閑話 とある少女の新たな目標 

 私、シャーリィ=カークスには目標としている人がいる。人類最強とも言われている最上の騎士、てん騎士であり、他ならぬ私のお父さんだ。

 とってもカッコ良くて、とっても優しくて、そしてとっても厳しい人だ。そんなお父さんに憧れて、私も騎士を目指している。

 その事にお父さんは歓迎してくれてるけど、お母さんは少し否定的だ。お母さんは私にもう少し女の子らしくして欲しいみたい。


 そうは言われても少し無理があると思う。私がお父さんの娘で、その才能を受け継ぐ事が出来たからなのか、私には剣術の素養があるらしい。

 小さい頃にお父さんから護身術として簡単に剣の扱い方を教えてもらったのだけど、あっという間に体得してしまい、お父さんすら驚かせてしまった。

 その時、お父さんは望むのなら、本格的に剣を教えてくれると言ってくれた。


 普段は騎士団長として忙しくしていて、あまり家にいる事が無いお父さんと一緒にいられる時間が増えるから、私は迷わずお父さんから本格的に剣を教えてもらう事にした。

 流石に本格的な教えにもなると、稽古の内容もとても厳しいものになったけど、それが私のためを思っての事なのは不思議と最初から理解できていたの。だから、稽古の内容は全然苦にならなかったわ。


 そのおかげもあって、幼馴染の男子達との稽古に見立てた遊びでは、いつも私が勝っていた。圧倒的過ぎたせいで、何時からか私対男子達と言う構図が出来上がっていたくらいよ。

 ただ、男子達と遊ぶのが楽しすぎて、同性の友達が全然できてなかった事に学院に入るまで全然気づけなかったのは、流石に拙かったわね。


 学院に入ってから、女子の中で孤立する事になっちゃったの。酷いときには目に見えた嫌がらせをしてくる女の子もいたぐらいだ。まぁ、私には全然効かなかったけど。でも、煩わしさを感じたのは間違いなかったわ。

 それと言うのも、幼馴染の男子達がみんな無駄に顔が良いのが悪い。アイツ等、みんなして女の子達からモテるっていうのに、私に挑む事に夢中になっているんだもの。嫉妬の感情を向けられるのも、流石に理解出来るわ。

 ただ、小さい頃からの付き合いのせいで、あんまりアイツ等の事を無下にも出来ないのよねぇ・・・。


 そんな中、私にとって大きな助けになってくれたのが、宝騎士のグリューナさんだったの。

 グリューナさんは、凄く凛々しくてとってもカッコイイ。しかも女性でありながら宝騎士って呼ばれる一般的に騎士の最上位に位置する立場だから、グリューナさんは貴族の女子達からとても人気が高いのよ。

 そんなグリューナさんが私に稽古をつけてくれて、しかも私の剣を褒めてくれて、メチャクチャ良くしてくれたの。お父さん以外の人で、初めて憧れを持っちゃった。


 それからというもの、相変わらず女子から私に積極的に声を掛けられる事はないけれど、嫌がらせ自体はピタリと止んだわ。

 嫌がらせをしてきた子達もグリューナさんのファンだったみたい。あの人から嫌われるような事はしたくないみたいね。


 そんなグリューナさんは30代の女性だけど、竜人ドラグナムだからかその外見は凄く若くて綺麗だ。

 いや、ウチのお母さんも何故か20代後半ぐらいの見た目をしてるんだけどね。アレ、ホントに謎なのよね。お母さんはれっきとした庸人ヒュムスの筈だし、若さを保つために特に何かしてるわけでもないのに。


 そのせいで、ヘンな貴族からやらしい目で見られる事が結構あるのよねぇ・・・。まぁ、お父さんが睨みを利かせてるから陰でこっそりって感じだけど。

 お母さんもそういった人達の事は眼中にないみたいで、お父さんに夢中だ。娘の立場から見ても二人はいつもイチャイチャしてる。

 二人が幸せそうなのは良いんだけど、そう言うのは出来れば二人きりの時にして欲しいなぁ。


 だけど、そんなお父さんが"楽園"に向かい、音信不通になってから一月が経ってしまったの。

 "楽園"で一月音信不通になるという事態は、世界共通で亡くなったと判断される事なの。小さな子供でも知っている事よ。

 お父さん達カークス騎士団のみんなが"楽園"に入ってからずっと定期連絡はされていたのに、それがある日を境に急に無くなった時点で、なんとなく察している部分は、私にも、お母さんにもあった。"楽園"っていうのは、そういう場所だから。


 お父さんは確かに人類最強と言われているけど、それは結局のところ人間の範囲での話だ。世界には、人間ではどうしようもない存在が神様達を始めとして沢山存在している。"楽園"にはそんな存在が特に沢山生息しているって、小さい頃から何度も聞かされてきていたもの。

 国の一大事だからと言う理由でお父さん達が"楽園"に向かった時から、こういう事になるかもしれないって、お父さん本人から聞かされてきた事だ。


 それでも、大好きだったお父さんが実質亡くなって、もう会えないと理解した時には、どうしようもないくらいに泣いちゃったし、一晩中部屋に閉じこもる事にもなったわ。


 お母さんも、とても悲しんだみたい。それなのに、私や使用人の人達には全然悲しい素振を見せなかったのは、逆にとても痛ましくて、しばらく顔を直接見る事が出来なかった。


 それからというもの、お母さんは今まで以上に私に女の子らしくあるように小言を言うようになってきたの。

 理由は分かるわ。どれだけ強くなっても、人間ではどうしても越えられない壁がこの世界にはあるのだから。

 騎士になるっていうのは、いつかその壁に挑まなければならない時が来るかもしれないって事なの。

 お母さんは、私まで騎士の仕事で命を落として欲しくないんだと思う。


 だけど、私の憧れる気持ちは、お父さんやグリューナさんのようになりたいっていう気持ちは、変わらなかった。

 それどころか、その想いは強くなる一方で、今まで以上に稽古に励むようになったし、暇を見つけてはグリューナさんに剣を見てもらうようにもなった。

 流石にちょっと頻繁に声を掛け過ぎちゃったせいか、グリューナさんから心配されてしまった。


 「ふむ・・・。シャーリィ、実力を上げているのは認めるが、無理をしていないか?貴女にはまだ十分な時間があるんだ。急ぐ必要は無いんだぞ?」

 「うーん。頭では、分かっているんですけど、どうしても居ても立ってもいられなくって・・・。」

 「何かせずにはいられない、という事か・・・。」

 「はい・・・。あんな事があったっていうのに、今まで以上にお父さんやグリューナさんのようになりたいって思っちゃうんですよねぇ・・・。」

 「御父上に憧れるのは分かるが、私にもか?光栄な事だな。ならば、貴女の新たな目標に相応しくなれるよう、私も今よりも上を目指さなければならないな。」


 その時からグリューナさんは少し変わった気がする。相変わらず私の面倒も見てくれはするけど、その中でも自己鍛錬を続け、今以上の実力を付ける事に躍起になっているような気がした。


 後で知った事だけど、グリューナさんはお父さんの後を継いで巓騎士になろうとしていたみたいだった。私の新しい目標になろうとしてくれてたんだ。

 ただ、グリューナさんはちょっと直情的なところがあるというか、こう言うと凄く失礼だけど、脳筋なところがあるから、それで他の騎士の人達に誤解を受けているかもしれない。



 お父さんが亡くなったと決定してから少しして、幼馴染のアイツ等が揃いも揃って一対一の決闘を申し込んで来た。


 内容はみんな同じものだった。


 「前に言ってたよな?結婚したかったら、お前と戦って勝ってみせろって。だったら、俺と決闘してくれ。そして、俺が勝ったら、俺と結婚してくれ!」


 どいつもこいつも、気が早すぎじゃない?何でそんな早くから結婚したがるのよ?そもそも実力差が分かってるのに、何で今私に挑んでくるんだか。

 正直、呆れたっていう気持ちもあったから適当にあしらおうとも思ったんだけど、アイツ等って変に真面目なところがあるから、こういうところで手を抜くと、決まって凄く怒るのよねぇ。


 仕方が無いから、全力でボッコボコにしてやったわ。その時になってアイツ等がみんなして私の事をどう思っているのか、剣を通じてなんとなく分かっちゃってかなり恥ずかしくなったけど、私に一度も剣を届かせられない人を結婚相手に選ぶつもりは無いわね。

 私と結婚するなら、せめて隣に立って安心出来るぐらいには強い人じゃないと。


 そんな決闘騒ぎがお母さんの耳に入った時には、心底呆れられちゃったわね。

 お父さんもお母さんの実家の人達をボッコボコにしたって言うから、きっとお父さんに似たんだと思うわ。 

 だけど、私に女の子らしくしてほしいお母さんからはやっぱり良く思われてないから、今後小言がもっと増えそうな気がするのよねぇ・・・。お母さんが私の事をとても大切に思ってくれてるのが分かる分、憂鬱だわ・・・。




 それからしばらくして、凄い事態になってきちゃった。

 なんと、無名の竜人の"上級ベテラン"冒険者にグリューナさんが一対一の戦いで負けてしまった、という情報が私に入って来た!しかも、そのグリューナさんに勝った人は、短い間だけどこの学校の臨時教師をするらしいの!

 あのグリューナさんが、同族だからってただの"上級"冒険者に負ける筈が無いし、とんでもない規格外の存在なんだと思う。

 そう言えばお母さんからの手紙で最近とても面白い竜人の冒険者と知り合いになれたって内容があったけど、その人と同じ人なのかな?


 ただ、グリューナさんに勝った人だから大丈夫だとは思うんだけど、臨時教師って言葉にはあまりいい印象は持てないのよねぇ。

 だって、その人の前に臨時教師が既にいるんだけど、その人がホンット気持ち悪い目で私の事見て来るのよ!?

 授業の内容も"テュータス流総合技術"とか言う胡散臭い内容だったし。あ、テュータスって言うのは、臨時教師の名前ね。どっかの子爵に雇われている人みたいで、その人の紹介と何処かの侯爵からの推薦があって臨時教師になったみたい。正直、大した人には思えなかったわ。

 授業も一度受けてみたけど、正直全然ためになりそうになかったから、一回受けてそれで終わり。なるべくその人とは関わらないようにしたの。


 で、実際に新しい臨時教師の人の授業の内容は"実戦式戦闘訓練"だって。正直、かなり興味が出たわね。

 実戦って事は、もしかして実際に魔物と戦ったりするのかしら?でも、だとしたらどうやって?ひょっとして召喚魔術でも使えるのかしら?

 でも、グリューナさんに一対一で勝てた人なのよね?召喚魔術なんて使っている暇があるのかしら?

 ひょっとして、剣術も魔術もグリューナさんみたく両方出来る人なのっ!?そんな人が先生になってくれるんなら、受けないわけにはいかないわね!幼馴染のアイツ等も誘って一度でいいから受けに行きましょう!こういうのは最初が肝心よ!

 って、よく見たら先着順じゃない!?急いで授業を申し込まなきゃ!ホラ、アンタ達、急ぐわよ!!



 新しい臨時教師のノア先生ってば、グリューナさん以上にメチャクチャ綺麗な人だったわ。男子共は勿論として、女子も何人かノア先生に見惚れてるわね。

 グリューナさんと違って、角じゃなくて太くて長いシッポが生えてるんだけど、その尻尾もメチャクチャ綺麗なのよね。

 尻尾や髪の毛が光の当たり具合で紫や緑に光沢を放ってるし、尻尾の先端には少し地味な色彩だけど、凄く幻想的でお洒落なカバーもつけてる。

 しかも冒険者の筈なのに装備らしい装備は一切身に付けていないし、かなりお洒落で上質な服を着てる。絶対、その服冒険用の服じゃないと思うわ。


 ただ、とんでもない実力者なのは間違いないわね。何をしたのか分からないけど、ノア先生は地面と一体化している椅子に座りながら本を読んでいるの。それも物凄い速さで。

 傍から見たら、パラパラとページをめくっているようにしか見えなかったわ。アレでちゃんと内容を把握できているのかしら?

 後で聞いたら問題無く出来てたらしいのよ。世の中にはそう言う事が出来る人もいるって聞いてたし、羨ましい限りだわ。私、本を読むのは苦手だもの。じっとしてなきゃならないから、すぐに眠くなっちゃうのよねぇ・・・。


 で、話を戻すけど、ノア先生が読んでた本、『格納』から出してたのよ。読み終わった本を『格納』に仕舞いながら、新しい本を『格納』から取り出しているの。

 何でそんなに高等魔術の『格納』を頻繁に、しかもやたらスムーズに使えるのか全然理解できないけど、少なくとも魔術に関してはグリューナさんどころか、お父さんすら圧倒的に上回る人だって事は理解出来たわ。

 装備とかも一切身に付けていないのも、『格納』があるからみたいね。必要になったら取り出すのかしら?どんな武器を使うのか、楽しみだわ。



 ノア先生、あのマコトさんから"一等星トップスター"認定されてた。

 ていうか、冒険者の人達からはメチャクチャ有名な人らしい。後で聞いた話だけど、冒険者の人達にも私達みたく稽古をつけてるらしいのよね。

 そもそも、私達の臨時教師になったのも、冒険者達を鍛えるぐらいなら、自分の子供を鍛えて欲しいって、どっかの我儘貴族が言い出したのが始まりらしいけど。


 で、実際のノア先生の実力なんだけど、ヤバいなんてもんじゃなかったわね。

 どんな武器を使うかと思ったら、両手から『成形モーディング』で魔力の棒を生み出し始めたの。しかもそこから[全員で掛かって来なさい]、よ?流石に甘く見られてるかと思ったんだけど、全然そんな事なかったわ。


 幼馴染の一人、クラウスがみんなに的確に指示を出しながら他の幼馴染のテミーとディンと一緒にノア先生に向かって行ったんだけど、三人も含めた他の生徒の攻撃も片手で対処されてたわ。しかも、もう片方の魔力棒で向かってきた魔術を丁寧に術者に跳ね返してた。


 ちなみに、私はみんなに時間を稼いでもらっている間に自己強化魔術を掛けれるだけ掛けて、最高のタイミングで最高の一撃を放つために少し離れた場所で様子を伺ってたの。

 十秒間消極的な行動をとってたらノア先生の方から打って来るって言われてたから、それまでの間になんとか隙を見つけなきゃいけなかったんだけど、しばらくの間、全然隙なんて見つけられなかったのよ。


 何とか限られた時間の中で隙を見つけて攻撃したけど、駄目だったわ。

 折角みんなに時間を稼いでもらって、とっておきの一撃を最高のタイミングで放つ事が出来たって言うのに、まるで通用しなかったの。完全に死角からの不意を突いた筈なのに、見向きもせずに対応されちゃったわ。


 「良い威力だ。その一撃なら、森猪鬼フォレストオークも一撃で屠れるよ。仕掛けるタイミングも良かった。ただ、魔術に関しては少し苦手のようだね。もう少しスムーズに自己強化を掛けられるようになれば、もっと余裕を持って攻撃のタイミングを窺えるようになるよ。」

 「へっ!?ぅあぐぅっ!?」


 しっかりと私の渾身の一撃を受け止められた後、威力とタイミングを褒めてもらえたのは素直に嬉しかったんだけど、その後容赦なく魔力棒で叩かれちゃった。正直メチャクチャ痛かったわ。


 こんなに痛い思いをしたのって、初めてじゃないかしら?お父さんとの稽古でもグリューナさんに剣を見てもらってる時もこんな痛い思いをした事なかったし。

 でも、痛い思いをするって事も重要なのね?他の子達に指摘してた内容の中に、痛みで行動が阻害される事で致命的な隙が生じるのは避けるべきだって言ってたし、なるほどね。コレが"実戦式戦闘訓練"って奴なのね。良いじゃない!上等よ!



 一通りの生徒がノア先生から指摘を受け終わったところでほとんどの生徒がダウンしてたわ。だってノア先生のあの魔力棒、メチャクチャ痛いもの。疲れよりも痛みで悶絶してる子の方がずっと多かったの。

 で、驚愕する事が更に発生。ノア先生ったら、私達との模擬戦をしてる最中、ずっと『成形』で魔力棒を二本も維持し続けてたって言うのに、グラウンドのあちこちで悶絶してる私達全体を一度に範囲に収めるだけの『広域治癒エリアヒール』を使いだしちゃったのよ。どんだけ魔力があるのかしら?

 しかも範囲もヤバいけど速度も効果も全部ヤバかったわ。怪我も痛みも一瞬でポワッと治っちゃったんだもの。ホントに痛い目に遭ってたの?って思うぐらいには何事も無い状態になっちゃったわ。


 意外だったのは、こうして全員でノア先生と戦うのは、今回だけみたい。ノア先生の実力がどの程度のものか知ってもらうための模擬戦だったんだって。

 凄くためになった気がするから、正直メチャクチャ残念なんだけど、今後の模擬戦はなんとノア先生と一対一での模擬戦なんだって!

 しかも形式としてはさっきの模擬戦と同じようね。基本的に私達がノア先生に打ち込んで、ノア先生がその攻撃に対して注意点と改善点があれば指摘するっていう流れみたい。それを一対一で行うって、物凄く贅沢な事だと思うわ。むしろ授業内容、それだけでいいんじゃないかしら?


 でも、授業はそれで終わりじゃないわ。むしろ、ここからが本番だったの。

 最初に説明されたけど、授業の内容はノア先生との模擬戦と、魔物との戦闘の二種類。つまり、今度は魔物との戦闘になるわけね。ここでも私達は驚かされる事になったわ。


 弱い魔物が召喚されて欲しい、なんて情けない事言ってた奴もいたけど、そんなんじゃ訓練にならないわ。むしろちょっとどころかかなり苦戦するようなのを召喚して欲しいぐらいよ!


 って思ってたらいきなり猪鬼オークの群れが召喚されたの!しかもただの猪鬼じゃなくて役職付きの強力な奴等!しかも中には森猪鬼以上の強さを持つ騎士ナイトまでいるわ!

 いや、確かに苦戦する相手を召喚してきて欲しいって言ったけど、ちょ~っと容赦なさすぎじゃありません? 


 流石の私もほんのちょびっとだけ萎縮してたら、クラウスが全員に発破を掛けて全員の士気を取り戻してたわ。やるじゃない!ちょっとだけ、ホントにちょっとだけカッコイイって思ったわよ!

 おかげで私達は猪鬼騎士に専念出来るわ!しかもテミーとディンも一緒。

 この二人と連携が取れるなら、油断さえしなければ絶対に勝てる!そんな確信が私にはあった。


 って確かに思ってたわ。確かに思ってたけど、まさか誰も直撃を受ける事なく勝利できるだなんて思ってもみなかったわ!

 さっきの今なのに、ノア先生との模擬戦の後で私、確実に強くなってる!それが実感できて、嬉しさがドンドン体の奥から溢れ出てきた。


 もっと、もっとノア先生と模擬戦がしたい!すればするほど私は強くなれる!そんな気がして仕方が無かった。


 そして時間はまだまだ残ってる。残りの時間は今度こそノア先生との一対一での模擬戦だ。早く戦いたくて仕方が無い!

 そんな思いが通じたからか、私が最初にノア先生と模擬戦をする事になった。


 時間は三分間。最初に見かけた椅子と同様、地面から砂時計を生み出して三分間計るみたい。で、三分経ったら先生の方から打ち込んでくるから、それを凌げって事ね。多分、凌げないような打ち込みをしてくるんだろうけど。


 最初の模擬戦では二本の魔力棒を出現させてたけど、今回は一本だ。ま、一本で十分って事よね。良いわ。なら、当面の目標は、先生に二本の魔力棒を使わせる事かしらね。


 楽しい時間はあっという間に終わりを告げて、今はディンがノア先生と模擬戦を行ってる。ああ、羨ましい。もっとノア先生と模擬戦がしたいのに!

 て思ったんだけど、そう言えば授業の説明を受けてるときにノア先生から[見る事もまた稽古の一つだ]って言われてたのを思い出したわ。

 見る事も、か。他の子達の動きもだけど、確かに少し離れた所から見る先生の動きは、メチャクチャ参考になる。この目に焼き付けておこう。



 授業が終わった後、私はどうしてもノア先生話をしたかったんだけど、流石に他の授業があるから、そっちを優先させる事にしたわ。


 午後の授業はノア先生以外の授業は取ってないし、色々と話を聞かせてもらわなきゃ!楽しみだわ!授業も、その後のお話も!

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