王都へ往く!!
第97話 久々?に皆と会話
取り出した本を開いて読みながら、ゴドファンスの声に応えよう。
それにしても、ゴドファンスの声を聞くのも一週間ぶりだな。まだ一週間しかたっていないと言うのに、とても懐かしく思えてしまう。
どうせなら、皆の声が聞きたいな。
うん、全員に『
私の家に皆が集まって生活をしてから、まだ二ヶ月程度しかたっていないと言うのに、私の皆に対する執着は、自分で言うのも何だが、かなり大きい。
〈『通話』が来たのよ!ノア様だわ!〉〈久しぶりよ!嬉しいのよ!〉
〈姫様?いかがなさいましたか?〉
〈主への報告はゴドファンスに任せたのだが、何か不備でもあったか?〉
〈いやぁ、久しぶりにゴドファンスの声を聞いたら、皆の声も聴きたくなってしまってね。皆元気そうで何よりだよ。〉
〈それでかぁ・・・ご主人ってさ、結構寂しがり屋だよね?〉
〈私は素直に嬉しいよ?それだけノア様は私達の事を思ってくれているという事だもの。〉
久々に聞いた皆の声は、私が"楽園"を発つ前と変わらない。心がとても安らいでいくのが分かる。
ただ、久々とは言ったが、たかが一週間だ。ウルミラが呆れてしまうのも頷ける。私自身も、その事実には苦笑せざるを得ないからな。
それはそれとして、ゴドファンスが連絡してきた理由は皆の声色からして、"楽園"で何か不味い事が起きたとか、そう言う事では無いようだ。
ホーディは報告と言っていたけれど、私に確認したい事でもあったのだろうか?家の近くに保存しているドラゴンの肉なら好きに食べてくれて構わないよ?
いや、食べ物の事だったらレイブラン達が『通話』をしてくるか。だとすると要件は何だろうね。
さて、ゴドファンスをあまり待たせるものでは無いし、要件を聞くとしよう。
〈話を遮ってすまなかったね、ゴドファンス。私の方は問題無いよ。何か聞きたい事があるのかな?〉
〈儂の全てはおひいさまに優先されます故、おひいさまが儂に謝罪する必要など御座いませぬ。〉
うん。ゴドファンスならそう言うだろうね。相変わらずで何よりだよ。それでも私の心情的に謝らないという選択肢は無い。彼もそれは理解してくれている筈だ。
〈おひいさまに『通話』を掛けましたのは、おひいさまの広場に城の建築の許可を頂きたかったのです。〉
〈城?人間の王族が住まうような施設の事かい?〉
〈左様に御座います。〉
城の建築ときたか。私が本で読んだ内容だと、とても大きな建築物だ。その大きさはイスティエスタに建てられていたどの建築物よりもはるかに大きい。
私が建てた家では不満が出てしまったのだろうか?確かに、ホーディも中に入れるぐらいの大きさの作りにはしたが、彼が思いっきり体を動かせるほどの広さは無いからなぁ・・・。
〈おひいさま。どうか、誤解しないで下され。現状、儂等は皆、おひいさまが建てて下さった家に満足しております。〉
良かった。別にあの家が原因と言うわけでは無いようだ。あの家は私が終わらせてしまった命を用いて建てたものだからな。なるべくなら使い続けたいのだ。
さて、あの家が原因ではないとなると、城を建てようと思った原因は何だろうか?
後、あの広場で城と関連図けられるものとしては・・・ああ、あったな。私の家と同じぐらい大きなものが。
ゴドファンスが『
アレ、何もない場所に作ったから雨ざらしになになってるんだよなぁ・・・。だから、あの玉座を覆う目的で城を建てると言うのなら、納得は出来る。
で、実際のところ、理由は何だろうか。
〈実はおひいさまが"楽園"を発ってからというもの、レイブランとヤタールに"楽園"の住民達からおひいさまへのお取次ぎを願われる事態が殺到しているのです。〉
〈原因は・・・やっぱりあの蜥蜴人達への助力かな・・・?〉
〈左様に御座います。特に、人間達と関わる事の多い"浅部"の者達がおひいさまの加護を求めているのです。〉
あー。なるほど。"楽園浅部"の住民達だと、冒険者はともかく騎士の集団が相手になって来ると厳しいか。それに、"ヘンなの"の事もあるからなぁ。
アレは本当に多くの"楽園"の住民達の命を奪いかねない事態だった。そう言った存在を排除できる私の加護を求めて来るのは必然になるのか?
〈という事は、城を建てたい理由は玉座の時のように威を示すため、という事で良いのかな?〉
〈はっ。おひいさまがあの者達を庇護なさると言うのであれば、一度はおひいさまの元に顔を出すのが通りで御座いましょう。その時、玉座が野ざらしの状態では、示しがつかないのです。〉
そういう事か。まぁ、私が作ってしまった広場はとても広大だ。それこそ、イスティエスタが丸ごと収まってしまってもなお大きな余裕があるほどに。その広場に城を建てた所で、何の不都合も無い。
〈分かったよ。好きなように建てると良い。ただし、今回は玉座のように急ぎで作る必要は無いからね。疲れてしまうようなペースで建築しないようにね。〉
〈承知致しました。必ずや、おひいさまに相応しい居城を建築して見せます。〉
ゴドファンスはやる気十分のようだな。一応釘は刺したけれど、彼の事だ。疲れてしまうまで建築を行い続けてしまうんだろうなぁ・・・。
〈ねぇご主人!人間達の生活は面白い!?〉
〈今のところ、とても楽しいよ。相変わらず一人では起きられないけれど、頑張って私を起こしてくれた女の子もいたからね。私に対して敵対的な行動や態度をとるような者も現れていないし、旅行はとても順調だよ。〉
ウルミラが人間達の生活の感想を尋ねてきた。
総合的に鑑みて、この一週間、とても楽しく過ごせたと思う。巡り合わせが良かったのだろうな。最初にシンシアに会えたのは、僥倖だったのだろう。
評判の良い宿に宿泊が出来たからか、とても快適だったな。王都でも評判のいい宿に泊まるとしよう。
〈美味しい食べ物は会ったのかしら!?甘いのやしょっぱいのが食べたいのよ!〉〈また黄色い奴が食べたいわ!塩も砂糖もいっぱい欲しいのよ!〉
〈黄色い奴、チーズも塩も砂糖もいっぱい手に入ったから、期待していてね?それに、美味しい食べ物もたくさん食べられたからね。皆にも振る舞うつもりだよ。〉
〈アレはチーズって言うのね!楽しみだわ!でもあんまり濃い味にしちゃダメなのよ!〉〈チーズ!嬉しいのよ!でも私達ノア様の好みの味だと味が濃すぎるのよ!〉
やはりレイブラン達は人間達の食べ物が気になってしょうがないらしい。
この一週間で食べた食べ物がどうやれば再現できるのか、初めてハン・バガーを食べた時から模索している。
幸い、図書館には料理の本も蔵書されていたので、本に書かれている通りに作れば、トーマスほどでは無いとはいえ、それなりに美味い料理を皆に提供出来ると思う。あの子達にふるまう前に、自分で一度は試してみないとな。
〈そうだ、フレミー。人間達は思った以上に沢山の種類の服を着ていたよ。それに、衣服のデザインをまとめた本も沢山あったんだ。それから、素敵な生地も見つけて手に入れたから、楽しみにしていてね?〉
〈嬉しい。ねぇ、ノア様。その生地って、私の糸で作れそうかな?〉
〈ああ、フレミーなら問題無く作れるよ。とても触り心地が気に入った生地なんだ。私は、フレミーの糸でこの生地を作ってもらいたいと思っているよ。〉
〈そっか。うん、任せて。ノア様に喜んでもらうために、素敵な服をいっぱい作らせてもらうね。〉
"楽園"を発つ前にフレミーが人間達の着る服に興味がある事を思い出して、フウカの店で購入した服について話をした。それに、図書館には衣服についての本も乗っていたのだ。フレミーは読書も結構好きだったようだから、プレゼントしたら喜んでくれると思う。
そうだ。フレミーもそうだけど、ゴドファンスやホーディも酒が好きだったな。当然、酒もイスティエスタで結構な量購入しているから、それも伝えておこう。
〈フレミー、ホーディ、ゴドファンス。街には結構な種類の酒が置いてあったから、それなりの量を手に入れてきたよ。私が飲んでみても美味しいと感じられたから、楽しみにしていて欲しい。〉
〈ほほう、人間達の酒か。ラビックが回収してきた人間の酒はとても量が少ないからな。まだ口につけてはいないのだ。それが気兼ねなく味わえるとなれば、喜ばしい事だな。〉
〈おひいさまの御厚意に感謝いたします。〉
〈それは楽しみ。ホーディもゴドファンスも、私が知っている"楽園"のお酒は強すぎるみたいで、あんまりたくさん飲めないんだ。一緒に飲む機会が少なくてちょっと物足りなかったんだよね。〉
〈フレミー、あの酒は多分、水で薄めて飲む物だと儂等は思うんじゃ。〉
〈それじゃもったいないって言ってるじゃん!あんなに美味しいのに、薄めたらダメだよ!〉
〈こんな感じでな。フレミーは酒に対して強いこだわりがあるらしくてな。我等にも気兼ねなく飲める酒が手に入るのなら、実に有り難い。〉
〈ねぇねぇ、ご主人!面白そうな道具はあった!?〉
ホーディとゴドファンスはあれからフレミーに案内されて彼女の知る酒を味わったらしい。だが、二体には酒の酒精が強かったようだな。あまり沢山は飲めなかったとの事だ。
それにしても、フレミーがそこまで酒に強い執着があるとは思わなかったな。フレミーが語気を強める事なんて今まで一度も無かったはずだ。
ホーディやゴドファンスでも気兼ねなく飲める酒が手に入ったと分かり、嬉しそうにしているところ、ウルミラから自分の望む物が見つかったかどうかを尋ねられた。
ウルミラが望む物が面白そうな物、だからなぁ・・・。実物はイスティエスタでは見当たらなかったんだよなぁ・・・。
〈そういった物があるとは本には書かれていたのだけれどね。私が訪れた街には見当たらなかったよ。今はもっと大きな街に移動中でね。そこで探してみようと思っているよ。〉
〈わかったー。ねぇご主人、ボク達、移動中に話しかけてるけど、ご主人の邪魔になったりしてない?〉
〈問題無いよ。移動に関しては他人任せだからね。今は馬で引っ張る箱に乗って移動しているんだ。〉
〈じゃあ、動かないのに移動してるの!?何それ!?楽しそう!?〉
〈うん。自分で動かずに移動するっていうのは、結構斬新で楽しいよ。私の経験だと、ゴドファンスとホーディの背中に乗って運ばれたぐらいだったけど、ホーディの時私は直ぐに眠ってしまったしね。〉
思えば、他者に運ばれながら周囲の景色を眺めると言うのは、これが初めてになる。大抵は私が運ぶ側だったからな。自分が動かずに景色が変わるという現象は、これが初めてじゃないだろうか。
〈ラビック、君は何か欲しい物はあったりするかな?〉
〈いえ、私は特には・・・。強いて言うなれば、人間達の戦い方が知りたいですね・・・以前人間達と戦った際には、何もさせずに終わってしまいましたから。〉
なるほど。ラビックは物ではなく技術を所望か。うんうん、確か武術や剣術の本も少ないが図書館にあったはずだ。王都の中央図書館にはそう言った本がより多く蔵書されていると良いな。
〈人間達は自分達の戦い方や体の動かし方も細かく本に記していたよ。なかなか理に適っていたし、読みごたえもあると思う。帰ったら本をラビックにも渡すとして、稽古を通して実施してみよう。〉
〈なんと。素晴らしいですね。ノア様の帰還を心待ちにしております。〉
これで皆の要望は一通り聞く事が出来た。そろそろ『通話』を切るとしよう。あの子達にもやりたい事があるだろうし、何よりこうして『通話』を掛けたままだとゴドファンスが建築に行動を移せない。
あの子達と会話が出来なくなるのは心苦しいが、何時までも我儘は行っていられないからな。
〈それでは、おひいさま。早速おひいさまに相応しい城を建てて御覧に入れますので、どうぞ、ご期待くださいませ。ホーディ、ラビック、おひいさまの許可は下りた!今こそ我らの力を振るう時ぞ!〉
〈うむ。有り余っている我等の力、存分に使い主のための城を築き上げよう。〉
〈ゴドファンス。貴方の『我地也』の扱い方、参考にさせていただきます。〉
〈皆?本当に、ほどほどにね?〉
『通話』が切れる際にゴドファンス達男性陣がやたらと気合が入っていたな。改めてほどほどにするように言いはしたが、聞こえていただろうか?まぁ、大丈夫だと信じよう。
会話が終わった事をきっかけにふと外を見てみれば、目を見開くほどの光景が広がっていた。
周囲は辺り一面、広域に広がった小麦畑によって黄金色に染まっていたのだ。
依頼を片付けている時は、この辺りの道は通っていなかったからな。聞けば、この馬車は寄り道をして、景色を楽しみながら王都へと向かうらしい。所謂観光用というやつだ。
王都まで最短で向かう場合は、直通の街道を通れば、この馬車の速度でも三日で王都に到着するそうだ。
今まで私は目的を遂行するために最短で結果を出す方法を取り続けてきた。そのため、こうして景色を楽しむ機会はまるでなかったのだ。
とても美しい光景だ。小麦畑を良く見てみれば、ちらほらと作業をしている人を見かける。この畑を維持している農民達だろう。だとするのなら、この辺りにはこの小麦畑を所有している村がある筈だ。
小麦を自然に任せて育てようとした場合、こうはならない。
人間達が環境を整え、常に状態を管理し、丹精込めて育てているからこその光景だ。こういったところも人間の凄さだろうな。動物や魔物、魔獣ではこうはいかないだろう。魔族なら、まぁ、可能だろうな。
彼ら農民が懸命に品質の良い食料を育ててくれているからこそ、私も美味な料理を堪能できたのだ。彼等にもしっかりと感謝しておかないとな。
一応、農業の神とも言われているし、ダンタラにも感謝しておこうか。彼女のおかげでこれだけの小麦が育ったというのならば、美味い食事に繋がったのだ。私が彼女に感謝する理由になる。
『あーそのぉ、一応、私の力は働いてはいるけれど、勝手に作用してるだけだから・・・そんな風に感謝されると、いたたまれないわ・・・。』
・・・神と言うのは、祈ったり感謝したりすると直ぐに返答をよこす存在なのだろうか?即座に行動するのはルグナツァリオだけだと思ったが、そうでもないらしい。
もしかして、これ、『真言』を習得すれば普通にダンタラと会話する事も出来るのだろうか?やってみる価値はありそうだな。
ルグナツァリオとの会話と、先程の推定ダンタラの言葉を精査して、『真言』を自分でも扱えるようにしてみよう。
そうして『真言』を覚えるために思索していると、大きい村に到着したようだ。どうやら、今日はここで一晩過ごすらしい。
この村に宿は一つしかないらしく、馬車の御者とは同じ宿で過ごす事になる。
ちなみに、今回馬車に乗っていた客は私だけだ。御者に聞いたところ、この時期はイスティエスタへと向かう者はいても、離れる者は滅多にいないらしい。ただ、この村から王都へ向かう者達はいるらしいので、明日からは客が増えるのだそうだ。
馬車から降りれば、村人達からは最初の配達依頼の時のように大層驚かれた。
やはりと言うか何と言うか、村にいる子供達も街の子供と同じように私の尻尾が気になるらしい。夕食までには時間がある事だし、村では子供達の相手をしながら過ごす事にした。
村の子供達は、長男や長女は家を継ぐ事になるらしいが、それ以外の子供は街へ行き冒険者になる事がとても多いらしい。中には教会関係の仕事に就くものもいるし、才能のある者は自分から教会で文字の読み書きを教わり、魔術師を目指す者もいると言う。
まぁ、大体は冒険者を目指す事には変わりなく、それ故に私が冒険者と分かると、私の活動の話を強く要求された。
村の子供達にとって、冒険者と言うのは憧れの対象のようだ。ならば、この子達が苦労しないようにしっかりと教えてあげよう。文字の読み書きの大切さをな!
教会の関係者には悪いが、明日から文字を教える仕事が一気に増えて忙しくなると思ってもらおう。
振る舞われた食事は、焼き立てのパンや村で飼育している鳥の卵、家畜の肉に乳製品をふんだんに使用した、なかなかに豪勢なものだった。食材は全て採れたて新鮮であり、食材だけで言うなれば、間違いなくイスティエスタの物よりも上質だったと言えるだろう。
御者に聞けば、いつもはもう少し質素な食事だと言う。豪勢な食事になったのは私が原因らしく、彼から軽く感謝されてしまった。
王都までの旅路は終始こんな感じで続いていくそうだ。途中の村には、ハチミツをふんだんに使用したとても甘い菓子や、ハチミツから作られた酒、ミードも振る舞われるらしく、私を楽しみにさせてくれた。
この村の宿のベッドに使われている布団は、流石に"囁き鳥の止まり木亭"ほどの品質ではないらしい。これならば目覚まし板を使用して朝起きる事も出来るだろう。
御者に出発時間を確認したら、目覚まし板に魔力を込めてちょうどいい時間に私の頭に落下するように配置しておく。
さて、果実を食べて自分と衣服に"
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