第142話 宝騎士・グリューナ

 傍で仕える事を認めて欲しい、と言われてもなぁ・・・。随分と思い切った事を言い出すものだ。


 彼女の変化に驚いたマコトとミハイルが、揃ってグリューナに先程の申し出の理由を訊ねた。かなり慌てた様子である。


 「お、おい、グリューナ!?いくら何でもいきなりすぎるだろうっ!?」

 「き、貴公、一体ノア殿に何を感じ取ったと言うのだっ!?」


 二人の慌てぶりも当然だ。何せ、人類の宝と呼ばれるような人物が、何の予告も無しにいきなり一介の冒険者に仕えたいと言い出してきたのだ。

 それは即ち、騎士の職を辞すると言う意味にも受け取れてしまう。


 そう言えば、殿付けで呼ばれたのは初めてだな。この呼ばれ方も、少しむず痒さを感じてしまう。

 そして先程のグリューナとの会話もそうだったが、ミハイルは状況によって言葉遣いを使い分ける人物のようだ。


 「私には、分かってしまうのだ・・・!分かってしまったのだ!ノア様が持つ、あまりにも高貴なドラゴンの因子が・・・っ!この御方こそっ!私が生涯仕えるべき姫君様だと、理解してしまったのだ!」


 グリューナ、貴女もか。貴女も私を姫と捉えてしまうのか。ああ、いや、彼女の場合は騎士だから、年下で高貴な気配を持つ女性だから姫と判断したのか?


 「ひ、姫て・・・。」

 「た、確かに気品を感じる服装ではあるが・・・。」

 「大騎士・ミハイル!そうでは無い!そうでは無いのだっ!確かにこの御方に相応しい見事な衣服である事は間違いないが、そう言う事では無いのだっ!」

 「俺達にゃあドラゴンの因子とやらが良く分からんのだが、それがとんでもなく強烈だったんだな?」

 「そう!そうなのです!このグリューナ!騎士となり、この国に忠誠を捧げる事の意味を学び続けていました!しかし今!ようやく理解致しました!忠誠とはいかなるものなのか!どういった者に対して捧げるものなのかっ!」

 「お、おぅ・・・。」

 「ええぇ・・・。」


 グリューナの気がとても昂っている。どうにかして彼女を宥めないと、彼女このまま暴走してしまいそうだな。

 彼女が私に仕えるためにこの国を抜けてしまうような事態は、何としても避けるべきだろう。ただでさえこの国は、大きな損失をしたばかりなのだから。


 「私に仕えたいという気持ちはとても、嬉しいよ。だけど、私はこの国の人間では無いし、世界中を見て回りたいんだ。貴女はこの国にとって、とても大切な人なのだろう?貴女の一存でこの国を離れるような事が、認められるのかな?」

 「それはっ!・・・く・・・っ!ノ、ノア様の、仰る通りです・・・っ!」


 グリューナは顔を俯かせて歯を食いしばっている。そこまで悔しい事なのか。


 このままだと私が予想した通り、グリューネは私に対して畏まってしまい、本来の目的を果たせなくなってしまう。と言うか、既に彼女は私に対して戦おうという意思を持っていないように感じる。


 どうにかして彼女の闘争心を取り戻さないと。


 「ところでグリューナ、今日私達がする事は、ちゃんと覚えているかな?今の貴女は、私と戦う事が出来そうかな?」

 「うっ、あ・・・あああああっ!!?そ、そのような、そのような事っ!私には、ああっ!お、恐れ多いにもほどがありますっ!私ごときが、ノア様と戦おうなどっ!戦わずとも、結果は分かり切っているのですっ!」

 「貴公本当にあの宝騎士・グリューナかっ!?」

 「こうまで変わっちまうもんなのか・・・。ヤベェな、ドラゴンの因子って。」


 こうなる事はある程度予想していたのだが、対策はちゃんと考えている。

 彼女にも、と言うかナウシス騎士団を除く騎士達にも、私達の計画に加わってもらうのだ。


 現状、私達が抱えている問題をまずはグリューナにも説明して、彼女に協力を仰ぐのだ。

 ここまで私を慕ってくれているのだ。狡いかもしれないが、協力を仰げば二つ返事で引き受けてくれると思っている。


 まずはマコトに確認を取って了承を得る必要があるな。私一人で勝手に行動してはマコトは勿論、モスダン公爵にも迷惑が掛かるだろうし。

 マコトに『通話』を掛けてこの場で了承を取る事にしよう。


 〈マコト、ちょっといいかな?相談があるのだけど。〉

 〈ノアさん?こうして『通話』を使用したという事は、あまり周りには聞かれたくない話ですか?〉

 〈うん。グリューナの事なんだけど、実は、彼女のこの反応は私の中では想定していた反応のひとつだったりするんだ。マーグという前例があるからね。〉

 〈マーグって、あのマーグ=スレンドですよね?宝石店オーナーの。〉

 〈うん。家の皆へのお土産に、装飾品を買おうと思った時にね。で、彼もグリューナほどじゃないけど、似たような態度だったんだ。後から聞いたけど、普段の彼はまるで違う人物だと聞いていたからね。〉

 〈なるほど。ノアさんが落ち着いている理由はそれですか。〉


 そうだな。私だってマーグのような前例が無かったり、グリューナがどういった人物なのか知らなかったら、二人と同様驚いていたと思う。

 先程までやや尊大気味だった者が、一瞬で心の底から恭しい態度を取るのだ。驚くなという方が無理である。


 〈それで、今のままだと彼女、親善試合どころでは無いだろう?ここは一つ、私達の事情を説明して、協力してもらおうと思うのだけど、どうだろう?〉

 〈完全に畏まっちゃってますものね、彼女・・・。事情を説明するのは、ヘシュトナー侯爵の事ですか?〉

 〈うん。彼等の計画をいっその事、ナウシス騎士団以外の騎士達に、私が敢えてヘシュトナー侯爵に雇われて、アイラとシャーリィを保護する事を伝えようと思う。〉

 〈ナウシス騎士団は除外するのですか?〉

 〈ああ、騎士団長がヘシュトナー侯爵と癒着している以上、下の者達にも似たような関係があってもおかしくないからね。と言うか、私が思うに、ナウシス騎士団達は彼等の私兵の一部じゃないかと思うんだ。〉


 先日侯爵達の屋敷で見つけた資料を見る限り、あの騎士団だけ貴族と関わりが深すぎる気がする。

 元より騎士達を内部から制圧するために態々貴族達が新たに自分達用の騎士団を結成させたと言うのであれば、貴族達と深く関係している事も納得である。


 〈確かに、ナウシス騎士団からは稀に違和感を覚える事がありましたが、なるほど。彼等が騎士全体に対する間者だと考えた場合、納得がいきますね。〉

 〈そう言うわけだから、各騎士団長に個別に事情をマコト経由で伝えて欲しいんだ。ナウシス騎士団達が他の騎士団達を下に見ていると言うのなら、ミハイル辺りに誘いを個別に出してもらえば、ナウシス騎士団は誘いを断るじゃないかな?〉

 〈あー、断りますね。ナウシスの連中は巡回騎士を未熟者として見ていますから、彼等を束ねるミハイルの事も下に見ているのは事実です。そうですね。それで行きましょう。僕の方からミハイルには伝えておきますよ。〉


 ああ、やっぱりそういう感じなのか。

 そうなると、マックスはああ言っていたが、ナウシス騎士団は騎士達を欺くために表向き騎士の様に振る舞っているだけで、その内面は騎士として疑問を抱くものかもしれないな。


 〈それで、私が学校の臨時教師を受けるための指名依頼を出してもらうためには、やっぱりグリューナと戦う必要があると思うんだ。〉

 〈だから、まずは彼女に事情を説明する、という事ですね?分かりました。今の彼女ならば、快くノアさんの要求を引き受けてくれるでしょう。ですが・・・。〉


 ひとまずグリューナに事情を説明する事は了承してもらったが、珍しくマコトが言いよどんでいるな。

 もしかして、グリューナをそのまま私に仕えさせると思っているのだろうか?


 〈マコト、グリューナに関してはこれまで通り、この国の騎士でいてもらおうと思っているよ。この国は彼女まで失うわけにはいかないだろう?〉

 〈ありがとうございます。ところで、もしリアンが、カークス騎士団に誰も犠牲が出ていなかった場合、ノアさんはグリューナを仕えさせましたか?〉

 〈たらればの話になるけれど、仕えさせなかったと思うよ?いろいろ理由はあるけれど、仕えてもらう必要が無いからね。私はこれからも世界中を見て回るし、その時に今回の様に色々とやらかしてしまうと思うんだよ。そんな私の都合に、彼女を巻き込んでしまうのは、気が引けてしまうからね。〉

 〈そ、そうですか・・・。外国の事情まで首を突っ込む気はあまりありませんが、その、出来れば手加減してやってくださいね・・・?〉

 〈そうだね。少なくとも、関係者がマコト以上に多忙にならないように努力してみるよ。〉

 〈うぐっ!な、なかなかに容赦無いですね・・・。まぁ、自分がどんだけ仕事詰めなのかは理解してますんで、文句は無いです。はい。〉

 〈それじゃ、さっきの部屋に戻ってグリューナに事情を説明しようか。〉

 〈そうですね。部屋にはグリューナに案内させますんで、その間に、僕の方は先程の方針をミハイルに伝えておきます。〉


 手際が良いなぁ。方針を伝えたらすぐにそういった考えが出て来るところは、私も見習いたいものだな。


 マコトから尋ねられたが、仮にマクシミリアン達が健在であったとしても、グリューナが宝騎士である事が変わらない以上、安易に騎士の職を辞する事など出来なかっただろう。

 それだけじゃない。彼に説明した通り、行く先々で私が起こしてしまうであろう騒動に、彼女を巻き込んでしまうのは申し訳ない。

 そして何より、彼女には悪いが、彼女には私の旅行についていけるだけの実力が無いのだ。


 彼女の気持ちは純粋に嬉しくも思うが、私に実際仕えるとして、彼女を家に連れて帰ればどうなるか?気絶で済めば儲けもの。下手をしたら家周辺の魔力に当てられて命を落としてしまいかねない。

 彼女には、今後も清く正しい騎士であり続けてもらうように説得しよう。


 さて、グリューナへの対応と、ついでに今後の方針も決まった事だし、行動を開始しようか。


 「グリューナ。私も、色々と事情があってね。場所を移さないかい?何時までもここで喋り続けると言うのも、味気ないだろう?落ち着いた場所で、お茶でも飲みながら貴女と戦う必要がある事を説明するよ。」

 「そうだな。実を言うと、この国の一大事に関わる、重要な案件に繋がってんだ。グリューナ、ノアを舎長室へ案内してやってくれ。俺はその間に事情をミハイルに説明しておくからよ。」

 「なんと!マコト殿が直接関わるほどの大事なのですねっ!?承知いたしました!では、ノア様!此方へどうぞっ!大騎士・ミハイルの部屋でもある舎長室へとご案内いたしますっ!」


 流石だな。本来自分の部屋なのだからミハイルが案内すべきなのだが、グリューナが私に関わりたいという気持ちを利用して、自然な流れで彼女に案内役をさせてしまった。

 その間にマコトはミハイルに各騎士団長への連絡を頼むのだろう。やはり頼もしい人だよ。



 「此方が舎長室であり、執務室でもある大騎士・ミハイルの部屋となります!どうぞ!適当な場所へ腰かけて下さい!私は二人が来るまでの間にお茶を入れておきますので!」

 「グリューナはお茶を入れる事が出来るんだね?少し意外だよ。」

 「ふふふっ。私も、よもや自分がこういった事を趣味にするとは思わなかったのですが、貴族子女のお茶会というものに誘われた際、その味にいたく感銘を受けてしまいまして。どうにか自分でもあの味を再現できないものかと、日々邁進している最中なのです。」


 そう言いながらお茶の準備をしているグリューナの手際はとても手慣れている。普段から自分でお茶を入れているのだろう。


 お茶会かぁ・・・。いくつかの小説にもあった内容だな。歴史的なものとしては、今は無き国がその文化の始まりだった筈だ。


 確か、その国の食事の機会は朝食と夕食の2回だけであり、とある貴族がその間の空腹を紛らわすために、自分の部屋でこっそりと食事を取っていたのが始まりだったのだとか。


 それが専用の部屋を用意して、親しい者達が集まって食事を取るようになったのが、最初のお茶会だったと言われている。


 始めは空腹を解消するための小さな食事会だったものが、文化の変化で現在の様に昼食を取るようになり、食べ物よりもお茶に重点を置かれるようになったのだ。


 そしてお茶だけでは口元が寂しい、という事でお茶請けが出るようになったわけだが、そこから貴族の見栄の張り合いが始まったとも言われている。


 お茶やお菓子の質を見て、相手の格を見定めるのだ。


 小説で読んだお茶会は、貴族の子女が単純に親交を深めるような微笑ましい目的のものが多かったのだが、現実はもっとドロドロとしたものだった。

 一つ一つの所作だけでも文句を言う者すらいたらしい。とにかく相手に少しでも優位に立とうと、皆が皆して躍起になっていて、ある種の戦場だったそうなのだ。


 とは言え、グリューナが誘われたお茶会と言うのは貴族の子女からなのだ。小説に出てきたような、微笑ましいものだったのだろう。


 改めてグリューナの容姿を見てみる。腰まで伸ばした艶のある金髪で、後ろ髪を一つにまとめている。ポニーテールと呼ばれる髪型だな。

 読んだ本の説明では、うなじが見えるようになるため、男性からの人気が高い髪形の一つと説明されていた。

 うなじが見えると何が良いのかは分からないが、それはもう著者の好みというやつだろう。気にしない事にした。


 身長は私よりも高く、目視で176センチと言ったところか。顔立ちは整っていて覇気を感じさせ、とても凛々しい。


 金属鎧を着こんでいるため、体型は分かり辛いが、多分、全体的に出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいると思う。今度、風呂に誘ってみようか?


 つまるところ、一般的な人間の感覚で言うならば、グリューナは美人でとてもカッコいいのだ。女性のファンが非常に多そうである。お茶会に誘った貴族子女も、彼女の熱烈なファンだったのだろう。



 私の鼻孔を、お茶の香りが刺激する。感銘を受けた味を再現しようとしていると言うだけあって、いい香りを出すものだ。そろそろお茶の準備が出来そうだ。


 グリューナは自分の部屋の様に自然体で動いている。それはまぁ良いのだが、棚の奥に隠されたお茶請けすら、自然な動作で取り出すのはどうなんだ?

 それ、間違いなくミハイルが他人に食べられないように隠しておいた物だと思うのだが・・・。


 マコト達も部屋に戻って来たな。ミハイルへの連絡も問題無く済んだようだ。

 ただ、グリューナが当たり前のように人数分に切り分けて並べられた焼菓子、パウンドケーキを見て、ミハイルの表情が固まってしまっている。


 「いやぁ、スマン。チットばかしややこしい話で立て込んじまっててよぉ、遅くなっちまったわ。」

 「お気になさるな、マコト殿。むしろちょうどお茶が入ったところです。いいタイミングでしたよ。」

 「・・・宝騎士・グリューナ?貴公が、お茶請けとして並べているその焼菓子は、何処から、出したものかな・・・?」

 「ん?ああ!棚の奥に忘れられたように保管されていたので、有難く使わせていただいたよ!賞味期限はまだ2日ほど残ってはいたが、こういうものは忘れない内に食べてしまった方が良いからな!それにしても貴公、お茶もお茶請けも良い趣味をしているな!お茶を入れていて、私も楽しかったよ!」

 「・・・・・・・・・う、うむ。そうだな・・・。今後は、購入したら、忘れないように、その日の内に食べてしまう事にしよう・・・。」


 ああ・・・これ、グリューナは完全に善意で言ってるな。

 ミハイルは優れた嗅覚を持つ獣人ビースターだから、あの場所に保管していても忘れる筈は無いのだが、どうもお茶を入れるのが楽しくて、その事が頭から抜けているらしい。

 非常に複雑な表情でグリューナの言葉に頷くミハイルの姿からは、哀愁すら感じさせられた。


 ミハイルには気の毒だが、そのおかげで私もこの焼菓子を口に出来るのだ。特に言及せずに、小判にあずかるとしよう。

 勿論、ただお茶を楽しむだけでなく、グリューナに事情を説明して協力を仰ぐ事も忘れずに、だ。



 グリューナに一通りの事情を要点を纏めて簡潔に説明したところ、彼女は俯いたまま小刻みに震えている。彼女からは若干の怒りの感情が読み取れる。


 ちなみに、グリューナの入れてくれたお茶はかなり美味かった。

 流石に宝石店で飲んだものほどでは無かったが、かつて魔術師ギルドで用意されたものよりも味は上だった。

 勿論、ミハイルが楽しみにしていたであろうパウンドケーキも絶品だったとも。紅茶と良く合う、素晴らしい菓子だった。

 多分、あの宝石店が出してくれたフィナンシェと同じ菓子屋のものだろうから、今度は私が差し入れとして用意しよう。このままではミハイルが少々可哀想だ。


 と、ここでグリューナが怒りの感情を堪え切れなくなってしまったようだ。おもむろに立ち上がり、自分の思いを大声で吐露し始めた。


 「ぉおのれインゲイン=ヘシュトナァアアアーーーッ!!この国の守護者である騎士を軽んじるどころか、アイラ殿とシャーリィ嬢を纏めて手籠めにしようと企むとは、何たる恥知らずっ!!貴族の風上にも置けぬ下郎がぁあああーーーっ!!」

 「落ち着けっての、声がデケエよ・・・。」

 「み、耳がぁ・・・っ!」


 予め説明をする前に防音魔術を施しておいて正解だったな。グリューナの声は、私が想像した以上に大きかった。

 そろそろ各騎士団の騎士達も集まってくる頃だし、ここでの会話を聞かれてしまっては面倒な事になりかねなかった。


 マコトは彼女に落ち着けと言っているが、恐らく彼女はこれでも最大限譲渡してくれていると思う。

 と言うのも、彼女の口から、少しだけ魔力が漏れてしまっているのだ。

 もし彼女が全く感情を全く抑えなかった場合、勢い余ってドラゴンブレスが出ていたに違いない。


 それと、獣人であるミハイルにとっては、グリューナの声量は少々許容範囲を超えてしまっていたらしい。耳を抑えて悶絶してしまっている。

 違和感を持たれない程度にこっそりと治癒魔術を掛けておこう。


 さて、グリューナを落ち着かせたら改めて彼女に協力を仰ぐとしようか。


 「ふぅーっ、ふぅーっ・・・ふぅーっ・・・。」

 「落ち着いたかな?」

 「ハッ!?お、お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません!」

 「いいよ。説明した内容に憤慨してくれているところを見ると、私達に協力してくれる、という事で良いかな?」

 「勿論ですっ!ただの旅行でこの国に訪れただけだと言うのに、それでもこの国を思っていただける思慮深さっ!このグリューナ、改めてノア様に感銘を受けました!ですが、ノア様が仰りました通り、私の一存で騎士を抜ける事が出来ないのが悔やまれます・・・!この身が自由であるならば、是が非でもノア様の旅にお供しましたものを・・・!」


 あー、そっちに気持ちがぶり返しちゃったかぁ・・・。まぁ、丁度良い機会かもしれないな。今の内に彼女をしっかりと説得しておこう。


 「ありがとう、グリューナ。さっきも言ったけど、貴女の気持ちはとても嬉しい。だけど、それでも私は貴女にこの国の騎士であり続けて欲しい。貴女は、この国に必要な人間だろう?身分や種族に偏見を持たず、誰隔てなく接する事の出来る、清く正しい騎士であり続けていて欲しいんだ。」

 「ノア様・・・!ああ・・・っ!何という思慮深さ・・・!承知いたしましたっ!このグリューナ!ノア様の願いに恥じぬ、清く正しい騎士を目指し、人々の模範となるように生きていきますっ!」

 「「・・・・・・。」」


 あれ?これ、親善試合をやる前に問題解決してないか?

 い、いや、まだ彼女の清く正しい騎士の基準がどういうものかはっきりしていないし、大丈夫なはずだ!

 改めて彼女に全力での戦闘を要求しておこう。


 「さて、グリューナ。先程話した通り、私がシャーリィから信頼を得るためには、彼女が通う学校、ぺーシェル学院?とやらから指名依頼を受ける必要がある。そのためには、口頭だけでなく、しっかりと信頼のおける複数の実力者達に、私の実力を知ってもらう必要があるんだ。その為には、貴女が手加減抜きで私と戦って、私の実力を見てもらうのが一番だと思う。私の事なら気にしなくて良い。貴女が今日まで培ってきた全てを、私に見せて欲しい。やってくれるかな?」

 「・・・承知いたしました。そこまでお望みされるのであれば、このグリューナ、ノア様に私の全てをお見せいたします!どうぞ、ご照覧くださいっ!」


 良かった。これで憂いは無くなった。


 グリューナもやる気をだしてくれた事だし、存分に力を振るってもらおう。

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