閑話 はじめてのお仕事!

 あのねあのね!今日はね、すっごく特別な日なの!

 ボク達の住んでる場所にね、新しい仲間が外から来たの!ご主人が連れて来てくれたんだよ!


 ホントはすっごく大きな蛇らしいんだけど、今はご主人に絡みつけるぐらいまで小っちゃくなってるの!

 でもねでもね、その子すっごいの!ボクよりも、ホーディよりもずっとずっと魔力が大きいんだよ!

 ご主人はその子の事、ヨームズオームって名前を付けてあげたんだって!これから仲良くしようね!


 ここに住んでる皆にとって、もうこの時点でもの凄く特別な事だけど、ボクにとってはもっともっと特別な日なんだ!


 なんたって、今日は初めてご主人からお仕事を頼まれちゃった日なんだからね!

 エヘヘェ~、嬉しいなぁ。なんてったって、ご主人がボクを頼ってくれたのって、初めての事なんだもん。


 レイブランとヤタールはいつも朝になったらご主人を起こしてるし、ゴドファンスは岩塩のある場所を案内した事があるし、フレミーはご主人のための、とっても綺麗な服を沢山作ってたり、ボク達が寝るための布の袋も作ってくれたし、ホーディもご主人を川からおうちまで運ぶ時は、ご主人からお願いされたみたい。ラビックは言うまでもないよね。蜥蜴人達を助けに行くように、ご主人からお願いされた事がある。


 ボクだけ、ご主人の役に立った事がなかったんだよね。

 皆は気にしてなかったみたいだけど、やっぱりボクだってご主人の役に立ちたかったんだもん!

 お願いされたら、頑張っちゃうよー!


 それにしても、ご主人ってホントに優しいを通り越して過保護だよねー。ご主人も気を付けてるみたいだけど、気付いたらみんなを甘やかしてるんだもん。


 いろんなとこ撫でてくれたりするのはとっても気持ち良いし嬉しいけど、それを人間達にまで反映して欲しくないなぁ~って思うんだよねぇ。


 だってさ、ご主人に転移魔術で連れて来てもらった場所からでも、魔物が人間達を襲ってるのが分かるけど、その魔物達、適当な"楽園中部"の魔物を一体連れて来るだけで、全部片づけられるよ?

 ボクを連れて来るのは、ちょっと過保護じゃないかな?


 まぁ、ご主人には色々考えがあるみたいだし、ボクを必要としてくれるって言うんだから、張り切っちゃうんだけどね!


 それに、ご主人がご褒美を約束してくれたんだ!新しく作ったお菓子を、一番最初に食べさせてくれるんだって!


 ご主人が人間達から学んだお菓子って、すっごく美味しいの!だから今度のお菓子も、きっととっても美味しいよ!楽しみだなぁ!



 ご主人が守って欲しいって言ってた女の子は、逃げてる人間達を誘導してるみたい。逃げる場所に心当たりがあるのかな?

 とりあえず、ボクはこの子の傍にいるとして、他の場所にも幻出しとこ。


 ご主人が教えてくれた『幻実影ファンタマイマス』って、凄いんだよ?ボクの『幻影ファンタム』を参考にしたって言ってたけど、触れるのと触れないのとじゃ、全然違うからね。

 ちょっと疲れちゃうけど、『入れ替えリィプレスム』しなくても幻で行動が出来ちゃうって言うのは、本当にすっごく便利!色々と手間が省けるからね!


 3つ幻を出して、町の様子を見て回ろうっと!



 すごい!すごい!すごい!人間って面白そうな物をいっぱい作ってるんだね!アッチにあるのもコッチにあるのも、見た事ないものでいっぱいだぁ!


 コレは何なの?食べ物?違うの?クンクン…。美味しそうな匂いじゃないね。でも面白い形!


 コッチはなぁに?いろんな色があって、それに透き通ってて綺麗だね!でもゴドファンスが作ってた宝石とかとは違うみたい。何だろうね、コレ?

 ま、いっか!いつかご主人が持って来てくれるよね!


 わぁっ!コレ、良い匂いがする~!ボクこの匂い好き~!ねぇねぇ、食べて良い?食べて良い?

 あー、人間には聞こえないかー…。まぁ、人間を守るようにご主人から言われてるのに、人間い迷惑かけちゃ駄目だよね…。

 ご主人はいつかボク達と一緒に人間の街を歩きたいみたいだし、その時になったらご主人に買ってもらおうっと!


 それにしても魔物がいっぱいいるなぁ…。人間達も頑張って魔物をやっつけてるけど、全然数が足りてないや。


 あっ!駄目だよ!ソレ壊したら!ボク、ソレ気に入ったんだから、壊しちゃダメ!エイエイッ!


 あー!それも壊しちゃ駄目ー!食べられなくなっちゃったらどうするのー!やっつけちゃうよー!エイエイッ!


 もー!人間を襲ったらダメだってばー!エイエイッ!


 ご主人が心配するだけあって、いっぱい魔物が人間達を襲ってるなー。これじゃあのんびりと人間の街を見て回れないや。

 人間達が戦ってる場所は別にいいけど、戦える人間達がいない場所にいる魔物は、全部やっつけとこうっと!


 エイエイッ!エイエイッ!エイエイッ!エイエイッ!エイエイッ!


 こんなところかなー?他は大体人間がやっつけてくれてるみたいだねー。


 さーて、それじゃ、もう面白そうな物が壊される心配も無いし、色々なものをゆっくりと見て回…。


 あーっ!なんかご主人が守ってって言ってた女の子と似てる臭いがする男の人が、すっごい怪我と火傷してるー!

 いつの間にそんな事になっちゃったのー!?ボクそんな事知らないよー!?


 どうしよう、どうしよう、ご主人に怒られちゃうよぉ…。

 ご主人、普段はすっごく優しいけど、怒ったらそれがそのまんまひっくり返っちゃったみたいに、すっごく怖くなっちゃうんだ…。

 怖いよぅ…どうしよう…。


 と、とにかくあの男の人を守った方が良いよね!?これ以上怪我をしないようにしないと!

 だから駄目だよ!そんな危なそうなもの持ったまま、この人間に近づいたら!


 エイエイッ!あ、どっか遠くに飛んでっちゃった…。


 ま、いっか!この人間運んでる多分兵士?の人間達は、今の人間達に全然気付いてなかったし、きっとさっきのは悪い人間だよ!


 あ、この人間もご主人が守って欲しいって言ってた女の子のいる所に運ぶんだ。良かったぁ…。これなら守り易いもんね!後はこの人間が元気になってくれればいいんだけど…。



 んー?運ばれた男の人が守って欲しい女の子に何か言ってるねー?なんて言ってるんだろう?良く分かんないや。

 あーあー、こんな事ならご主人から文字だけじゃなくて人間達の言葉の発音とかも、ちゃんと教わっておけばよかったなー。


 人間達って不便だよねー。わざわざ音を使わないと、意思の疎通が出来ないんだから。しかもその音の種類も、人間の住む場所でいちいち変わっちゃうんだから、本当に不便で仕方が無いよ。

 ボク達みたく、思念で会話をした方がずっと楽なのに、何で誰もやらないんだろうね?やり方が分からないのかな?


 あっ、女の子が男の人に怒りながら小さな小瓶の中身を勢いよく振りかけてる!

 アレって確か、ご主人に見せてもらった本に載ってた、エリクシャーっていう薬だよね?

 どんなに大怪我をしてても、アレを振りかけるだけでぜーんぶキレイに治っちゃう不思議な薬。


 男の人もすっかりキレイに治っちゃったみたい。良かったぁ…。このまま助からなかったら、どうしようかと思ったよ…。


 ん?もー、だからさぁ、そんなに危ないもの持ったまま、ここに入って来ちゃダメなんだってば。さては、おまえ達はさっきの悪いヤツ等の仲間だなー?それじゃあやっつけちゃうぞ!


 エイエイッ!エイエイッ!エイエイッ!


 もう大丈夫!後は・・・うん!さっきの悪いヤツ等の臭いはどこにもしないよ!ヨシッ!これでご主人は許してくれるかなぁ…。

 うぅ…ご主人は許してくれるかもだけど、ゴドファンスとかホーディとかフレミーは物凄く怒りそう…。


 3体とも怖いから、ちょっとだけ苦手なんだよなー。ご主人、ボクの事庇ってくれないかなぁ…。



 きゅぅ~ん…やっぱりご主人から注意されちゃったよぉ…。

 でも、あんまり怒ってないみたいで良かったぁ~。やっぱりご主人はとっても優しいや!大好き!


 う~ん、もう悪いヤツ等も魔物のほとんどいないし、後はご主人が来るまで女の子の傍にいてあげればいいかな?


 人間の街も気になるけど、それでコッチの事を見失ってたら今度こそご主人に怒られちゃうかもしれないし、ちゃんと見張っておこうっと!



 やったやった!ご主人がありがとうって言ってくれたよ!それに帰りは好きなように帰って良いって言ってくれた!

 ボク、"楽園"の外がどんなふうになってるのか、ずっと前から気になってたんだよねー。折角ご主人に外まで連れて来てもらったんだから、思う存分外の景色を見て回ってからおうちに帰ろうっと!



 凄いなぁ…!"楽園"外ってこんな風になってるんだぁ…!大きな樹が全然生えてないから、とっても遠くの景色だって簡単に見渡せる!


 いろんなところに、ちょっとずつ人間が住んでるんだねぇ…。


 あっ!人間が人間に襲われてる!どうしようっかなぁ?

 放ってとおいても良いとは思うけど、ご主人は人間を守って欲しいって言ってたからなぁ…。


 きっと、良い事をしたらご主人、褒めてくれるよね?じゃあ、あの襲われてる人間達も助けてあげようっと!


 エイエイッ!エイエイッ!エイエイッ!


 アレレ!?襲ってた人間、何にも無くなっちゃった!?さっきの街にいた魔物も悪い人間も、これぐらいじゃ消えちゃうこと無かったのに!?


 ま、いっか!襲われてた人間は無事なんだし、この調子で襲われてる人間がいたら、助けてあげながらゆっくりおうちに帰ろうっと!




 ご主人が旅行から帰って来たら、沢山ボクの事撫でてくれたし、優しくギュってしてくれたの~!幸せ~。


 このまま新作のお菓子も食べさせてほしいなぁ~って思ってたんだけど、皆が集まって来て、男の人に怪我と火傷をさせちゃったことをご主人にバラされちゃって、物凄く怒られちゃった…。3体とも、怖かったよぅ…。


 でも、ちゃんと反省したらみんな許してくれたんだ!これからは守って欲しいって言われた人間がいたらちゃんと守ってあげないとね!

 面白そうな物があっても我慢しなきゃ!


 おうちに新しく、ラフマンデーって言う蜂の女の子も暮らす事になってね!その子、ハチミツを用意出来るみたいなの!すっごく楽しみ!


 それでねそれでね!ご主人が作ってくれた新作のお菓子!すーーーっごく美味しかったのーっ!

 ご主人もボクも大好物の"死者の実"、アレをオーカムヅミって呼ぶ事にしたんだけど、アレを沢山使ったお菓子だったの!

 一口食べただけで幸せな気分になっちゃった!




 ご主人は今回、旅行から帰って来てすぐに違う人間達の国に行くみたいなの。なんかね、悪い人間がいっぱいいるから、ソイツ等を見つけて、一気にやっつけちゃうつもりなんだって!


 今度は海がある国に行くって言ってたし、海の魚をお土産に持って帰って来てくれるのかな?とっても楽しみ!


 ご主人からまたお仕事を頼まれても良いように、ご主人がくれたファニール君で遊びながら、良い子にして待ってようっと!

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