第176話 ファングダムの王族達

 オリヴィエの表情が曇っているな。当たり前か。彼女にとって辛い過去を思い出させているうえで喋らせているのだから。

 尻尾を動かして彼女を優しく包み込もう。既に私と密着しているが、軽く包まれるような感触があった方が落ち着くと思ったのだ。


 尻尾に包まれた直後、彼女は驚いて硬直してしまったようだが、すぐに落ち着きを取り戻して力が抜けて行った。このまま頭を撫でさせてもらおう。


 「・・・こう言っては大変失礼だと思いますが、ノア様はなんだか、お母様みたいです・・・。辛いときや悲しい時に優しく抱きしめてくれて、こうして優しく頭を撫でてくれるので・・・。」


 そう語るオリヴィエの精神はとても安らいでいる。

 私は母親と言うよりも、むしろ赤ん坊同然の年齢なのだが、まぁ、魔力から産まれた魔物と言うのは、ヴィルガレッドが言うには最初から成長した状態で産まれてくるらしいからな。精神年齢上ではオリヴィエよりも上なのかもしれない。


 母親だと思ってくれるのはまぁ、光栄な事なんじゃないのか?

 慕ってくれているのは間違いないから悪い気はしないが、オリヴィエからしたら失礼な事だと考えているようだ。


 人間の感覚で考えてみるか。私の年齢はともかく、外見だな。今の私は尻尾を除けば庸人ヒュムスとそう変わらない外見だ。では、庸人として見た私の外見年齢は・・・大体20歳前後か?


 早ければ母親になっていても問題無い年齢だとは思うが・・・。

 あー、オリヴィエの年齢の母親、と言う意味では確かに若すぎるか。つまり、捉え方次第では老けている、と言っているようなものだと?


 だとしたら、私がオリヴィエに言うセリフは決まったな。


 「ふふっ、流石に母親は非道いな。そこは姉のようだ、じゃないのかい?」

 「あぅ・・・すみません、お姉様とはあまり話をした事が無くって・・・。」


 ・・・不要な発言だったか?オリヴィエはリナーシェとはそれほど仲が良くないらしい。


 そう言えば私も数年間分の新聞を読み漁ってみたが、リナーシェが特に活動している、と言う話を聞いた事が無いな。

 ファングダムの姫と聞いた時、大抵の者がまず最初に思い浮かべるのは第二王女であるオリヴィエだ。


 「そう言えばリビアは国の内外で様々な行事に参加していたね。リナーシェはそういった活動はしていなかったのかな?」

 「はい。お姉様は昔から大勢の方々から何かしらの教育を受けていて、外に顔を出すという事がありませんでした。」

 「話がそれてしまうかもしれないけれど、リビアの知る範囲で貴女の家族の事を教えてもらえるかな?」

 「勿論、構いませんよ。むしろ聞いていただきたいです。それほど、話がそれると言うわけでもありませんから。」


 オリヴィエが私に助けを求める理由の一つに、あくまで私の予想ではあるが、彼女が家族の中で孤立してしまっている可能性がある、という事だ。

 彼女の家族との関係改善のためにも、彼女の家庭環境を知っておく必要がある。


 そう思ってオリヴィエには彼女の家族の事を彼女なりに教えてもらおうと思ったのだが、先程の話から話がそれる、と言うわけでもないようだ。


 「では、まずはお父様から。厳格な方で公私混同はしない方です。それと、最近は僅かずつ減り続ける金の採掘量に頭を悩ませてもいます。その、私が小さい頃は少ないですが遊んでいただいた経験もあり、その時には優しいお顔をされていました。ですが、今お父様とする会話は、軒並み仕事に関する話ばかりになります。」

 「仕事と言うのは?」

 「国内外への行事の参加についての話と国の農作物の収穫量や金の採掘量、そして輸入物の統計を任されていますので、その報告が主な会話内容になります。」

 「ふむ。リナーシェはニスマ王国へ嫁ぐという話を聞いているけど、リビアにはそう言う話は来ていないのかな?」

 「ええ・・・そう言えば、今のところ一度も話に出てきていません・・・。お父様から見て、私は、一国の姫としての価値が無いのでしょうか・・・?」


 有り得ないだろう。リナーシェがニスマ王国へ嫁ぐという新聞には彼女の姿も描かれていた。確かに器量の良い人物だと思うが、オリヴィエの容姿もリナーシェに劣るものではない。

 それに父親から国の財政に深く関わる内容を任されているのならば、魅力が無いのではなく、むしろ手放す事が出来ないと考えるべきじゃないのか?


 「リビアは最近までティゼム王国にいたわけだけど、その間リビアが任されていた仕事はどうしていたのかな?」

 「何人か人を呼んで管理させています。私がティゼム王国へ向かう際に引継ぎをしましたので。今もその人達が行っているかと。」


 つまり、オリヴィエは本来ならば複数の統計士がやるべき仕事を、一人でこなせてしまうという事か。やっぱり凄いな。


 さて、レオナルドとオリヴィエの関係だが、彼女は父親と距離を感じているようだが、当の国王は彼女をどう思っているのか、だな。

 子供の頃は遊んでもらったという話だが、会話はしたのだろうか?会話をしたとして、どんな内容だっただろうか?

 会話の内容でレオナルドの人となりを、少しでも知る事が出来れば良いのだが。


 「レオナルドから小さい頃に遊んでもらったって言ってたけど、その時にはどんな話をしたんだい?」

 「その時は将来私がやりたい事であったり、お母様の事だったりですね。」

 「それは、リビアがレオナルドに対して言っていた事だよね?レオナルドはリビアに対して、どんな事を言っていたのかな?」

 「えっ?・・・優しいお顔をしていたのは覚えているのですが・・・そう言えば、話をする時はいつも私からで、お父様はそれに対して短く頷くぐらいだったような・・・。」


 ・・・これは、ひょっとしてレオナルドはかなり口下手な人物だったりするんじゃないか?

 娘に対してどんな事を話していいか分からないから、相手から話をしてもらって、それに対して肯定するように頷く、そんなレオナルドの心境が思い浮かぶ。


 「リビアは、レオナルドにも夢の力の話はしていないんだよね?」

 「はい・・・。お母様から誰にも話さないようにと言われていましたし、話したとして、それでお父様からも口をきいてくれなくなってしまってたらと思うと、怖くて・・・。」


 オリヴィエにとって、兄のレオンハルトから口をきいてもらえなくなったという事実は、相当に堪えたらしいな。口をきいてくれなくなる前の関係は良好だった、という事か。


 「ありがとう。それじゃあ、辛いかもしれないけど、レオンハルトについて聞かせてもらえる?」

 「・・・はい。お兄様は、お父様を心から尊敬しています。文武両道を心掛け、勉学や政治だけでなく、武芸や魔術に関しても精通している方です。私との関係は・・・。昔は良くして頂いたのですが・・・。」

 「リビアは、レオンハルトからどう思われていると思う。」

 「きっと、恨まれていると思います。口もききたくないほどに。私がお兄様の婚約者の方を死に至らしめたのは、紛れもない事実ですから・・・。愛する方に裏切られ、その場で命を失う様を見せられた時の絶望は、計り知れないと思います。」


 私も自分の事になぞらえて考えてみる。

 ・・・家の皆が実は私を嫌っていて、嫌々私と一緒にいたとしたら?我慢の限界だと言われ、嫌悪の感情を吐露され、その場で自決されたら・・・?


 一気に血の気が引いてしまう。私の青ざめた表情を見てオリヴィエも驚いてしまっている。


 「ノ、ノア様っ!?」

 「あ、ああ、大丈夫。ちょっと、現実だったら立ち直れそうにない、ありえない想像をしただけだから。」

 「ノア様でも、そこまで精神的に苦痛を感じる事が・・・?」

 「あるとも。私にも大切な家族とも言うべき子達がいるからね。」

 「そうなのですね・・・。ノア様には、大切なご家族が・・・。」


 家の皆に、あの子達に嫌われるなど、想像もしたくないな。

 そんな事になったら、多分本当に立ち直れなくなってしまいそうだ。自棄になって暴れまわり、世界を滅ぼしてしまうかもしれない。


 ・・・止めよう。ネガティブな考えなんてするものじゃない。

 あの子達の魔力から感じ取れる感情を考えれば、あの子達が本気で私を慕ってくれている事など、分かり切った事なのだ。


 私の場合はただの被害妄想なわけだが、レオンハルトは実際に愛する者から裏切られて死なれてしまったのだ。

 オリヴィエの言う通り、凄まじい絶望を味わった事だろう。それでいて王太子として問題無く振る舞えている辺り、彼の精神はかなり強靭なんじゃないだろうか?


 問題は、レオンハルトがオリヴィエをどう思っているかだな。オリヴィエは恨まれていると言っていたが、これに関しては会話が全く無いという以上、私が本人から直接聞くしかないな。


 出来ない事じゃない。幸い、私の扱いはティゼム王国の国王、クレスレイからティゼム王国と同規模の国の姫として扱うらと言っていたようだからな。


 しかも私はそのクレスレイからティゼム王国の国章が彫り込まれた宝刀を渡されているのだ。王族と繋がりを持つのは、そう難しい事じゃない。そもそも、彼等の部屋に転移してしまえばいい、というのもあるしな。

 公式だろうと非公式だろうと会話はいくらでもできるのだ。


 「私の家族の事はまた今度話すとして、リナーシェはどうかな?」

 「お姉様は先程も少し話しましたが、昔から多くの方々から様々な習い事を受けていました。」

 「その内容は?」

 「マナーや勉学、王族としての作法なども勿論習っていましたが、どちらかと言うと、様々な武器の扱いや体術を習っていた事の方が多かったです。」

 「リナーシェは武芸者なのかい?」

 「です。その筋では非常に有名だそうです。お姉様自身は、武芸者と呼ばれると怒るのですが・・・。」

 「褒められているのに?」

 「お姉様としては実戦的な技術として学んでいるのであって、決して芸ではない、と。お姉様を褒めた家臣達に憤慨しておりました。」


 なるほど。リナーシェは政治に関わるよりも戦場に立って活躍する武将タイプ、と言うわけか。

 失礼だろうが、良く彼女を嫁にしようと思う者がいたな。十中八九苛烈な人物だろうから、夫となった人物は非常に苦労するぞ?


 「その、リナーシェの夫となる人物については新聞に書いてなかったのだけど、リビアは知ってる?」

 「ニスマ王国の第一王子殿下です。少々だらしないところがあるらしく、ニスマ王国の国王陛下からお父様に、お姉様を王子殿下の妻にさせて欲しいと要望があったそうです。」

 「だらしのない王子に身も心も強い女性をあてがい、下手な事をしでかさないように監視する、と?」

 「そんなところかと。」

 「良くリナーシェは引き受けたね?嫌がらなかったのかい?」

 「むしろその逆で、駄目な王子を徹底的に教育して、自分好みの男に仕立て上げる、と意気込んでいました・・・。その、王子殿下のお顔が、お姉様の大変好みのお顔だったそうで・・・。」


 お、おおう・・・。まだ嫁いでいないというのに、その王子に少しだけ同情の念が生まれてしまいそうだ。

 明らかに王子にとって穏やかな話じゃないだろうからな。ダンダードとタニアの様な関係が容易にそして鮮明に思い浮かべてしまう。


 「それで、そんなリナーシェからリビアはどう思われていると思うかな?」

 「私は、魔術はともかく武芸に関してはまるで習っていなかったので、あまり良く思われていないかもしれません。お姉様は武を尊ぶ方ですから。」

 「直接聞いたわけでは無いんだよね?彼女との会話は、どんな内容のものがあったかな?一度や二度ぐらい、直接会話をした事ぐらいあるだろう?」

 「ええ、それは勿論。その時は、魔術のコツを聞かれたり、書類の整理法を聞かれたりと言った内容でしたが・・・。」

 「ん?もしかして、リナーシェは魔術や事務的な事が苦手?」

 「みたいです。良く書類の作成や魔術陣の構築で頭を悩ませていました。」


 だとしたら、オリヴィエはリナーシェからあまり良く思われていないように感じているようだが、むしろその逆で、頼りにされているんじゃないか?

 先程の話を聞く限り、リナーシェは快活な人のようだし。案外、彼女なりにオリヴィエの事を可愛がっているのかもしれない。


 お互いに忙しくて碌に会話が出来ていない事が災いしているのかもしれないな。

 機会があれば、じっくりと会話をする場を設けてみるのも良いかもしれない。


 「それじゃあ、レーネリアはどうかな?」

 「レーネ母様は、私のお母様と昔からとても仲が良くて、レーネ母様が嫁ぐ際に、お母様も一緒に嫁ごう、と誘われたそうなのです。」

 「親友の間柄、というやつかな?」

 「年が少々離れていたので、どちらかと言うと妹のように思っていたようです。お母様は小さい頃からやや病弱で、その時からレーネ母様がずっと面倒を見ていたりしていたそうです。一緒に嫁ごうとお母様を誘ったのも、お母様を一人にするのが心配だからだったと教えていただきました。」

 「その様子だと、レーネリアとの関係は良好のようだね?」

 「ええ・・・。ですが、お兄様やお姉様よりも優先して良くして頂いているのが、なんだか申し訳なく思えてしまって・・・。」


 なるほど。とは言え、レーネリアからすればオリヴィエもまた娘なのから、遠慮などする必要は無いと思うのだけどな。

 そもそも、レーネリアは多分、オリヴィエの母親からオリヴィエの事を頼まれているだろうし、気に掛けないわけが無いんだ。


 うん。分かった。オリヴィエは圧倒的に家族との会話が足りていない。

 時期を見計らってじっくりと思いをぶつけあう場を設けた方が絶対に良いだろう。話を聞いている限りでは、レオンハルト以外からは悪く思われているようには思えないからな。


 ああ、そう言えばオリヴィエには弟と妹もいるんだったか。その子達の話も聞いておかないとな。


 「オリヴィエ、確か、夢では弟や妹の成長した姿を見た、と言っていたよね?つまり貴女には弟と妹がいるという事だね?その子達の事も教えてくれる?」

 「はい。と言っても、弟はともかく、妹はまだ生まれていないのですが。」


 生まれていない?それはつまり、オリヴィエは夢の力によって新たに妹が産まれてくると理解している、という事か。


 「妹が生まれてくる事も、やっぱりレオナルドには?」

 「伝えていません。言えませんよ。言った時点ではともかく、あの子達が生まれた後に不審に思われてしまいます。」

 「あの子達?つまり、同時に複数?」

 「双子です。あの子達を宿して5ヶ月。そろそろネフィー母様のお腹も大きくなり始めるので、皆様も双子だと分かってくる頃かと。」

 「ああ、身ごもっている事自体は分かっているんだ。それと、ネフィー?」

 「8年前に新しくお父様が妻に迎えた方です。ネフィアスナ=セク=ファングダムと言います。ご存知、無かったのですか?」

 「8年前ではなぁ・・・。」


 私が目を通した新聞は一番古くて3年前だ。8年前の事は分からないし、その間から3年前までに起こった事柄も私には分からない。時間を見つけて新聞を読み漁るとしよう。


 「その、ネフィアスナとの関係はどうなのかな?ああ、それと、貴女の弟と言うのは?一度に聞いてゴメンね?」

 「いえ、お気になさらず。弟もネフィー母様の子ですね。名をカイン。まだ3才で、とても可愛らしい子です。ただ、男の子だからでしょうか?私よりも武芸に優れたお姉様や凛々しいお兄様に興味があるようです。ネフィー母様とは、あまり話をしないので、どう思われているかまでは・・・。」


 なるほどな。これまでの話を聞いた限り、オリヴィエは自分の家族に対して悪感情は抱いていないな。むしろ仲良くしたいと思っているようだ。

 そして彼女の家族もまた、彼女を悪く思っている者は殆どいないと思われる。


 一番の懸念はやはりレオンハルトだな。

 彼がオリヴィエの想っている通り彼女を恨んでいた場合、どうにかして彼女を許してもらう必要があるんだが、さてどうしたものかな?それとなく調べるか、直接聞いてしまうか。


 まぁ、ここで考えても仕方が無いか。オリヴィエの家族関係は分かった。


 「リビア。今貴女に一番必要なのは家族との会話だね。一度皆と本音をぶつけ合った方が良いと思う。」

 「本音を、ですか?」

 「うん。やっぱり想いというのは、ちゃんと言葉にしないと伝わらないだろうからね。私の場合は、相手の魔力や臭いで感情がある程度読み取れてしまうけど、貴女はそう言うわけでは無いからね。」

 「ええ、お父様やお姉様は臭いで相手の本質を感知する事が出来るらしいのですが、私にはできません・・・。って、ノア様?今、魔力で感情を読み取れると?」


 うん?私にとっては当然の事だが、それが一般的でないことぐらいは流石に理解している。

 出来る人間は非常に少ないと思っての発言だったのだが、オリヴィエの訊ね方だと、珍しいどころの話じゃないのか?


 「言ったよ?魔力には感情を込められるだろう?それによって威力を増減させる方法もあるしね。それが出来れば相手の感情だけでなく、言葉の真偽も読み取れるようになるよ。」

 「ノア様。初耳な内容が多すぎます。まず、魔力に感情を込める事からして既に初耳です。そしてそれによって威力が増幅される事も。」


 あれ?図書館に確かに書かれていた内容なのだが、オリヴィエにその知識が無かったのか?なら、その本を見せてあげるとしようか。


 「中央図書館に蔵書されているいくつかの魔術論文に載っていた内容だよ?複製してあるから、読んでみると良い。」

 「ああ・・・そう言えばノア様って尋常じゃない速度で本が読めて、そのうえ容易に本を複製できましたね・・・。」


 若干呆れながら本を受け取り、オリヴィエは本のタイトルに目を通す。

 すると、彼女はやや震えながらこちらに振り向き私に訊ねて来た。


 「あの、ノア様?この本、複製しちゃってよかったんですか?著者が伝説級の魔術師なんですが・・・。」


 確かに、この書物を描いた人物は世界的に有名な魔術師が書いたものだし、かなり古い書物でもあった。だが、蔵書されていたのは一般区域だ。


 「?蔵書されていた場所は一般区域だから、問題無い筈だよ?そもそも私は機密保管区域に足を運んだ事が無いからね。間違いなくその本は複製して良い本だよ。」

 「ええ・・・。国の技術の漏洩になるんじゃ・・・。」


 オリヴィエとしては、例え他国であってもその国の占有している技術が漏洩してしまう事に我慢がならないらしい。

 だったら、この本を複製しても良かったかどうか、確認を取ってしまえばいいな。


 「なんなら、後でクレスレイに確認を取っておこうか?ここからなら、転移魔術を数回行えばティゼミアの王城まで付くだろうし。」

 「ノア様、流石に気軽過ぎます・・・。ですがどうしましょう。、お願いしたくて仕方ない自分がいるのも確かなのです・・・。」

 「なら、自分に正直になろう。何、ちゃんと『通話コール』でマコトにアポイントを取ってからにするさ。突然王城に転移するわけじゃないよ。後でちょっと向こうに行って聞いて来るよ。なんなら、転移しないで、マコトに確認を頼むだけにしても良い。」


 クレスレイが気さくな人物だから、転移でパッと彼の元へ訪ねて確認して来ればいいかとも思ったのだが、少し考えれば国王の元に突然現れるなど、とんでもない事である。

 思い直して、ある程度の地位を持つマコトに確認を取ってもらう事にした。彼の仕事をあまり増やしたくないんだがなぁ・・・。


 「むしろそうして下さい。クレスレイ陛下ならばノア様の行動も笑って対応して下さるでしょうけど、他の方々はそうはいかない筈です。」

 「だろうねぇ・・・。まぁ、この話はここまでにしておこうか。」

 「ええ。今の私には魔力から感情を読み取る事も難しそうですから。」


 思わぬところでヘンに時間を食ってしまった。話を戻そう。話すべきはオリヴィエと彼女の家族との関係改善なのだ。

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