第99話 神々とのお喋り

 『自分で村に着くまでには覚えられると言っておいてなんですが、貴女はとんでもない学習能力をしていますねぇ・・・。』

 〈『こうまで早く覚えられたのは、ルグナツァリオとダンタラの教え方が良かったからじゃないかな?』〉

 『ノア。教え方の良し悪し程度で『真言』の習得がここまで容易に出来てしまっては、私達の立つ瀬が無いよ・・・。私達とて、『真言』の知識は先達から授かった知識でね。独学で覚えたわけでも、自分達で作り出した言語でもないんだ。』

 『その辺りの話をしてしまうと長くなってしまうので、今は控えておきましょう。もうすぐ今日宿泊する予定の村に到着するようですからね。』


 二柱の神によって『真言』を教授してもらったのだが、これがとても分かり易く、すぐに『真言』を習得する事が出来てしまった。

 とは言え、教授してもらってから十時間ほどが経過している。辺りは既に日が沈んでいる。


 途中、食事休憩の時間や馬を休ませる時間もあったのだが、私は別に食事が必要なわけでは無いので、馬車の中で本を読みながら二柱にずっと『真言』を教わり続けていたのだ。

 おかげでダンタラが言っていた通り、次の村に到着するまでに『真言』を十全に使えるようになった。二柱に感謝だな。

 それはそうと、『真言』とは彼等が作った言葉では無かったのだな。先達から授かった知識という事は、彼等がこの星に来る前の話になるのだろう。ダンタラの言う通り、詳細を聞いていたらものすごく長い話になるのは間違いないな。


 〈『ダンタラ、ルグナツァリオ、私に『真言』を教えてくれてありがとう。いざという時には有り難く使用させてもらうよ。尤も、それ以外では使わない方が良さそうだね。この力は。』〉

 『それが良いでしょう。というか、そうして下さい。貴女が『真言』を制限無く使用した場合、天変地異では済まないような現象が起きてしまいますからね?本当にお願いしますよ?』


 物凄い念の押しようだな。まぁ、私が制限無く力を振るった場合、『真言』を使わずとも比喩表現抜きで世界を滅ぼせるほどの事が出来てしまうのだ。それは私の望むところではない。

 元々、『真言』を覚えようと思ったのは神々と会話がしたかったからだからな。

 まぁ、覚えなくとも会話は出来ていたのだが・・・。知識欲は満たす事が出来たのだ。無駄な事ではない。

 そろそろ村に着きそうになり、馬車から降りる準備をしたところで、ルグナツァリオから声を掛けられた。


 『ノア、ダンタラが私をルグと呼ぶように、私の事は愛称でルグと呼んでくれても構わないのだよ?こうして私達と気兼ねなく会話が出来る存在は、私達としてもとても貴重で有り難い存在なんだ。』

 『貴方はまたそうやって・・・ルグ、我慢なさいと先程言った事をもう忘れたのですか?それとも、私の言葉を聞く気が無いのですか?』

 『ダンタラ、落ち着こう。このぐらいならば問題は無いだろう。特にノアに迷惑を掛けるわけでも無いのだよ?何だったら、貴女もノアと友誼を結べばいい。』

 『よくもまぁ抜け抜けとそんな事が言えますね?神と友諠を結ぶ事がどういう事か分かっていながら、何故貴方はそのような事を語れるのですか?』


 神々と友諠を結ぶ事が出来るのならば嬉しい事だが、どうやら彼等と友諠を結ぶという行為は、ただ単に友達同士になる、という事ではないらしい。


 〈『あー、貴方達神々と友諠を結ぶという行為は、どういった影響が出るのか教えてもらってもいいかい?』〉

 『人間や魔族達には神々の声をお告げとして聞く事の出来る巫覡ふげきと言う職があるわけですが、そう言った方々は神の気配にとても敏感です。友諠を結んだ者は勿論、寵愛を受けた者、加護を受けた者も一目見ればそれだけで神の気配を、繋がりを理解してしまうでしょう。』

 『ちなみに、神との結びつきの強さの度合いは加護、寵愛、友諠の順で強くなるよ。それから、大抵の者は神の影響を受けるのはせいぜい一柱だけだ。二柱以上の繋がりを得た者は、それこそ伝説上の人物ぐらいしかいないねぇ。二柱と友諠を結んだ存在は歴史上確認されていないんじゃないかな?』


 おい。それが分かっているのに何を平然と私と友諠を結ぼうとしているんだコイツは。思いっ切り迷惑が掛かる事だろう。

 これは流石に他の神から苦言を呈されても文句は言えないぞ。

 と言うか、それはどう考えても世界中から注目される事じゃないのか?


 〈『それはつまり、私達が友諠を結んだ場合、巫覡から見た私は神と極めて親密な存在と人間達に知れ渡るわけだ。なぁ、ルグナツァリオ、何故そんな大騒ぎになるような事を、今の私に勧めようとするのかな?貴方は世界中を混乱させたいのかな?』〉

 『そうです。もっと言ってやって下さい。この駄龍、ことあるごとに世界に干渉しては世界中を騒がせているのです。しかも、思いついたら即座に行動に移すような無駄に高い行動力まであるから、始末に置けません。』

 『しかしだね。強い意志を持って懇願されれば、その思いに応えたくなってしまうのは我々のさがだろう。』


 駄目だコイツ・・・。先程ダンタラが[我慢しろ]と言っていた言葉を聞く気が無いぞ。話が堂々巡りになってしまう。

 個人的にはルグナツァリオにもダンタラにも好感を持ってはいるが、いま彼等と友諠を結べば世界中から私に接触しようとする者達が現れてしまうだろう。

 彼等と友諠を結ぶのは、私の存在を世界に公表してからだな。


 〈『二柱ともその辺にしておこう。話が平行線になりかけている。ルグナツァリオ、悪いけれど貴方との友諠を結ぶのはまだ待ってもらいたい。現状で私の存在が世界中に広まった場合、世界中が混乱するのは勿論だが、私の自由時間が失われてしまう。友諠を結ぶとしたら、私が人間や魔族の知識を十分に得て、世界中に私が"楽園"の主であると公表してからにしたい。』〉

 『そうか・・・。残念だが、貴女がそう望むのであれば、私は貴女が自分の存在を世界中に知らしめるまで待つとしよう。何、貴女の事だ。十分な知識を得るのに十年もかからないだろう。我々からすればあっという間の出来事だろうね。』

 『ノア。貴女、自分の存在を世界中に伝えてしまっても構わないのですか?厄介な事になりかねませんよ?』


 ダンタラが私を心配するような声で確認をする。大丈夫だとも。



 村に到着し、馬車を降りて村人たちに挨拶をしているが、その間にも私は二柱とも会話を続けている。

 最初の村と同じく、竜人ドラグナムと言う種族が珍しいのか、私に視線が集まっているし、夕食中には結構な人数に声を掛けられた。

 内容は目的地だったり、尻尾の事だったり、冒険者なのか否かと言った、ありきたりなものだった。

 私が冒険者であると伝えれば、酒を奢られてどんな依頼をこなしたのか細かく尋ねられた。

 話す内容は最初の村と変わらないが、彼等にとっては良い娯楽になるのだろう。話を聞いていた村人達は終始楽しげだった。


 さて、ダンタラの懸念だが、実を言うと世界中に私の事を公表する事自体は全く問題無い。

 その頃には私は自分の家にいる事が多いだろうからな。私に会いたければ、楽園にある私の家まで来ればいい。来れるものならばな。

 そうだ。ゴドファンス達が広場に城を建てるとも言っていたな。うん、折角だ。もしも人間達が私に会いに来たのなら、ゴドファンス達が建てた城で対応しよう。


 〈『別に構わないよ。公表する頃には角も翼も尻尾が伸びる事も七色の魔力を持っている事も、全て隠すつもりは無いし、惜しむ事なく空も飛ぶからね。その頃には普段は自分の家で過ごす事になるだろうから、人間ではそうそう簡単に私に会いに来る事なんてできないさ。』〉

 『それはそうかもしれませんが、人間達というものは度し難い行為をする生き物です。もしも人間達が貴女の親しい者達を人質に取ったら、貴女はどうするつもりなのですか?』


 なるほど。人間達ならばそう言った手段も取り得るか。だけど、心配しすぎじゃないだろうか。そんな下劣な相手に、私は容赦をしてやるつもりは無い。

 それ以前に、神々と友諠を結ぶという事は、ルグナツァリオ達とも頻繁に情報のやり取りもするだろうからね。事前に防ぐ事も出来るだろう。


 〈『分かり切った事を聞くね。無論、滅ぼすよ。私は私の親しい者達に危害を加えようとする者に対して容赦をするつもりは無い。魔法も『真言』も遠慮なく使って理不尽に滅ぼすとも。』〉

 『本気ですか・・・?』

 『本気だね。まぁ、滅ぼす対象は下劣な手段を取った者達に限定はするけどね。そもそも、貴方達と友諠を結んだのならば、そんな手段を取る前にルグナツァリオ辺りから告げ口が来るんじゃないかな?』

 『するねぇ。私はそういう性格だ。それに、そうした方が人間達にも被害が少ないだろうからね。』

 〈『仮にルグナツァリオが教えなくとも、十年も時間があれば貴方達がやっているような人間達の動向を常時監視するような術を習得しているだろうからね。』〉


 もしくはルグナツァリオに教わっているか、だな。ある程度の対策はするとも。

 それでもやらかしてしまうような連中が現れるなら、その時は強行手段を取らせてもらうとしよう。

 仮にそこまで人間達が愚かだったとしても、そう言った前例があればしばらくの間は馬鹿な真似をするような輩は出てこなくなるだろうからな。


 『ふぅ・・・。分かりました。全く、貴女はズウ以上に苛烈な方ですね。貴女が自分の存在を世界中に公表すると言うのであれば、その時は私も貴女と友諠を結びましょう。』

 『と言うか、我々五体、全員と友諠を結べばいいじゃないか。どうあっても手出しが出来ない存在だと知らしめるのに良い手段だと思うよ?』


 五体て。そこは一応、神として信仰されているのだから、五柱と語るべきじゃないのか?

 まぁ、ルグナツァリオは自分に対してやや卑屈なところがあるからな。自分の事を一体の魔物として考えるのも無理はないのか?


 それと、ダンタラが言っていたズウと言うのは、考えるまでも無く深海神ズウノシャディオンの事だろうな。彼女曰く、彼は苛烈な性格をしているらしい。

 そんな深海神よりも私の方が苛烈らしいが、神々はこの星の生物達を皆慈しんでいるようだからな。苛烈と言っても、私から見ればズウノシャディオンもかなり温厚な神なんじゃないだろうか。


 それはそうと、この村にも冒険者になるために明日から村を出る若者達がいるようだ。最初の村で馬車に乗ったのは五人共男性だったが、今回は女性も馬車に乗るつもりらしい。

 女性で冒険者をやっている私にかなり興味があるようだ。三人の少女達が私に声を掛けてきた。

 もう結構遅い時間なのだが、この娘達は寝なくて大丈夫なのだろうか。


 「お姉さん!冒険者として、気を付けなきゃいけない事とか教えて!」

 「その、魔術の事、出来たら教えて欲しいです!」

 「ちょ、ちょっと二人とも、いきなり失礼でしょ!?すみません!こんな遅い時間に、私達、明日王都に向かう馬車に乗って冒険者になりに行くんです。一人で冒険者として活動してるっていうお姉さんに興味があって、声を掛けさせてもらいました。大丈夫ですか。」

 「うん。私は気にしていないよ。それじゃあ早速、気を付けなければならない事から話そうか。」


 そうして声を掛けてきた少女達に冒険者ギルドの資料室で読んだ冒険者の心得を説明していく。

 勿論、文字の大切さも説いた。感心した事に、魔術について教えて欲しいと願った少女は、しっかりと文字の読み書きを教会で教わったようだ。

 流石に魔術言語までは習得できなかったようなので、明日簡単なものならば教えられると答えれば凄まじい勢いでお願いされてしまった。

 明日も話をするのであれば、これ以上彼女達の就寝時間を減らすのは得策では無いだろう。


 「今日はもう遅い時間なのだから寝るとしようか。明日起きられなくなったら大変だからね。実を言うと、私も早起きは苦手なんだ。」


 そう説明すると素直に彼女達は自分の家へと帰って行った。さて、果実を食べて『清浄ピュアリッシング』を施したら、私も寝るとしよう。




 〈ノア様!朝よ!起きましょう!〉〈朝なのよ!起きて頂戴ノア様!〉

 『ノア、朝だよ。そろそろ目を覚まそうか。』

 〈なんかいるのよ!?びっくりしたわ!〉〈誰!?聞いた事のある声よ!?〉


 おい。


 この神は流石に私に構い過ぎじゃないだろうか。こんな事をしていたら例え友諠を結ぶつもりが無くても似たような存在として判断されてしまうんじゃないか?加護ぐらいは与えられていそうだ。

 とりあえず、着替えて出発の準備をしよう。


 〈レイブラン、ヤタール、今日もありがとう。『それとルグナツァリオ、私は貴方に朝起こして欲しいと頼んだ覚えは無いのだが?』〉

 〈役に立てて嬉しいのよ!この声アレよ!ノア様が"ヘンなの"壊した時に聞こえた声よ!〉〈神様の声よ!でもいきなりすぎるのよ!ノア様も神様の言葉がしゃべれるようになっているのよ!〉

 『いやぁ、ノアはいつも一人では起きられないみたいだったからね。彼女達が貴女を起こすのを手伝えたら良いなと思ったんだよ。』

 〈『で、また誰にも相談せずに行動したと?ルグナツァリオ、そんなに頻繁に私に干渉していたら例え友諠を結んでいなくとも加護ぐらいはついてしまっているんじゃないか?昨日ダンタラも交えて話をしたよな?世界中が混乱してしまうから巫覡に気取られるような事をしないようにと。』〉


 彼は決して馬鹿ではない。こうまで私に構おうとするのは彼なりの言い分があるのだろう。

 言い分と言うよりは言い訳かもしれないが、聞くだけ聞いてみよう。

 彼の話を聞きながら朝食を取る。


 『うん。今の貴女には私からの寵愛が掛かっているね。だが、誤解しないで欲しい。寵愛が掛かっているのは貴女が旅立つ前に空で私と貴女が会話をした時から与えているんだ。だからこのぐらいは許容範囲だとも。』


 なるほど。一応納得が出来る言い訳だ。だが知っているぞ。寵愛にも強弱があるとな。ここまで私に構っていた場合、過去に前例がないほどまでに強い寵愛が与えられているんじゃないのか?


 宿から出て馬車へと向かう。最初の村から来た若者達と、この村出身の男性の冒険者志望の若者達もちょうど来たみたいだ。しかし昨日私に声を掛けてきた少女達の姿は無い。

 出発までの時間にはまだ余裕はあるから大丈夫だが、彼女達はまだ寝ているのだろうか?

 それはそれとして、寵愛の強さについて、ルグナツァリオに聞いてみよう。


 〈『今、私に与えられている寵愛の強さはどのぐらいの強さかな?』〉

 『勿論、今までの誰よりも強い寵愛を与えているとも。貴女は私達五体にとってとても興味深く、そして期待もしている存在だからね。』

 〈『サラッと爆弾発言をしないでもらえないか?それじゃあ友諠を結ばなかった意味が無くなってしまうじゃないか。』〉

 『何、心配はいらないとも。複数の神から寵愛を与えられているのであればいざ知らず、単一の寵愛であるならば納得はしてもらえるとも。』


 信用ならないのだが?過去最大の寵愛など、どう考えても世界中に衝撃が伝わる情報じゃないか。私に巫覡に会うなとでも言うつもりか?


 『まぁ、聞いてくれ。勿論、対策を考えているとも。それも、ノアでなければ出来ないような対策をね。』

 〈『聞くだけ聞こうか。』〉

 『魔法だよ。貴女はギルド証に魔法をかけて種族を詐称しているだろう?それと同じように、私に与えられている寵愛の強さを魔法で程々の強さと詐称してしまえばいいのさ。』


 言葉にしてはいないが、[名案だろう?]と語尾に付いていてもおかしくないぐらいに自慢げに語っている。

 出来ない事は無いだろうが、寵愛を与えた神がそんな考え方で良いのか?と言うか、それなら寵愛そのものを与えられていないように詐称すれば良いだろう。


 『ノア。出来れば寵愛そのものを詐称して与えられていない状態にするのは止めて欲しい。』

 〈『理由を説明してくれるかな?』〉

 『詐称はあくまでも詐称だからね。寵愛の効果が無くなるわけじゃないんだ。寵愛を与えられていないと判断されているのにも関わらず寵愛の効果があったら、不審に思われてしまう。』


 確かに、一理あるな。だが、本当にそれだけか?どうにも彼の言い分には彼の個人的な事情があるような気がしてならない。


 おや、慌てた様子で冒険者志望の少女達が集まってきたな。やっぱり寝坊してしまったのだろう。

 まぁ、出発までは後30分ほどある。怒られるような事でも無いだろう。

 さて、ルグナツァリオに問い詰めてみようか。


 〈『言い分は分かったけれど、それだけが理由なのかい?私にはもっと個人的な理由から止めているような気がしてならないんだ。』〉

 『貴女の感性は素晴らしいものがあるね。うん、そうだね。本心は私が貴女に寵愛を与えたという事実を、人間達に知っておいて欲しいからだよ。私の寵愛が与えられている者に、悪さをしようとする輩はそうはいないからね。』


 気に入られている、という事でいいんだろうな。まぁ、出会った時から彼の私への対応はかなり友好的だった。


 馬車に乗り込んで出発を待とう。

 そうだ。彼にはちょっと確認しておきたい事があったのだ。聞いておこう。


 〈『ところでルグナツァリオ。貴方に聞きたい事があったのだけど、貴方は以前、私に対して美しいと言っていただろう?アレは警戒を解くためのジョークだと思っていたのだけど、まさか本気で言っていたのかい?』〉

 『勿論、本気だとも。貴女は竜としても、人としても、とても美しいよ。ああ、だけど口説いていたわけじゃないんだ。素直に貴女の外見を褒めていただけだよ。誤解しないで欲しい。本当だよ?』


 どうにも必死さを感じるな。やっぱりこの神は軟派な性格なんじゃないか?

 口説いているわけじゃないらしいから、多分美しいものを見つけたら何に対しても美しいと言ってしまうのだろう。

 さて、聞きたい事も聞いたところで、そろそろこの神との会話も終えておこうか。


 『収納』から未読の本を取り出して読み始める。


 〈『ルグナツァリオ。気に入ってくれるのは有り難いけど、今貴方と深く関りを持ってしまうと、いくら寵愛の強さを詐称したところで隠しきれなくなってしまうほど寵愛が強くなってしまうんじゃないか?名残惜しいかもしれないが、そろそろ会話を終了しよう。』〉

 『そうだね。出来れば貴女とはずっと話をしていたいのだけれど、貴女にとって都合が悪いだろうし、素直に貴女と友諠を結べるその日まで待っているとしよう。だけどノア。覚えていておいて欲しい。貴女が望めば、私は何時でも貴女の声に応えるよ・・・。』


 その言葉を最後に、ルグナツァリオの気配は消えてしまった。重いなぁ・・・。

 本人は否定していたけれど、やっぱり最初に出会った時に私の事を口説いていたんじゃないか?怪しい。


 ルグナツァリオと会話を終えて少ししたら馬車が動き出した。この村を出発するようだ。


 昨日話しかけてきた少女達から色々聞かれるだろうし、今日の道中も退屈し無くて済みそうだ。

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