体揃って飲むようだ。
ラビックへのお土産は図書館で複製したアクレイン王国の武術書である。
それなり以上に歴史があり、その歴史の中で改良を重ね続けてきた課程が全て網羅されている。
人間が全て読み、実施するには長い年月を要するかもしれない内容だ。
だが、そこはラビックだ。読書の速度が早ければ本の内容を実施して見せるのも早いのだ。再びティゼム王国へ向かう頃には、武術書の内容を自分のものにして、更に最適化している事だろう。
〈なるほど、時間と共に使いやすいように変化していったのですか…。これは興味深い内容ですね…〉
「使い勝手を求めるあまり、威力が下がっている技もあるみたいだね。人間では負担がかかって乱用できない技でも、君問題無くできるんじゃないかな?」
〈はい。問題無く使用できるかと。改めて姫様。私に素晴らしき知識を齎していただき、誠にありがとうございます〉
私の膝の上に座り、本を読みふけるラビックは本当に可愛いな!体を撫でてもまるで反応が無いのが少し寂しいが、読書の邪魔をするわけにはいかないので、優しく撫でておくだけに留めておこう。
レイブランとヤタールには、アクレイン王国の領土で多く採掘されているアクアライトと呼ばれる淡い青色をした宝石だ。
アクレイン王国の象徴の一つでもあるらしく、あの国の貴族はアクアライトを用いた何かしらの装飾品を、必ずと言って良いほど身に付けている。ジョゼットやマフチスも身に付けていた。
今回2羽に用意したのは装飾品ではなく、研磨、カッティングされたアクアライト単体である。
装飾品の値段が高かったから、というわけではなく、この子達が気に入る大きさの宝石を用いた装飾品が無かったのだ。
だが、大きなカッティングされた宝石は、それだけで2羽を刺激したようだ。
〈いいわぁ…いい色なのよ…〉〈宝石単体っていうのも、悪くないじゃない…〉
宝石を渡したらいつぞや装飾品を渡した時のように固まってしまった。
普段は姦しいほどに騒ぐ娘達だと言うのに、質の良い装飾品や宝石となると正反対に大人しくなるな。つまりこの時間は撫で放題という事である。心行くまで堪能させてもらうとしよう。
さて、それではウルミラだ。この子へのお土産は小型高速艇の玩具である。2回立て続けに玩具のお土産なので、喜んでくれるかどうかはまだ分からない。
早速水場を作って浮かべてみよう。
ついでと言っては何だが、この際だからプールも作ってしまう事にした。
何、『
『我地也』で家の近くの地面をくり抜いた状態にすると、何をしているのかウルミラは気になったようだ。
〈ご主人。なに作るの?新しいお風呂?〉
「違うよ。大きな水浴び場を作るんだ。目的は遊ぶため!」
〈遊び場!〉
遊ぶための施設だと教えれば、ウルミラはとても喜んでくれた。尤も、本番はプールに水を張ってからになるわけだが。
ああ、しまったな。折角ホテルにもプールがあったのだから、小型高速艇の玩具がどの程度の性能なのか確認しておけばよかった。
まぁ、過ぎた事を嘆いていても仕方がない。ホテルのプールよりも一回り広いプールを作ると、今度は『収納』から小型高速艇の玩具を取り出してウルミラに見せた。
〈あ!これ知ってるよ!船ってヤツだ!水の上を動く人間達の乗り物だよね!?〉
「ああ、そうだよ。これはその模型だね。今作ったこの水遊び用の場所に浮かべて動かすんだ」
〈こんなに小っちゃいのが動くの!?ねぇご主人!早く浮かばせてみて!〉
おもちゃの説明をしたら、非常に食いついて来た。やはりウルミラは玩具が大好きなのだな。以前のファニール君も、とても大事にしているみたいだ。
水を張ったプールの水面に玩具を浮かべて玩具に魔力を流す。すると、本物と同じように玩具はプールの水を吸い上げ、勢いよく放出する事で前進しだした。
〈わぁ~!なにこれなにこれ!楽しそう!コレ、ご主人が動かしてるの!?〉
「そうだよ。多分、魔力を流した時点で扱い方が分かるようになると思うから、ウルミラも遊んでみるかい?」
「やる!」
おもちゃを一度手元まで戻して回収してからウルミラに渡す。
ウルミラに玩具を差し出さすと、それを咥えてほんの少しだけ魔力を流し始めた。
人間の作った道具は簡単に壊れることをウルミラは知っているので、魔力を流し過ぎて壊れてしまう事を恐れているのだ。
魔力を流し終わると、ウルミラも玩具の使い方が分かったらしい。プールに浮かべて玩具を動かし始めた。
〈おー!コレおもしろーい!ご主人!人間って凄いねー!こんなの作っちゃうんだねー!〉
「そうだね。人間の発想力には毎回驚かされるよ」
本当に、人間という生き物は大したものだと思う。私も自分の生活環境を快適にしていこうと考えている。
だが、人間はそんな私の考えを遥か上を行く発想を持っているのだ。だからこそ私は人間を知ろうとしているわけだな。
それはつまり、人間達は私にとって生活環境を整える先達という事である。これからも人間達から沢山の技術と知識を取り入れていくとしよう。
プールの中を自在に動く玩具を眺めていたら我慢できなくなったのだ、ウルミラがプールに飛び込んで泳ぎながら玩具を追いかけている。可愛い。眺めているだけでも至福である。
さて、残るお土産はラフマンデーのお土産なのだが…。
〈ひょおおおおおお!!〉
あの子、まだ広場を縦横無尽に飛び回ってる…。私に褒められて感謝された事がそこまで嬉しかったのか?
とりあえずお土産を渡したいので聞こえるかどうかは分からないが、呼びかけてみよう。
「ラフマンデー、ちょっと来てくれる?」
〈ははぁっ!いかがいたしましたかっ!?〉
聞こえるんだ…。と言うか変わり身早いな。さっきまで発狂していたかのように奇声を上げて飛び回っていたのに。
まぁ、正気を取り戻して話を聞いてくれるのなら好都合だ。この子にもお土産を渡すとしよう。
「君にもお土産を渡すけど、同時にこれは君に対する仕事の依頼でもあるんだ」
〈な、何と!?この妾に、更なる仕事を!?お、おおおおぉ…!な、何と光栄な事でしょう…っ!〉
感極まってすぐにでも飛び回りそうだったが、ラフマンデーは必死にその衝動を抑えている。私の言葉がまだ続く事を理解しているのだろう。
『収納』からアクアンで購入しておいた布袋に入った植物の種を取り出し、ラフマンデーに見せる。
これらの種はただの種ではない。
いや、アクアンで購入した時点ではまだただの種だったのだ。しかし、私はその種に極少量の私の魔力を込め続けていたのだ。しかも二色の魔力ではなく、七色の魔力でだ。まぁ、やっている事はこの広場に植えたオーカムヅミの樹と同じである。
人間達に私の魔力を観測させない方法の訓練にもなったし、これで魔物化せずに育ってくれれば万々歳である。
少しずつ、ほんの少しずつ私の魔力をなじませた種達は、私が予想した通り魔物化する事なく七色の魔力を持つようになったのだ。
この種達に『魔物化もせず、普通の植物として育って欲しい』と願いを込めてラフマンデーに手渡す。
「人間達が育てている植物だよ。私の七色の魔力を浸透させている。この植物達を育ててみて欲しいんだ」
〈主様の魔力を…!何という大役!!承知致ししましたぁ!!必ずや!必ずや育てて見せて御覧にいれますぅううう!!!〉
私の要件を聞き終えると、ラフマンデーは再び奇声を上げながら縦横無尽に広場を飛び回ってしまった。
少々不安を覚えないわけでも無いが、彼女は目の前に広がる見事な花畑を作ってくれたのだ。その手腕を信用させてもらおう。
さて、お土産も渡し終えた事だし、そろそろこの広場の変化について皆に聞かせてもらうとしようか。
そう思って、私は空を見上げる。
既に100m以上の高さにまで育ったオーカムヅミが目に映る。この樹木、今もなお巨大化し続けているのだ。
皆に聞くとしたら、まずはまぁ、コレについてだよなぁ…。
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