第227話 家族会議から写生会へ

 レオナルドがあの4人の様子を見て私に予知能力の有無を訊ねてきたという事は、彼もあの絵を見たという事だろうな。

 もしかしたら、私が城を去った後すぐにでもレーネリアとネフィアスナはレオナルドの元に駆け寄ったのかもしれない。


 だとすると、あの絵画は今はあの3人のうちの誰かの『格納』空間に収まっているという事か。


 「もう、本当に凄いのよ!私達の間じゃ満場一致で家宝にしましょうって話を進めていてね、専用の額縁まで用意したの!」

 「収めた絵画の保護に加え、自動的に額縁に『清浄』の効果が掛かる機能も付いた便利な額縁です。」

 「そんでもって額縁自体の素材も最高級の"楽園"産の樹木を用いて作らせた。やはり良い絵画は良い額縁に収めないとならんからな。」


 なるほど。あの絵画、相当に大げさに扱われてしまっているようだ。

 いや、何事も自分の感性で考えるのは良くないな。彼等の立場になって考えてみればいいのだ。

 彼等からしたら、それほどまでに感銘を受けた内容だったのだろう。


 ここは、親である3人が自分の子供達を4人とも愛していると理解できた事を喜び、また私の描い絵を気に入ってくれた事を嬉しく思えばそれで良いのだ。


 胸を張ろう。私は複数の人間に大きな感銘を与える作品を作ったのだと。


 問題は、描かれた本人達の目にどう映るか、だな。

 3人の言葉から、オリヴィエは私が何をしたのか理解したようだ。


 「つまり、ノア様は私達4人が集まった際の絵画をお描きになった、と。そういう事でよろしいですか?」

 「…うん。私としては、良い出来栄えだと思うよ。レーネリアもネフィアスナも喜んでくれたし、あの様子だと、レオナルドも気に入ってくれたのかな?」

 「まぁ、な。正直、そなたがあそこまで絵画に精通しているとは思わなかったぞ?レーネとネフィーが家宝にしたいと俺の元まで駆け込んで来たのも、納得できる内容だった。」

 「ノアって何でも出来るのねぇ~。ちょっと嫉妬ちゃうわ。」

 「姉上、そこはノア殿だからで片付けてしまって良いでしょう。それで、父上達が絶賛していると言う絵画を見せていただく事は、出来るのですか?私達を描いたものだと言うのなら、興味があります。」


 オリヴィエは自分の姿を描かれた事にやや不満を感じているようだが、レオンハルトやリナーシェはあまり不満を抱いていないようだ。

 ただ、リナーシェは私が色々なことが出来る事に、言葉通り嫉妬しているようではあるが。


 言葉に出してはいないが、カインも絵画を見てみたいらしい。絵画の話を聞いてからというもの、目を輝かせているのだ。


 「勿論見せてあげるわぁ!今取り出すから、ちょっと待っててね~。」


 絵画を所持していたのはレーネリアのようだ。

 彼女は『格納』を発動させると、まずは絵画を立て掛けるための台座を取り出し設置し始めた。

 多分だが、彼女はこの家族会議の最中に、あの絵画を子供達に見せるつもりだったのだろう。


 「これが、私達がノアちゃんに頼んで描いてもらった、貴方達の絵画よぉ~!」

 「「「……っ!?」」」

 「ふぁあああ…すごぉ~い…。」


 絵画を目にした4人は、カイン以外言葉を失ってしまっている。純粋に褒めてくれているカインの反応がとても分かり易くて有り難い。

 他の3人はどういった意味で絶句しているのだろうか。


 「ノア殿…。貴女は本当に予知能力の類を所持していないのか…?」

 「うっそでしょ…。さっきのオリヴィエやレオンの表情、この絵とそっくりなんですけど…?そりゃ予知能力疑うわ…。」

 「そ、そうなのですか…?確かに、お兄様やお姉様、それにカインの表情はそっくりですけど…。」

 「にいさまもねえさまたちも、このえとおんなじかおでした!すごいです!」


 流石に自分がどういった表情をしていたのかは分からないようだが、自分以外の兄弟がどのような表情をしていたのかは把握していたようだ。


 「あの、お父様達は、この絵画を家宝にしたいのですか?」

 「えっ!?それはちょっと考え直さない!?なんか恥ずかしいわっ!自分の姿が家宝として保存されるとか、かなり恥ずかしいわっ!」


 リナーシェは自分の姿が残る事はあまり歓迎しない性格らしい。絵画を家宝にすると言う両親達の意見に待ったをかけている。

 オリヴィエも彼女の言葉に激しく同意しているためか、首を勢いよく縦に振っている。こう言ったところは姉妹でよく似ているな。


 「父上達の気持ちは分からなくもありませんが、私個人としての意見は姉上と同意見ですね…。」

 「はぁっ!?ちょっとレオン!?私の姿が描かれた絵とか、別に家宝にする必要なくない!?」

 「しかし姉上、オリヴィエやカインのこの見事な表情、これは非常に価値があるものだと思うのです。」

 「ぐっ!?そ、それを言うのはズルいわよぉ…。」

 「えっ!?あの、私よりもお2人の姿に価値があると思うのですが…。」

 「「それは無いっ!」」


 リナーシェ、レオンハルト、オリヴィエの3人は自分の姿が描かれていないのであれば家宝にすると言う両親の意見に賛成、といった様子だな。自分の姿が描かれている絵画に家宝の価値を見いだせていないのだ。

 つまるところ、3人とも自己評価が低いのである。


 「それと姉上、私から見れば姉上も十分に美しい女性です。家宝にされる価値は十分にあります。」

 「はぁっ!?お世辞も大概にしなさいよっ!?大体それ言ったら、アンタなんてどれだけ女の子達に言い寄られてると思ってるのよ!?ええっ!?城一番のモテ男!」

 「私の人気は王太子としての人気でしょう!?外見の問題ではありません!」

 「姉の私がアンタが美男だっつってんのよっ!!姉の言葉を信じなさい!」

 「でしたら弟の言葉も信用して下さい!私の言葉に嘘偽りはありません!」


 なんてこった。まさかの堂々巡りである。

 先程のオリヴィエとレオンハルトの謝罪合戦はリナーシェが割って入ってくれたおかげで無事に納められたが、この2人の称賛合戦はどう収集をつけたものだろうか?


 少なくとも、2人の間に割って入れそうにないオリヴィエでは無理だろうな。

 となると、やはりここは2人の両親であるレオナルドとレーネリアに収めてもらうべきか。


 ああ、駄目だ。2人ともとても微笑ましい表情でレーネリアとレオンハルトを見守っている。

 これは姉弟の称賛合戦を心行くまで見届けるつもりだ。当てになりそうもない。

 それなら…ああ、ネフィアスナも同じだな。2人のやり取りを楽し気に見つめている。この子煩悩共め!


 私が彼等の仲裁に頭を悩ませていると、思わぬ救世主が現れてくれた。


 「ぼく!このえ、たからものにしたいです…!」

 「「「カインッ!?」」」

 「レオンにいさま、とってもかっこよくて、やさしいかおしてます。リーナねえさま、きれいでとってもたのしそうです。リヴィエねえさまも、きれいです。それにとってもやさしいかおしてます。おかあさまみたいです。」

 「あぅぅ…っ!」

 「くふぅ…っ!」

 「…っ!?」


 その救世主とは何を隠そう、カインである。純粋な子供の言葉が、何より無垢な笑顔が3人の視線を釘付けにして魅了したのである。

 尚、魅了されたのは兄と姉だけでなくこの子の親達も漏れなく魅了している。


 今現在この部屋で悶絶していないのは私とカインだけである。

 そしてそんなカインであるが、私の元へとゆっくりと歩いて来た。何か聞きたい事でもあるのだろうか?


 「ノアさま。ぼくたちみんなのえをかいてほしいです。」

 「お安い御用だよ。そうだね。カインは皆の姿が描かれた絵が見たいんだね?」

 「はいっ!」


 カインは自分の家族が全員好きなのだな。兄弟が揃った絵があるのなら、家族全員そろった絵を見てみたいと思うのは当然なのだ。

 私としてはその願いを叶えるのは吝かではない。元よりカンナにも提案していた事だしな。それで喜んでくれるのなら、私だって喜んで描き上げるとも。


 「ぜ、全員が揃った絵画ですってぇ!?」

 「最高ではないですかっ!それはもう、国宝といっていいのでは!?」


 ネフィアスナまでもがカンナみたいな事を言い出してしまうとは…。

 彼女はこと絵画に関しては、とても強い情熱を持っているようだな。それ故に自分が評価した絵画には、やや過剰な反応をするのかもしれない。


 流石にネフィアスナの発言にはレオナルドからツッコミが入った。流石に彼も自分達の姿絵を国宝にする気は無いようだ。

 尤も、絵画を描くこと自体は賛成しているらしい。


 「いやいや、家宝にするならともかく、家族の絵画を国宝にするって、どんだけだよ…。ああ、絵を描いてもらう事自体は賛成だ。ノアよ、俺からも頼めるか?勿論、4人の絵画を描いてくれた事も含め、十分な報酬は出す。」


 ああ、そう言えばあの絵画も報酬を出すとレーネリアが言っていたな。

 色鉛筆はオリヴィエとリナーシェが笑い合って談笑している絵の報酬として受け取ったわけだしな。

 あの絵、結局特に言及する事はなかったがレーネリアかネフィアスナの物となったのだろう。何せ私は回収していないのだ。


 ただまぁ、3人の王子と王女はやはり抗議の声を上げる事となった。


 「父様!?」「父上!?」「お父様!?」

 「そう言うなお前達。何、新聞に記載される写真の様なのもだと思えば気は楽だろう。何せここまで精巧にお前達の姿を描いてくれるのだからな。」

 「3人とも観念なさぁい。カインがノアちゃんにお願いしてるんだから、アナタ達が断ったらカインがとっても悲しむわよぉ~?」

 「う゛っ…。」

 「母上、その言い方は…。」

 「ズルいですよぅ…。」


 カインが可愛い3人と言うか、この王族達にとって、末の弟の願いを無下にする事はありえない行為のようだ。渋々と言った表情で3人とも受け入れている。


 絵画を作製する事が決まったのはいいが、そうなれば問題は報酬だな。貨幣はもう十分所持しているし、稼ごうと思えばいくらでも稼げるので、特に必要としていない。そもそも近い内に別件で受け取る事になっているだろうしな。


 だとしたら、ここは私の要望に応えてもらうとしよう。


 「報酬なんだけど、こっちで決めて良いかな?」

 「それは構わんが、そなた、何か特別欲しいものがあるのか?」

 「うん。ネフィアスナ。報酬は貴女に用意してもらいたい。」

 「私、ですか?」


 いきなり名指しされた事でネフィアスナがやや困惑している。何のことは無い。使い方はヘンかもしれないが、ここは目には目を、歯には歯を、絵画には絵画を、だ。


 「うん。以前言っただろう?いつか貴女が絵を描くところを見せて欲しいと。7人が揃った家族の絵画は、貴女が描いた絵画と交換としよう。」

 「ええっ!?そ、そんなものでよろしいのですかっ!?」

 「まぁっ!?ノアちゃんったら良いチョイスねぇっ!嬉しいわぁ、ネフィーの絵画にそこまでの価値を見出してくれて。」


 自分が描く絵を要求された事でやや委縮してしまっているな。

 血が繋がっているわけでは無いが、ネフィアスナも子供達と同様、自己評価があまり高くないのだろうか?

 不安そうにしているネフィアスナの両手を、レオナルドの手が包み込む。彼女を励まし、自信を付けさせたいのだろう。


 「ネフィーよ。そなたの描いた絵は間違いなく俺の心を感動させたのだ。自信を持ち、胸を張ってくれ。そなたの絵画は、ノアにも通用するのだ。」

 「レオナルド様…。」


 今この瞬間だけは2人の世界が出来上がっているかの雰囲気だな。リナーシェがからかう気すら起きなくなっている。

 この空気には覚えがあるな。アレはそう、イスティエスタの魔術師ギルドで感じた空気だ。つまり、相思相愛の二人が強い愛情で触れ合っている時の空気だ。


 レオナルドの励ましによってネフィアスナもやる気を出したようだ。意気揚々に自分が描く作品について私に相談してきた。


 「ノア様。描き上げるのは、何でもよろしいでしょうか?」

 「構わないよ。貴女の絵の上手さは既に知っているからね。」

 「では、ノア様の御姿を描かせていただいてもよろしいですか?」


 …そう来たか。まぁ、別に構わないか。私の姿など既に新聞で大量に配布されているわけなのだからな。

 自分で自分の絵を描く事にはまだ若干の抵抗を覚えるが、他人が描く事に関しては好きにすればいい。


 それに、私も他の家族もいるとは言え、ネフィアスナの姿を描いて彼女に渡すのだ。絵画の交換としてはちょうどいいだろう。


 「構わないよ。思うままに私の姿を描くと良い。」

 「ありがとうございますっ!ああ…っ!まさか、こんなにも早く私の願いの一つが叶うだなんて…!」

 「ノ、ノア様の絵画…。それも、ネフィー母様の本気で描く…。」

 「えっ?それこそ国宝級になるんじゃ…。」

 「だがその作品、ノア殿に報酬として渡される事になるのか…。」


 カインを除いた兄弟は完成する絵画の価値を予測して戦慄しているように見える。それだけ、ネフィアスナの描く絵画事態に大きな価値があるという事だろう。


 それはそれとして、ネフィアスナは感激に身を討ち震わせている。以前から私の姿を描きたかったらしい。描きたければ好きな時に好きなだけ書けばいいとは思うのだが、そうもいかないのだろうか?


 「勿論です!本人の許可の有無は、私のモチベーションに非常に大きな影響を与えますから!ノア様だって、リヴィエから自分の絵を描いて欲しいと頼まれたら、やる気が沸き上がって来るのではありませんか!?」

 「ああー、なるほど。確かに、良く分かった。」


 ネフィアスナのいう事も尤もだ。オリヴィエの場合、自分の絵を描かれそうになると止められてしまうからな。そんな彼女から自分の絵を描いて欲しいと頼まれたら、嬉々としていつも以上に丁寧に気持ちを込めて描き上げる事になるだろう。


 今のネフィアスナも同じ気持ちという事か。だとしたら、彼女の描き上げる絵画は非常に凄まじい完成度を誇りそうだな。

 面白い。是非ともやる気に満ちたネフィアスナの作品、その制作風景も含めて見せてもらうとしよう。


 「それじゃあ、どっちが先に描こうか?私がネフィアスナの作品の制作風景を見せてもらう以上、一緒に描くのは難しいだろう?」

 「そう、ですね…。では、申し訳ありませんが、ノア様の作品から仕上げて頂けますか?少しでも多く、ノア様の姿をこの目に収めておきたいのです!」

 「分かったよ。それじゃあ、早速描くとしようか。」


 家族会議の筈が何時の間にやら写生会になってしまっている気がするが、もう彼等の関係を心配する必要は無いだろう。お互いの気持ちは伝え合っているのだ。

 これからはファングダム国民に仲睦まじい姿を見せていく事になるだろう。

 まぁ、そうなると今後リナーシェがこの国から去ってしまう事を惜しまれてしまうかもしれないが。


 さて、絵を描くために『収納』から台座と紙、板と色鉛筆を取り出したのだが、ここで待ったが掛かってしまった。


 「待ってちょうだい!私からも要望良いかしら!?」

 「それは、絵画に対する要望?」


 レーネリアである。彼女は彼女で何やら私に要求があるらしい。


 「ええ!ノアちゃんには無理を承知で、お願いするのだけど、普通の紙のサイズではなく、この部屋の壁いっぱいぐらいの大きな絵を描いて欲しいの!」

 「レ、レーネ母様!?」

 「流石に図々しいのでは!?」


 レーネリアの要求が無茶なものだと思ったオリヴィエとレオンハルトが抗議の声を上げている。

 ふむ…。私が絵を描く時というのは、一般サイズの紙よりも大きいものは描いた事が無かったな。

 それと言うのも、大抵は自分が楽しめればそれで良いと考えていたからだ。


 2人の抗議の声に、すかさず反論を出す。


 「何を言っているのよ!国宝にするのなら民達にも見てもらうべきでしょう!?だったら、描いてもらうのは大きい方が良いに決まっているわっ!」

 「国宝にするのはもう決まってしまっているのですか!?」

 「いや、それよりも民達に見せるのですか!?私達の姿の絵画を!?」


 オリヴィエとしては自分達の姿絵が国宝となる事にまだ納得が出来ていないようだ。というか、レーネリアとネフィアスナの中では既に私がこれから描く絵画は国宝にする気でいるらしい。

 そしてその絵画を民達に見せる事にレオンハルトは驚きを隠せないようだ。


 「そうよ!私達皆が中の良い家族だという事を知ってもらう、いい機会じゃない!しかもノアちゃんが描いてくれた絵画よ!?きっと民達は皆、この国は安泰だって思ってくれるに違いないわっ!」


 そこまで考えての提案だったのか。意外にレーネリアは強かな人物なのだな。


 しかし、この部屋の壁いっぱいに収まるほどの絵画となると、依然受け取った色鉛筆ではとてもでは無いが描ききれないな。


 そんな私の懸念は既に織り込み済みだったのだろう。得意げな表情で『格納』を発動させながら私に語り掛けて来た。


 「ノアちゃん、あの絵画の報酬は画材が良いって言ってたわよね?用意したわよ!魔力を込めるだけで塗料が湧き出て来る魔術具なの!それと絵筆も沢山用意したわ!ノアちゃんのあの制作方法なら一度にたくさんの絵筆を使う事になるでしょうからね!存分に使ってちょうだい!」


 なんと!?魔力を込めるだけで塗料が湧き出る魔術具とな!?それは純粋に嬉しい!それなら少なくとも塗料が尽きる心配はしなくて済むという事か!


 渡された魔術具は36の小さな溝があるパレットだ。魔力を注ぐ事でこの溝から塗料が湧き出てくるという事だろう。大きさは45㎝×30㎝で、親指を通して手に持つための穴が一ヶ所空いている。


 レーネリアが渡してくれた絵筆も非常に上質なものだ。毛先が整っていてとてもしっかりと固定されている。滅多な事では毛が抜け落ちるような事も無いだろう。様々な太さが用意され、その総数100本以上だ。


 しかもレーネリアは絵画を描くための帆布まで用意してくれた。この帆布を壁に広げて固定して絵画を描けばいいのだろう。


 どう考えても全て非常に高価な画材だろうが、それだけの価値をレーネリアはあの絵画に見出してくれたのだ。とても嬉しい。ならば、これから描く絵画も、彼女の期待にしっかりと応えないとな!


 「ありがとう。腕によりをかけて良い物に仕上げよう。」

 「楽しみにしてるわ!」


 気合を入れ、尻尾でパレットを持ち、『補助腕サブアーム』を以前同様10本出現させ、それぞれに絵筆を持たせる。


 「はぁっ!?ええっ!?何その魔術!?私も使いたいっ!」

 「お、お姉様、今はノア様が絵画を作製しますから…。」


 ああ、そうか。リナーシェは大量の武器を自身の周囲に浮遊させる技を持っていたな。彼女からしたら『補助腕』の様な魔術は非常に魅力的に映るかもしれない。

 だが、コレもリナーシェが苦手とする魔術による現象だからな。膨大な情報処理能力が必要になるし、そもそもその情報処理も並列的に行わなければ、まともに扱えないだろう。


 「まぁ、色々と問題を片付けて時間が出来たら魔術自体は教えても良いよ。使えるかどうかはリナーシェ次第だけど。」

 「相変わらず言ってくれるわねぇ…。良いわ!やってやろうじゃない!」


 私の言い方に対抗心、もしくは反骨精神が刺激されたのだろうか?リナーシェの目には意地でも『補助腕』を習得してやろうと言うやる気に満ち溢れている。

 あの向上心こそ、リナーシェがあそこまで洗練された技術を得た要因なのだろう。向上心が高くそれに向かってひたむきになれる姿には好感が持てる。


 さて、それではそろそろ絵画の制作に取り掛かるとしよう。私にとっての最高傑作を作り上げるんだ!

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