閑話 とある少女の新たな目標2

 午後の授業が始まる前に、ノア先生の授業に興味を持った男子が授業の内容を聞いて来たから、事細かに説明してあげる事にしたわ。


 「―――大体こんな感じね。とにかく、強くなりたいんだったらこの授業を選ばないって選択肢は無いわね!先着順にしてあるのも納得よ!」

 「お、おう・・・。」

 「その、シャーリィがまるで相手にならなかったって、本当なのか?」

 「ハッキリ言ってそういう次元じゃなかったわね。比べる事すらできないぐらい差があるわ。それでいて的確な指摘も指導もしてくれるから有り難いってもんじゃないわね。」

 「な、なるほど・・・。」

 「あっ、そうだ!」


 男子達は軒並みノア先生に見惚れてたし、コイツ等が先生に色目を使わないように注意しとかないと!

 まぁ、ノア先生はそう言う視線を全然気にしてない感じだったけど。


 「いい!?先生はメチャクチャ美人だけど、変な目で見たら駄目だからね!?」

 「お、おう・・・。」

 「な、何でシャーリィがそんなこと気にするんだよ。」

 「だって先生ってば、そう言う事に全然関心が無さそうなんですもの!周りの人が注意しないとメチャクチャ絡まれちゃうかもしれないでしょ?」

 「余計なお世話だと思うけど・・・。」

 「何か言った?」

 「いえっ!何でもないですっ!」


 まったく、失礼しちゃうわね!アンタ達が実際にノア先生を見たら、絶対に見惚れるのはわかってるんだからね!



 午後の授業も最っ高だったわね!

 まさかいきなりノア先生と模擬戦出来るとは思わなかったし、模擬戦の後の魔物との戦闘では幼体とは言え、森狼フォレストウルフが召喚された時には流石にノア先生の正気を疑ったけど、勝てちゃったのよねぇ・・・私達だけで。

 それってつまり、午前と午後の授業だけで私達がメチャクチャ強くなってるって事よね!?

 もうノア先生には感謝しかないわ!午後の授業は他には受けてないし、じっくりとノア先生の事を教えてもらおうっと!



 ノア先生と話が出来たのは良かったんだけど、ノア先生は私が思っていた以上にメチャクチャにブッ飛んだ人だったわ!

 グリューナさんとお茶をした事にも驚いたけど、お茶の淹れ方を本で読んで、グリューナさんが淹れているところを見ただけだって言うのに、何でそんなにお茶を淹れる事に自信満々なのかしらね?


 正直、お茶を出してくれるって聞いた時は素直に喜べたって言うのに、その事実を知らされたら、ちゃんと飲めるものが出て来るか不安になっちゃうじゃない。


 実際美味しかったから良かったけど・・・。何か釈然としないわね。

 紅茶って、普通は本を読んで入れるところを見ただけで、あんなに美味しく淹れられるようなものじゃないと思うんだけどなぁ・・・。


 って、そんな事はどうでも良いのよ!言いたい事は色々あるけど、一番の驚きはやっぱりノア先生がこの学院の臨時教師をしてくれた本当の理由よ!


 ノア先生、私に会うためにこの学院に来たみたいなの!

 ノア先生が言うには、エロオヤジがお母さんと私の事を狙っているみたいだから、その護衛でここまで来たんですって!

 それ自体は凄く嬉しいけど、どうせなら私もそのエロオヤジに一発かましてやりたいわね。


 って、そんな事を思ってたら、ノア先生ったらエロオヤジに敢えて雇われて、相手を油断させてデッカイミスをさせるつもりらしいのよ!そのためにも、私やお母さんに協力して欲しいんですって!


 ノア先生は私を巻き込む事に少し抵抗があるみたいだったけど、そんなの即答で了承するに決まってるじゃない!

 って言うかむしろ、私の方から協力させてくださいって言うわ!


 で、こっからがノア先生のブッ飛んだところよ!

 いきなり私の家の玄関まで魔術で転移しちゃったのよ!?もうびっくりしたなんてものじゃないわよ!正真正銘の遺失魔術だもの!

 それを着火魔術みたいな感覚でポンって使っちゃうのは、絶対どうかしてると思うわ!どう考えても尋常じゃない魔力を消費する筈だもの!

 なのにノア先生ったら、全然消耗した様子が無いのよ!?ホントに授業中にも思ったけど、どういう魔力量をしてるのかしらね!?


 その後、エロオヤジの家で待機する事になったんだけど、いきなり私の隣に現れた時はホンットにメチャクチャびっくりしたわ!

 お母さんがまた転移かな?って聞いてたけど、今度は触れる幻ですって!?しかもその幻、複数体出せるらしいの!


 それだけじゃないわ!その後すぐにノア先生本人の視界を私達の前に映し出したりもしたの!しかも音声付きで!

 ね?ブッ飛んでるなんてものじゃないでしょ!?一度にとんでもない魔術をあれこれ見せられちゃって、頭がどうにかなりそうだったわよ!しかもなるべくなら内緒にして欲しいだなんて言って来るんだもの!心臓に悪いなんて話じゃないわ!


 でも、正直メチャクチャワクワクしたわねっ!世の中にはこんなに凄い人がいたんだ、って!私はそんな凄い人に色んな事を教えてもらう事が出来るって、そう思ったらワクワクしない筈が無いのよ!


 あああああ!ノア先生の授業がもっと受けられたらなぁー!どうして月末までしか受けられないのかしら!?

 いやまぁ、ノア先生のこの国の滞在期間だかららしいけど、出来る事ならずっと先生でいてもらいたいぐらいだわ!


 他にもノア先生の魔力が最低でもドラゴン10体分以上あるだとか、グリューナさんから出会って早々生涯仕えたいなんて言われたらしいし、普通の竜人ドラグナムじゃないって事は間違いないわね!

 っていうかノア先生って人間なのかしら?案外、ドラゴンのお姫様だったりしてね?お忍びで人間の国に遊びに来てるとか?


 ま、そんなわけないわよね!

 ドラゴンのお姫様って事は竜王ドラゴンロードって事だし、そんなヤバい存在、魔境や大魔境の最深部でしか確認されてないんだし。


 それはそれとして、エロオヤジの家は金持ちなだけあって結構いい部屋だったわ。やっぱり学校での生活の事で色々と小言を言われちゃったけど、それでも久しぶりにお母さんと一緒に話が出来た事は嬉しかったし、一緒に寝るなんて何年ぶりかしら?ちょっと恥ずかしかったけど、凄くぐっすり眠る事が出来たわ!


 こんな事ノア先生に協力しなきゃできなかったんだし、感謝しとかないとね!



 それで次の日なんだけど、あの胡散臭い臨時教師がノア先生に絡んでたのよね。

良く分かんないけど、ノア先生の事を逆恨みしてるみたいだったわ。


 「貴様か!カークス母娘に媚を売っているという身の程知らずは!」

 「?事情が良く分からないんだけど、貴方はもう一人の臨時教師かな?」

 「テュータス様だ!覚えておけ!貴様の様な"上級ベテラン"程度の冒険者風情などとは、地位も待遇も違うのだ!」


 うっわ、嫌な奴ぅ~。最初からあんまり良い印象は無かったけど、ノア先生がどれぐらいの実力を持ってるのか全然理解できてなさそうね。そう言えばアイツ、昨日は学院で見かけなかったわ。

 って言うか、私とお母さんに媚を売ってるって?訳が分かんないわ?そもそも身の程知らずなのはノア先生に絡んでるアンタの方じゃない。


 って、先生ったらあんな事言われたっていうのに全然怒ってないわね。もう何て言うか、アイツの事は取るに足らないどころの話ですらないみたい。無意識で格下扱いしてるわ。


 「?そういう貴方は、冒険者どころかどこかのギルドに所属しているようにすら見えないけれど?」

 「ハンッ!これだから無知な冒険者は。貴様とは地位も待遇も違うと言っただろうがっ!俺様はさる子爵様に身分を保証されているのだ!そして侯爵様からの推薦もいただいてこの学院に勤めているのだ!どんな手を使ったか知らんが、"上級"程度の貴様とは訳が違うのだっ!」

 「ふむ。私の事は昨日の内に全教員に話が学院長から通達が言っている筈なのだけどね。知らないという事は、知らせなくても良いと判断されたという事かな?」

 「何だと?」


 うおぉ・・・。ノア先生って煽る時は煽るのね。遠回しに学院から信用されてないって言ってるようなものじゃない、それ。


 「ん?シャーリィ、どうしたんだ?そんなところで?」

 「あっ!アンタ達、コッチ、早く来なさい!」

 「えっ?ちょっ!なんだよ・・・。」

 「らしくねぇなぁ、シャーリィがコソコソするとか・・・。」


 こんな時に幼馴染の三人組が一緒になってここに来るとか・・・。確実にノア先生には気付かれてるだろうけど、テュータスにまで気付かれたらどうすんのよ!

 ホラ!さっさと身を潜めなさい!もしかしたら、先生の実力の一端が分かるかもしれないのよ!?


 「ちょっ!?分かったから、分かったから少し離れろって!」

 「シャーリィ?そのだな、君にとってはそれどころじゃないかもしれないが、もう少し男子と密着しているっていう自覚を持ってくれないか・・・?」

 「っ!?バカッ!そういうのは後で言ってよ!意識しちゃうじゃないっ!」

 「ええぇ・・・流石に理不尽だろ・・・。」


 だってこっちはアンタたちが揃いも揃って私をどう思ってるか大体わかっちゃったのよ!?意識しないわけにはいかないじゃないっ!意識しだしちゃったら、流石に私だって恥ずかしいのよっ!

 っていうか今はそれどころじゃないでしょうが!ノア先生よっ!


 「貴方が誰の紹介を経て誰の推薦を受けていようと、関係無くないかな?この学院で重要なのは学院からの、学院長からの信頼だろう?ああ、私は学院長から直接、臨時教師をして欲しいと依頼を受けたよ。」

 「そ、それが何だと言うんだ!?貴様はただの冒険者!俺様には貴族の後ろ盾がある!それがどういう事か分かっているのかっ!?」

 「ふむ。貴族の後ろ盾と言うのなら、私にも一応はあるね。ヘシュトナー侯爵だったり、モスダン公爵だったり。それがどういう事か、貴方は分かっていると?」

 「なっ!?な、な・・・っ!?」


 完っ全にブーメランね。自分で言った事がそのまんま帰って来てるじゃない。

 しかもエロオヤジはともかく、モスダン公爵様って。どういう経緯でそんな事になったのかしら?

 ノア先生って、果てしなくブッ飛んでるせいで謎が多いのよね。


 「なぁ、今とんでもない人の名前が出て来なかったか?」

 「ああ、俺も聞こえた。聞き間違いじゃなかったんだな。」

 「俺達全員が難聴でもない限りな。あの人一体、どういう人脈してるんだか。」


 私もそれ知りたい。でも、私が知る事じゃないと思うのよね。少なくとも今は。

 私が騎士団長とかにでもなれば、何時かは知ることが出来るのかな?


 あっ、なんか小太りで身なりのいい男が近づいて来たわね。学院の関係者じゃないみたいだけど、誰かしら?


 「おい、テュータス!そいつかっ!?私の目論見を邪魔した愚か者はっ!?」

 「メンメメウス様!閣下自らお越しとは!おい貴様ぁっ!この御方をどなたと心得るっ!?この御方はこの国のメーメイメン子爵領を国王陛下から賜られた、メンメメウス=メーメイメン子爵閣下であるぞっ!?」

 「うむっ!私がメンメメウス=メーメイメンである!冒険者風情が頭が高いではないかっ!不敬であるぞ!」


 ブフゥッ!?何その名前っ!?いくら何でもメが多すぎでしょ!?家名は仕方ないにしても、名前の方は何とかなるでしょ!?なんで一々名前にまでメを大量につけるのよ!?

 笑わせようとしてるの!?それで笑わせたところで無礼だーって言ってしょっ引くつもりなのかしらっ!?


 だとしたらやるじゃない!少なくとも私は笑う。っていうか笑ったわ!

 みんなも同じ気持ちみたいね。必死に口元を抑えて笑いを堪えてるわ。アンタ達、よく噴き出さなかったわね。


 そしてノア先生は・・・全然反応無しね。凄いわ。あの名前を聞いて、全然表情が変わらないなんて。


 「別にこの国には貴族を前にしたら頭を下げろ、と言う法律があるわけでは無いからね。頭を下げる必要を感じていないから、下げるつもりは無いよ。」

 「んなぁっ!?」

 「き、貴っ様ぁ・・・っ!ふざけるのも大概にしろよぉ・・・っ!」

 「ふざけているつもりは一切ないのだけどね。で、メーメイメン子爵。貴方の目論見と言うのは?私がそれを阻害したからこうして私の元まで来たのだろう?」

 「そ、そうだっ!貴様!よくもぬけぬけとカークス母娘をヘシュトナー侯爵閣下の元まで届けてくれたなっ!?おかげで私の計画が台無しであるぞっ!」


 えー。なんなの?あのテュータスって、私をエロオヤジの所に連れてくために学院に来たって事?

 何なのかしらね。目的がノア先生とほとんど変わらないのに、今まで以上にアイツが気持ち悪く感じて来たわ。


 「ううむ?シャーリィをヘシュトナー侯爵の元へ届けて覚えを良くしてもらおうとでもしたのかな?だとしたら、文句を言うべきは私にではなく、貴方が雇っているそっちの彼にじゃないかな?私が臨時教師になる前にシャーリィを侯爵の元まで届ければいいだけの話だったのだから。私に文句を言うのはお門違いというものだ。」

 「なっ!?な、何だとぉ・・・!?」


 いやぁ、それは無理じゃないかなぁ。私とテュータスって全然接点無いし。

 私をあのエロオヤジの所に連れてくなら、それこそ拉致でもしなきゃ無理だったんじゃないかな?でもテュータスにそれをやる度胸何て無さそうだったし。


 「ふ・・・!ぐぐぐぐぐ・・・!おいテュータスッ!この世間知らずに、お前の実力を教えて身の程を分からせてやるのだっ!」

 「その命令を待っていましたよっ!おい貴様ぁっ!もう容赦せんぞ!このテュータス様の恐ろしさを存分に分からせてやる!この俺様はなぁ・・・!」

 「御託は結構。こういうものは結果が全てだろう。どのような手段を用いようともな。私が気に食わなくて痛い目に遭わせてやりたいのなら、さっさとかかってくればいい。まぁその場合、相応の覚悟はしておく事だ。」

 「ほぉざけぇえええっ!!」


 正論をぶつけられて頭に来たのね。脈絡もなくノア先生に襲い掛かるようにテュータスに命令しだしたわ。テュータスも乗り気ね。

 ただ、テュータスはノア先生の実力を全然理解していないようね。勝てると思い込んでるみたい。


 まぁ、ノア先生って魔力の制御が尋常じゃなく上手だから、いつもは本当に普通の冒険者って思うぐらいの魔力しか感じられないのよね。だからこそテュータスも勝てると思い込んでるんだろうけど。



 で、先生に向かって駆け出したテュータスなんだけど、途中で止まってノア先生の周りをぐるぐる回り続けてるのよ。何してるのかしらね?

 ノア先生との距離は結構あって、たまにノア先生の尻尾がギリギリ届かない所まで近づいてすぐに離れるの。


 傍から見てるとアレね。野犬の動きによく似てるわ。安全なところで相手にうるさく吠え続けて威嚇するの。で、相手に空振りさせたりして体力を奪ったところで本格的に攻撃するって奴かしらね。


 正直、私一人だと勝てないわね。私より動きが速いから追いつけない。

 だけど、ここにいる四人なら問題無く勝てちゃうわね。ハッキリ言って、ノア先生の敵じゃないわ。


 あっ、ノア先生がまた地面から椅子を出して座っちゃった!しかも『格納』から本を取り出して読書を始めてる!

 もはや敵ですらないって判断されちゃったのね・・・。ここまで来るとかなり哀れだわ。


 「馬鹿がっ!自ら勝負を捨てたかぁっ!!」

 「・・・・・・。」


 あくまでノア先生に近づく気が無いのね。尻尾の届かない距離から短刀を投げつけ始めたわ。

 けど、そんなのがノア先生に通用するはずないわよねぇ。片手で弾き落とされて終わ・・・ってうそぉっ!?全部尻尾で弾いて、しかもテュータスのところに打ち返してるぅっ!?短刀どころかテュータスに見向きもしてないのに!?


 ええぇ・・・。ひょっとして、ノア先生って、手足よりも尻尾の方が器用に動かせたりするのかしら・・・?

 最初の模擬戦で尻尾を使われなかったのって、かなり優しくされてたって事なのね・・・。


 「な、なんだそれはぁっ!?ひ、卑怯だろうがぁっ!?」

 「何と言われても、私の体の一部だよ。見れば分かるだろう?それに、どのような手段を用いようとも、結果が全てとも言ったはずだ。今更だな。」

 「こ、この卑怯者めぇ・・・っ!」


 言いがかりにもほどがあるわね。どうせ自分が勝てなかったらどんな理由だろうと納得しない奴よコイツ。大体、尻尾で弾く事のどこが卑怯なんだか。卑怯って言葉の意味、知ってるのかしら?


 あっ、ノア先生が立ち上がって椅子も仕舞っちゃったわね。どうするのかしら?


 「っ!?」

 「参考までに聞かせてもらうんだが、どういう戦法なら卑怯じゃないのかな?貴方のように相手の攻撃が届かない位置からフェイントを続けてちまちまと小さな攻撃を続ければ良いのかな?」

 「お、おお俺様の後ろに立つなぁっ!!?」


 うわぁ・・・。テュータスがどんなに速く動いても、それ以上の速さで動いて絶対にテュータスの背後を取り続けてる・・・。ノア先生の実力を知ってると恐怖以外の何物でも無いわね。

 って言うか、ノア先生って『成形モーディング』が使えるわけだから、テュータスの間合いって、ノア先生の射程外ってわけでも無かったのよね・・・いつでもテュータスをブッ飛ばせてたと思う。やっぱノア先生って怖っ。


 「クソッ!クソォッ!!俺様から離れ・・・っ!?!?」

 「そろそろ授業が始まる時間になるから、もういいかな?この辺りにいられると、授業の邪魔なんだ。まだ私に用があるのなら、授業が終わった後にしてもらえないかな?」

 「ひぃっ!?ひぃいいいっ!?!?」

 「あああっ!?!?あああああっ!??!?」


 ノア先生、何したんだろう?テュータスの頭を掴んだ後に少し魔力を解放したのは分かるのよ。だけどそれにしては、小太り子爵はともかく、テュータスの怯えっぷりがヤバいのよね。


 まるで絶対に見ちゃいけない何かを見ちゃったような、気付いちゃいけない事に気付いちゃったような反応をしてる。

 ってうわぁっ!?ノ、ノア先生の前歯ってあんな感じだったの!?怖っ!?

 あんな歯って言うか牙で噛まれたら、温めたチーズみたく簡単に体が噛み切られちゃいそう・・・。


 多分、テュータスってノア先生のほんの少し解放された、ドラゴン10体分ぐらいの魔力も感じ取ったのよね?そりゃ怖いわよ・・・。

 ノア先生って結構秘密にして欲しい事が沢山あるみたいだし、もしかしてホントにドラゴンのお姫様なんじゃ・・・。


 や、やめやめ!怖い事を考えるのは止めましょう!鬱陶しい奴等は怯えながらどっかに行ってくれたんだし、お楽しみの授業に集中しましょ!



 それからはもうずっと平和だったわね。いや、授業の内容はハードだったけど。いやぁ、ノア先生は一人よりも班を作って魔物との戦闘に挑んで欲しかったんだろうけど、一度は一人で戦ってみたかったのよ!自分一人でどこまでやれるか知っておきたいじゃない?

 その、調子に乗っていたとは思うけど、だからって血頭小鬼ブラッディゴブリンを2体出して来るのはどうなのかしらね?


 「やる事は私との模擬戦とそう変わらないよ?だからね、出来れば魔物との戦闘はなるべく複数で挑んで欲しいな。」

 「しょうがないなぁ・・・。」

 「良し。今の戦闘でもシャーリィは成長しているようだし、今度一人で挑もうというのなら、ワイバーンでも召喚しようか。」

 「ゴメンナサイ・・・。素直にチームを組みます・・・。」


 流石にワイバーンは無理!って言うか、ワイバーンも問題無く召喚できるのね!?ひょっとして、ドラゴンも召喚出来ちゃったりするのかしら?


 「いや、ドラゴンは今は無理だね。まぁ、その内には、かな?」

 「いずれは出来るようになっちゃうんですね・・・。」


 一人でドラゴンの召喚とか、前代未聞なんですから、絶対に人前でやらないで下さいよ!?世界中で大騒ぎになっちゃいますからね!?



 って思ってたらもっと世界中で大騒ぎになるような事実が発覚しちゃったの!

 テュータスを蹴散らした次の日なんだけど、エロオヤジ達を纏めてとっちめた際に、なんとノア先生、天空神様からメチャクチャ強力な寵愛を授かってる事が判明しちゃったの!

 シセラ様が言ってたから間違いないわ!しかもその日の内に称号まで獲得しちゃったの!


 称号名は『黒龍の姫君』って、そのまんまじゃないっ!!

 このネーミングセンスは、きっとマコトさんね。まぁ、冒険者のギルドマスターなんだからマコトさんが命名するのが当然なんだけど、あの人って結構安直な名前の付け方するのよねぇ・・・。いやまぁ、分かり易くて良いと思うけど・・・。


 しかも国王陛下からノア先生の事は一国の、ティゼム王国と同規模の国のお姫様と同列の扱いをするように御触れがあったの!辟易とした表情でその事を愚痴るように教えてくれたノア先生は、なんだか少しだけ可愛らしかったわ。もてはやされるのに慣れていないみたいなの。

 ノア先生の見た目でもてはやされないわけが無いんだから、諦めましょ?ノア先生も私に言ってたじゃないですか。コレも見目の良い者の宿命って奴ですよ!



 ノア先生の授業は本当にためになる。だけど、ほんの短い時間しか受ける事が出来ないのが本当に残念で仕方が無いわ。


 でも、おかげで私にまた新しい目標が出来たわ!


 次にノア先生に会うまでに、もっと成長してノア先生をビックリさせるんだ!それで褒めてもらって、頭も撫でてもらえたらいいなぁ・・・。


 よぉーし、目標に向かって頑張るぞぉーっ!

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