第47話 【百万人耐久初配信】てっぺん取りにきた【ライブスターズ七期生/ヒメカ】(前編)
「てっぺん取りにきた!ヒメカだよ!」
画面に向かって、宣言する。
私のデビュー配信が始まった。
待機画面の時点から既にコメント欄が賑わっており、どんな新人が来るのか楽しみにしているファンや、見に来てくれているライブスターズの先輩方が「がんばれー」と応援してくれていた。
誰かの初配信がある時は同じ時間に配信してはいけない、というルールがライブスターズにはあるらしく、それらを考慮して先にデビューしたうみぽよとキノコちゃんは一時間ほどで初配信を切り上げている。
対する私はチャンネル登録者数が百万人を達成するまで耐久するという異例の初配信だ。
当然、その時間先輩が配信できないという事があってはならないので、「自由に時間被せてもらって大丈夫です」と伝えてある。
結果、「じゃあ同時視聴やってもいいですか!!」というりくちゃんの言葉を筆頭に、ほぼ全員が私の同時視聴配信をしているらしい。
その為、それぞれのリスナーもこぞって私の配信を見てくれているので、現在の同時視聴数は四十万を越えている。
確か、歴代のvtuber同時視聴数が五十万だったはずなので、ライブスターズの皆さんの力の大きさを改めて実感した。
チャンネル登録者数こそまだ二十万人だが、これから一緒に伝説を目撃してもらおう。
「頑張って」
配信には載らないように小さく、優里が声をかけてくれる。
優里は同時視聴をしておらず、何か事故が起きてしまった時や、耐久配信というだけあって長時間の配信が予想される私のサポートをするそうだ。本当に優しい。
私は小さく「ありがとう」と返して画面に向き直り、コメントを見る。
コメント
: きたーーーーー!
:〈りくのかね〉待ってましたーー!
: 声やばっ!なんというか...やばっ!
: わかる...なんというか...わかる
: なんやねん笑
: この声って...あっ(察し)
: それ以上言うな...(察し)
: というかいきなり百万人耐久するんか
: 今日中に達成したらvtuber歴代最速のチャンネル登録者数百万越えだぞ
: vtuberどころか全Utuber最速だろ
: 無謀すぎて草
: もはや間抜けである
: 挑戦するというその勇気は讃えよう
:〈犬屋敷奏〉オロすぞ?
:〈スミレ〉何もわかってないなぁ、これだから素人は...
: ひ、ひぃいいい
: 犬屋敷だ、すみませんでしたー!
: スミレはうるさい
: スミレは調子に乗るな
おっと、コメント欄は荒れ気味かな?
先輩達も盛り上げてくれているし、私も応えなきゃ。
「ふふ...知ってる?間抜けな勇気って、男気なんだよー!」
コメント欄に見えた言葉を掬い上げ、返す。
コメント
: ...なるほど...?
: ?
: ?
: はて?
: 不思議ちゃん系かな?
:〈スミレ〉皆わかんないの?ぷぷ...
: は?
: じゃあスミレ言ってみろよ
:〈スミレ〉...。ヒメカたん可愛いー!!
: だと思った
: で、結局どういう意味?
「あはは、どういう意味?って思った?正解はね、勇気っていう漢字の勇に含まれてるマが抜けたら男気が残るから!でしたー!」
私はドヤ顔で答えを教える。
画面上ではヒメカが不敵に笑っていた。どうやらドヤ顔も反映されるようだ。
配信は初めてだったけれど、楽しいなぁ。
コメント
: は?...天才か
:〈犬屋敷奏〉ほんまや...!
: す、すげー!
: 何も凄くないだろ
: 少なくとも俺には考えつかなかったぞ
: くっだらね
:〈シャーベット・ムーン〉...天才
: ムーンさんが言うなら間違いない
コメント欄の中にはまだ少し反抗的な態度の子もいるみたいだ。
どうしようかな。そういうコメントはどんどんブロックしていくといいよ、と斉藤さんも先輩方からも言われていたけれど...。
しばらく考えて、そのまま残した。
私はアイドルで、今はヤンキーでもある。
全てを力づくで飲み込んでこそ、ヤンキーアイドルだもんね。
「ふふ、いきなりだけど、聴いてもらおうかな?」
配信画面を切り替える。
明るいライトに照らされたヒメカが、マイクスタンドの前に立っていた。
なんだなんだ、とザワつくコメント欄を見ながら、説明する。
「よく分からないけど、優しいレコード会社の人が特別に歌ってもいいよっていうことで許可出してくれたから、歌っちゃうよ!曲は『史上最強の私!』」
アイドル姫野京香の代表曲の一つ『史上最強の私!』。
昨日、急遽配信内容を変えることにした私は、現マネージャーの斉藤さんと、アイドル時代に私を担当していたマネージャーさんに話をしていた。
またてっぺんを取るから、歌わせて欲しい。
そうしてアイドル時代のマネージャーを通してレコード会社の許可をもらったのだ。
配信上では、あくまでも何故か許可してくれたレコード会社ということにしておく。
いやぁ、不思議なこともあるものだ。
コメント
: うぉおおおおおーーー!!
: マジかっ!!
:〈スミレ〉うわぁあああああああん(号泣)
: 皆にも知らせないと...!
: 拡散しました!
: 隠す気なくて草
: 言うな...(察し)
: 何故か優しいレコード会社がいたんだよ...!
: 初配信で耐久してさらに歌枠!?とことん常識外れだ...!
コメント欄も盛り上がっている。
昔のファンも、これからファンになる人も、全員刮目してね!
イントロが始まり、私は息を吸った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます