第18話 幼馴染で親友は迎え入れる
今日はダンススタジオに早めに来た。
りくちゃんのレッスンを窓から覗く。
別にスタジオ内に入っても良いのに、とは言われているけれど、先生のレッスンをお金を払って受けているりくちゃんの邪魔はできない。
それでも頑張っている姿を見ているだけで不思議と元気が湧いてくるのだから、りくちゃんは本当にすごいなぁ、と感じている。
最近はデビューする為に色々と忙しい毎日で、昨日も面接があった。
面接ではこれまでの活動経験や得意なこと、ライブスターズのvtuberとして何をしたいか、などの質問があったが、どれも堂々と答えることができたと自負している。
もちろん服装は特攻服だ。
キャリーケースに入れて行き、面接会場のトイレで着替え面接に臨んだ。
とにかくインパクトを残す。これがアイドル時代に
面接の合否は後日連絡すると聞かされていたので、今日朝一番に電話が鳴ったことには驚いたが、面接も担当していたいかにも出来る雰囲気が滲み出ている女性の声で告げられた二次審査通過には驚かなかった。
次が最終面接らしい。日程は来週の土曜日。
これに通れば晴れてライブスターズの一員としてデビューできる。
優里の、ナイトさんの隣に立てる。
忙しさのあまり優里と全然遊べていなかったからお昼に電話をかけたが、第一声で分かる寂しいという感情に、嬉しいけれど少しくすぐったいような気持ちだった。
今日の予定を聞かれたけれど、日曜日は必ずダンスに行くというのを忘れている位には求められているらしい。
優里からハッキリと伝えられている訳ではないが、何年ずっと一緒にいると思っているんだ。
言わなくても分かる気持ちがあるからこそ親友として過ごしてきたんだから。
まぁ、優里がvtuberで私の話を沢山している事はつい最近知ったけど。
今日の夜泊まりに行く。
寂しかったのは優里だけじゃないんだぞ、と思い知らせなければいけない。
もうやめて、と優里が逃げても甘やかしてやろう。
レッスンが終わったみたいなので先生と入れ違いにスタジオに入る。
先生に、今日も元気だねぇと言われたので元気です!と返しておいた。
スタジオではいつも通りの学校ジャージとシャツを着たりくちゃんがいて、入ってきた私に笑顔をくれる。
「京香ちゃん!!面接どうでしたか!!」
りくちゃんには会う度に近況報告をしているので、私が昨日面接があった事も知っている。
「もちろん通ったよ!次が最終面接なんだって!」
「おー!!流石は京香ちゃんです!!私は受かると信じていました!!」
もうかなり仲良くなったので私からの敬語はなくなったが、りくちゃんは敬語のままだ。誰にでも敬語がクセだという。
「最終面接という事は役員の方達ですね!!もしかしたら社長も来るかもしれません!!」
「なるほど。役員面接かぁ、流石に私も役員面接の経験は多くないなぁ」
アイドル時代、大きな番組のレギュラーを決めるオーディションでは役員の人がいる事もあったけど、二回だけだ。
「何か対策とか立てた方がいいのかな?」
「京香ちゃんは京香ちゃんのままで大丈夫ですよ!!私が保証します!!こんなに魅力的な女の子を逃したらもったいないですからね!!」
りくちゃんの真っ直ぐな褒め言葉に思わず照れてしまう。
確かに私は私だ。それ以上でも以下でもない。
ありのまま思ったことを話せば良い。
簡単な事のようで難しい、ありのままの自分。
芸能界で磨きトップを取ったという経験が、私の強さだ。揺らぐ必要なんてない。
「ありがとう、りくちゃん!りくちゃんにそう言われちゃったら仕方ないなぁ!魅力的な私を存分に出してくるよ!」
「はい!!頑張ってください!!応援しています!!」
りくちゃんの笑顔に元気を貰う。
ダンススタジオでは日曜日しかりくちゃんと会う事はない。
一週間に一度だけど、りくちゃんと話しているとパワーが湧いてくるのだ。
「それじゃありくちゃん、りくちゃんの曲一緒に踊ろう!実は振り付け覚えたんだぁ。こっそり見てたからね」
「えぇ!!私が一ヶ月かかった振り付けをもうですか!!流石は京香ちゃんです!!でも私だって負けませんよ!!」
二人で踊る。振り付けは覚えたけれど、やはり一つ一つの細かなキレはりくちゃんには敵わない。
次に会うのは最終面接後、おそらく合否が分かった後だろう。
良い報告ができると良いなぁ。
一度帰宅し荷物を取ってから優里の家に向かう。
そういえばそろそろ優里の二十歳の誕生日じゃないか。何をあげよう。今度こそ決めないと。
電車に乗りながら親友へのプレゼントを考える。
優里からは腕時計。私も普段身につける物を買いたいなぁ。
来週の最終面接が終わったら、そのまま何か買いに行こう。ネックレスとか、喜んでくれるかもしれない。
マンションに到着し、エントランスを開けて貰ってエレベーターに乗り込む。
目的の階に到着して優里の部屋の前に立つ。
あとはインターホンを押して優里が出てくるのを待つだけだ。
大学ではいつも会ってるのに、こうして会うのは久しぶりだからか、なんだか緊張してしまう。
いつもよりゆっくりとインターホンを押した。
「いらっしゃい京香」
「ん、会いたかった」
率直な気持ちを伝えただけで真っ赤になってしまった優里を見て、不思議と落ち着く。
さぁ、どんな風に甘やかそうか。
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