第156話 私は味にうるさいんだ
転移した先で玄関のドアノッカーを鳴らす。シャーリィは自分の家の玄関に視界が切り替わった事に、心底驚いているようだ。
「ええぇ・・・ホントに一瞬で移動しちゃった・・・。」
「驚かせてごめんね。ただ、あの場で説明するよりも、実際に体験してもらった方が分かり易いだろうからね。」
「あっ、はい。ええっと、先生がこういう事できるのって、どれぐらいの人が知ってるんです?」
「あまり多くは無いよ?貴女も含めて片手で数える程度じゃないかな?」
「ちなみにその事、他人に言わない方が良いですよね?」
「そうだね。出来れば今際黙っていてくれると嬉しいよ。まぁ、シャーリィが母親になるぐらいには誰もが知っているようにしておきたいかな?」
「ええぇ・・・。」
その声は転移魔術を内密にして欲しい事への感想か、はたまた自分が母親になる事、すなわち結婚へ対する反応なのか・・・。
少なくともシャーリィは現状、結婚を考えてはいないようだし、そういった相手もいないようだ。
それを直接彼女に聞くつもりは無い。明らかに野暮な話だからな。そういう話はアイラとしてくれ。
ドアノッカーの音に対応してくれたのは、意外な事にアイラ本人だった。無用心が過ぎないだろうか?
聞いてみたら、シャーリィの気配はすぐに分かるとの事。そして、突然玄関の前に現れると言う異常ぶりは、私が何かしたのだろうと言う直感が働いたのだそうだ。
まさしくその通りなのだが、アイラはアイラで唯の一般人ではないらしい。優れた感知能力と直感を持っているようだ。
「それじゃあ二人とも、これからヘシュトナー邸まで行くけど、問題無いかな?何か持って行きたい物があれば、持ってくるといい。私が管理しよう。」
「あっ!それじゃあ、一回学校に戻ってもらって良いですかっ!?私稽古用の木剣を持って行きたいですっ!」
「この娘は本当にもう・・・。シャーリィ。貴女、もう少し淑女らしい物はないのですか?ああ、ノアさん、私はお気に入りの本と裁縫セットを持って行きますので、少々お待ちくださいね?」
「良いよ。それなら、その間に私達はシャーリィの木剣を取ってこようか?」
「ハーイ!」
アイラはシャーリィの装飾品よりも剣が好きだという感性に難色を示す事を隠そうともしない。
シャーリィも母親からどのように思われているか分かっているようだ。アイラから苦言を言い渡された際には唇を尖らせてこちらも不満を隠そうともしなかった。
一度学院に戻り、再びアイラの元へ戻れば、彼女の方も準備は出来ていた。宣言通り数冊の本と裁縫道具だ。
「じゃ、これらを私の『格納』に一度仕舞うけど、問題無いね?」
「ええ、お願いしますね?」
「凄いんだよ!?見た事ないぐらい複雑な構築陣なのに一瞬で組み立てちゃってさ、ビックリしちゃったよ!」
「そのようですね・・・。本当に凄いわ・・・。ああ、シャーリィ。一応これから向かうのは高位貴族の屋敷です。言葉遣いは今の内に直しておきなさい。」
「はぁーい。・・・コホン。では、先生。よろしくお願いしますね?」
アイラがシャーリィに言葉遣いの直すように伝えると、咳ばらいを短くした後、先程までのシャーリィとまるで雰囲気が変わってしまった。外向けの顔、というやつだろうな。
先程までのアイラの言葉遣いはどちらかと言うと同年代の平民の喋り方に近かったので、貴族としてどうなのかと少し疑問に思っていたのだが、余計な心配だったようだ。この辺りの教育は、アイラがしっかりと行っていたのだろう。
それでは、ヘシュトナー邸へと向かうとしようか。
ヘシュトナー邸の近くまでは転移で移動して、そこから軽く徒歩で屋敷まで移動する。昨日対応してくれた門番がいたので、彼に用件を伝えよう。
「やあ、侯爵の要望を叶えてきたから、通してもらえるかな?」
「そ、その二人はっ!?す、少し待て!今侯爵様へ伝える!」
昨日の今日で二人を連れてくるとは思っていなかったようだ。慌てた様子で門の内側へと移動してしまった。今回は使用人などは待機していなかったらしい。
「事前に通達とか、しなかったんですか?」
「必要かな?慌てた様子の侯爵が見れると思うけど?」
「あっ!そう言う事かぁっ!クフッ、あのエロオヤジが慌てた様子で取り繕ってる姿が見れるなんて、そうそう見れるもんじゃないわ!」
「シャーリィ、言葉遣い。」
「うっ!き、気を付けます・・・。」
言葉遣いが崩れてしまったシャーリィをアイラが窘めているが、彼女の内心はシャーリィとそう変わりがなく、ヘシュトナー侯爵が慌てる様を、どことなく楽しみにしているようだ。
アイラもなかなかいい性格をしている。
冷や汗をかいた門番が息を切らしながら戻って来た。ヘシュトナー侯爵に報告へ向かいここに戻って来るまでに全力疾走をしたのだろう。
彼自身は悪事を行っているような感じは無いので、一言ぐらい労っておこう。
「ま、待たせたな。侯爵様がお会いになるそうだ。前回も言ったが、くれぐれも、粗相のないようにな。」
「ああ、ありがとう。それとお疲れさま。」
一言門番を労い門の内側へと移動すれば、昨日と同様待機していた使用人に出迎えられてそのままヘシュトナー侯爵の元まで案内された。
「やぁ、久しぶりだね。アイラ。変わりなく美しいままで嬉しいよ。それにシャーリィ、君もアイラに似てとても美しくなったな。」
「ご無沙汰しております、ヘシュトナー卿。何でも、私達を保護して下さるのだと伺いましたが?」
「お褒め頂き光栄です。」
ヘシュトナー侯爵は急いで整えたであろう髪型と服装をしていて、所々小さな乱れが窺えて、若干の慌てぶりが伺える。
彼の様子にアイラとシャーリィも気付いたようで、その様子を見てにこやかな表情をしている。おかげでヘシュトナー侯爵に対して不信感を持たせる事なく会話を進められそうだ。
それにしても、ううむ。惚れた弱み?という奴か?密会の時とはまるで違った雰囲気をしているな。全体的に今のヘシュトナー侯爵は非常にだらしがない。
鼻の下は伸びているし、視線は二人の顔、胸部、腰、局部を重点的に嘗め回すように向けている。
なるほど。これが第三者から見たやらしい視線というやつか。私もああいった視線を向けられた事が何度もあるわけだが、客観的に見るのは初めてだ。存外、不快な気分にさせられるものなのだな。
ヘシュトナー侯爵はそんな視線を向けて、二人に気付かれていないとでも思っているのだろうか?
「うむ!アイラも耳にしているのではないか?下衆な考えを持った貴族が君達の地位と体を欲しているとね。」
その筆頭が良く言えたものだな。まさか本気で二人に自分の情欲が気付かれていないとでも思っているのだろうか?
だとしたら、[恋は盲目]と言う言葉があるが、あまりにも盲目的過ぎる。と言うか、自分の都合の良いように物事を考え過ぎだろう。
「良い気分ではありませんね。こんな老いた体を求められる事も、娘にそういった感情を向けらる事も。」
「全くだな!だから私は優秀な冒険者を雇い、君達を保護するように命じたのだよ!この屋敷を自分の家だと思って存分に寛ぐと良い!」
「お気遣い、感謝します。」
「しばらくの間、お世話になります。」
「うむ!部屋は既に用意してある。他に要望があれば聞くとしよう。」
ふむ。既に部屋は用意されているのか。基本的に別々の部屋を当てられるだろうが、護衛と言う立場上、私としては同じ部屋にしてもらった方が有り難い。
が、どちらでも構わない。部屋の状況は把握しているし、『
「では侯爵様。一つお願いがあります。」
「何かね?言ってごらん、シャーリィ。」
「部屋はお母様と同室にしていただいても構いませんか?こうしてお母さまと会うのは久しぶりなので、出来れば同じ部屋で一緒に過ごしたいです。」
「ああ、勿論構わないとも!存分にアイラと語り合うと良い!」
ナイスだシャーリィ。なかなかに自然体で同じ部屋で過ごす事を認めてもらえたな。これで護衛の手間も省けるというものだ。
ヘシュトナー侯爵が呼び鈴を鳴らすと、すぐさま使用人が部屋に入って来た。
二人にあてがっていた部屋を二人部屋へ変更する事を伝えると、使用人に二人を案内させるようだ。
二人に付いて行こうかとも思ったが、それはヘシュトナー侯爵に止められた。何やら言いたい事があるらしい。
「貴公、良くやってくれた!よもや昨日の今日でああも穏便に二人を連れて来てしまうとは!貴公に依頼をした私の判断は間違っていなかった!」
「それを言うために態々私を残したのかな?だとしたらかなりの気遣いだとは思うけれど、契約の内容は、報酬を受け取った後で二人を引き渡すというものだ。今はまだ、私が二人を護衛するよ?」
「ふふふ、勿論褒めるためだけに残ってもらったわけでは無い。報酬が用意できているから、受け取ってもらおうと思ってね。ああ、勿論出来立てだとも。貴公が二人を連れてきたという知らせを聞いて、大急ぎで我が屋敷の料理人達に作らせたのだ。今頃、完成している頃だろうさ。」
「へぇ?」
これはまた予想外な事だな。面白くなってきた。どのような結果になるのか、どうせだからアイラとシャーリィにも見てもらうとしよう。
場所は変わって客室。二人部屋となっていて、アイラとシャーリィが生活するのに何ら問題の無い作りとなっている。
広さも十分。私が宿泊している部屋など比べ物にならないほどの広さだ。
「あー気持ち悪かった!あんのエロオヤジ、ホンットいやらしい目で私やお母さんの事見てくるんだからっ!」
「今に始まった事ではないでしょう?それに、ああいった視線を向けて来るのは、何も彼だけでは無い筈ですよ?」
用意された部屋に入った途端に、ヘシュトナー侯爵の視線に強い不快感を覚えたシャーリィが憤慨して不満を口に出し始めた。
アイラも不快感は覚えているようだが、耐えられないものでもないらしい、落ち着いた口調でシャーリィを窘めている。
「まぁ、容姿の整った者の宿命というやつだろう。私もあの手の視線は何度も向けられているからね。知人が言うには、[慣れてしまえば、どうという事は無い]だそうだよ?」
「うひゃあっ!?せ、先生っ!?いつの間にっ!?」
「あらぁ、また転移魔術ですか?ですが、いつものノアさんとは少し違和感がありますね?」
幻を二人の前に出せば、とても驚いた反応をしてくれた。アイラは先程見せた転移魔術だと思ったようだが、同時に幻に対して違和感を覚えたようだ。
「コレは本体じゃなくて幻だよ。私はコレを複数体同時に生み出せるから、そのうちの一体を貴方達の護衛用に送ったんだ。」
「いや、こうして会話が出来てる時点で幻は無いでしょう、幻は。」
「ただの幻じゃないからね。触る事も、聞く事も、見る事も、嗅ぐ事も出来るとても便利な幻さ。おかげでヘシュトナー侯爵を始めとした悪徳貴族達の悪事の証拠をこれでもかと言うほど揃える事が出来た。」
「ええぇ・・・。」
「あらあらまぁまぁ、ヘシュトナー卿もお気の毒に。」
幻の説明をすれば、シャーリィはもはや言葉すら出ない状態となり、アイラに至っては既にヘシュトナー侯爵がどうあっても助からない詰んだ状態である事を把握したようだ。
「それで、本物の先生は今何をしてるんですか?アッ!もしかして、あのエロオヤジにエッチな事とかされてたりするんですかっ!?」
「いや?彼はどうも貴女達以外は眼中にないみたいでね、私に対してそういった視線は向けていないよ。私を呼び止めたのは、私に報酬を支払うためみたいだね。どうせだから、どういう結果になるか、二人にも見せてあげようと思ってね。」
「見せるって、どうやって・・・。」
「こうやってさ。」
シャーリィの問いに答えるように、私は本体の視界を二人の前に映し出す。
この魔術、『
視界を読み取るのなら他の場所に投影する事も出来ないかと考えてたのだ。ついでに音声も出せるようにしておいた。
「・・・・・・(ぱくぱくぱく)。」
「まぁ・・・ノアさんったら、軍人の方々が喉から手が出るほど欲しがりそうな魔術をそうも簡単に・・・。」
そうだな。遠くの景色を大勢に簡潔に伝えられるこの魔術は戦術的・戦略的に非常に有効な魔術だ。当然だが、人間達に教える気は無いので、使いたかったら自力で開発してもらおう。
では、話を本体の方に戻そうか。
ヘシュトナー侯爵自身に案内されて私が到着した場所は広々とした食堂だ。そこには出来上がったばかりのハン・バガーセットらしき料理が大量に置かれている。
その匂いは、食べなくともその料理が美味いという事を私にしっかりと伝えてきている。
さぞ、高級な素材をふんだんに使用したのだろう。とても味に期待できる。
「要望の通り100食分のハン・バガーセットだ。存分に食すと良い。」
「流石は侯爵。昨日の今日でもう用意出来るとは、見事なものだね。それでは、遠慮なくいただこう。」
席について一つ目のハン・バガーを口にする。
・・・うん。思った通り、とても美味い。これは、どの食材も最高級の物を使用したに違いない。
やはり思った通りの結果になったな。私にとって最上の結果と言えるだろう。とりあえず、10食分ほど無言で頂こうか。
まさしく絶品だな。これだけの料理を味わう機会は、そうそう訪れるものでは無い筈だ。少なくとも、人間の店で容易に食べられるものではない。
では、ヘシュトナー侯爵には怖い目に遭ってもらおう。私は味にうるさいんだ。
「ヘシュトナー侯爵は、随分と私の事を下に見ていたようだな・・・。」
「は?」
先程まで得意顔だった侯爵の顔が、私の低い声を聞いた途端、急に固まった。
そのまま少し多めに魔力を解放して、怒りの感情を乗せれば、瞬く間にその表情は恐怖のものへと変わっていった。
「何のために味を解析する事を許可したと思っている?何のために店の人間に迷惑をかけるなと言ったと思っている?私はな、
「ひ、ひぃぃいいいっ!!」
怒りの感情を乗せて少しづつ魔力を解放し続ければ、ヘシュトナー侯爵は恐怖に耐え切れなくなり、遂には腰を抜かして悲鳴を上げ始めた。
「うっわ。あのエロオヤジが情けない声出してる。くふふ・・・っ!笑っちゃ駄目なのかもしれないけど、これは痛快ね・・・っ!」
「彼もあのような顔をするのですねぇ・・・。初めて見ました。」
アイラとシャーリィがヘシュトナー侯爵の怯える様を見て、かなり上機嫌になっている。
二人に向けられたあの視線は、二人に相当なストレスを与えたようだな。
尚、私は料理を食べる事を止めていない。が、ヘシュトナー侯爵は気付いていないようだ。
「あっ、それでも出された料理は食べるんですね。」
「味が良いのは間違いないからね。満足いくまで美味い料理が食べられて、貴女達も守れる。私にとって最上の結果だよ。」
「プフフ・・・っ!な、なにそれ・・・っ!あ、哀れ・・・っ!」
「痛快な出来事ですけど、ノアさんは彼がノアさんの要望を叶えられるとは思わなかったという事ですか?もしも彼がノアさんの要望を叶えていたら・・・。」
「不可能だよ。まず、適した材料が無いからね。言っただろう?この幻の性能を。彼が私の要望に応えられないのは、始めから分かっていたのさ。」
「まぁ!ノアさんって、思っていた以上に意地悪な方だったんですね。」
「相手によるさ。私がこういう意地の悪い対応をするのは、私が不愉快だと思った相手に限るよ。」
「・・・先生の事は怒らせないようにしとこっと。」
私の行動指針を伝えれば、先程まで腹を抱えて笑っていたシャーリィが、急に冷や汗をかいてアイラの影に隠れてしまった。少し怖がらせてしまっただろうか?
いや、私を怒らせるつもりは無いのは事実のようだが、アレはあの娘なりの冗談だな。彼女が私に向ける感情には、相変わらず親しみと敬意が含まれている。今ので関係が悪化したという事は無いようだ。
話を戻して食堂。怒りを露わにしたまま席を立てば、命の危険を感じたのか、ヘシュトナー侯爵は慌てて私を制止しだした。
「ま、待て!待つのだ!こ、これは、ち、違うのだ!私がこうしろと指示を出したわけでは無い!こ、コレを作ったのは料理人達だ!」
「では何か?罪は料理人にあるから、彼等を殺して気を紛らわせろとでも?」
「そ、それで貴公の怒りが収まるならば、だ!だ、だが貴公は言っていたじゃないか!?あ、あぁ味が悪ければ作り直させるのだろう!?つ、つつつまり、まだチャンスはあるのだろうっ!?ち、違うかねっ!?彼等を殺せば、しばらくは料理は食べられんぞっ!?」
「そうだな。その通りだ。分かっているなら、良い。だが、次もこんな適当な料理を出そうものなら、その時は・・・。」
「わ、わわわ分かっているとも!か、必ず貴公の要望に会った料理を提供しようじゃないかっ!」
「・・・・・・良いだろう。一日で100食分の料理を提供できる環境を作った侯爵の手腕を信用させてもらおう。」
怒りの感情は出したまま、魔力自体は消失させる。まだ気を抜いてもらっては困るからな。
では、食事も済んだ事だし、そろそろ二人の部屋まで行くとしようか。
「二人の事はしばらく私が護衛しよう。彼女達は何処だ?」
「あ、案内させよう。おいっ!彼女を二人の部屋まで送って差し上げろ!」
ヘシュトナー侯爵が、近くにいた使用人に指示を出して、私を二人の部屋まで案内させる。
これで侯爵は容易にアイラとシャーリィを手に入れられなくなったという事だ。
ならば、彼が次に何をするのか、大体想像がつく。
使用人に案内され、二人の部屋に私が入ると、シャーリィが先程の映像に関する感想を上機嫌で語り出した。
「いやー、痛快だったわ!アイツがあんなに慌てたの、初めて見たものっ!先生、アイツに何したんですかっ!?」
「何、ちょっと魔力を解放しながら怒って見せただけだよ。まぁ、感覚的に言えば、10体ぐらいの腹をすかせたドラゴンに囲まれたような気分になったんじゃないかな?」
「サラッとヤバイ事口にしましたね。それって、先生の魔力が最低でもドラゴン10体分はあるって事なんですか?」
「そうだね。まぁ、それはそれとして、ここからだね。」
「え?」
「今回の事で容易に二人を手に入れる事が出来なくなったからね。そして私の力がどれほどのものかも断片的に理解したんだ。ならば、もう一つの目的を果たそうとするだろうね。」
「いよいよ、大きく事が動くのですね?」
「そうなるよ。」
アイラとシャーリィが手に入らないのであれば、最悪今回は二人を諦めるという選択肢も出てくるだろう。私は月末までしかこの国にいないからな。
彼女達の事は、もう一つの目的を果たした後にじっくりと手に入れれば良い、とでも思っていそうだ。
もう一つの目的。そう、私と"影縫い"であるフウカの戦力を当てにして騎士達を急ぎ制圧してしまおうと動く筈だ。
他の貴族達への通達の時間を加味すれば行動に映るのは、遅くても二日後。ヘシュトナー侯爵の動向を監視して決行日を確認しておこう。
この国が長年抱えてきた問題が解決されるまで、もう少しだ。
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