第14話 幼馴染で親友はお姉さん


 優里が連れて来たのは背が小さく可愛らしい顔をした中学生くらいに見える女の子だった。

 自己紹介をしたら、女の子が固まってしまったのでどうしようかと頭を悩ませる。

 何故かドヤ顔をしている優里と一緒に席に座らせてみたら意識を取り戻したようで、優里に向かって怒っていた。


「アンタ!友人って姫野京香だったの!?先に言いなさいよ!!」

「あれれー?言ってなかったっけー?ごめんねー?」

「むきーーっ!」


 顔を見る限り本当に聞かされていなかったみたいだ。

 優里の少し意地悪な一面を見たので珍しいと感じる。


「それで、お名前はなんて言うの?」

「あ…私はメア…じゃ、じゃなくてえっと…メ、メアリーです」


 外国の血が入ったようには見えない可愛いお顔の女の子はそう答える。

 メア、と言い間違えていたし優里も一瞬焦った顔をしていたので多分そういうことだろうけど、メアリーちゃんと呼んでおく。


「メアリーちゃん!よろしくね?仲良くしよー!」

「あぅ…うん…」


 メアリーちゃんは思っていた印象より少し大人しいので、もしかしたら人見知りさんなのかもしれない。

 早く優里とメアリーちゃんみたいに冗談を言い合える仲になれたらいいなぁ。


「そういえば二人はどんなお友達なの?今日は二人でお出かけ?」


 本当は分かってるけど、この質問をしないと逆に不自然かなと思って聞いてみた。

 決してどんな反応するかなぁ、と楽しんでいる訳ではない。うんうん、本当に。


「あ、えっとー、ネット上の友達?みたいなやつで、共通のネット友達の誕生日会を他にも何人かと、っていう感じかな?オフ会とも言うかも?」


 優里が答える。

 バーチャルアイドルグループの同期をネット友達って...と思ったけど確かに間違いではないのかも?

 誕生日会に関してはその通りだし。

 

「そうなんだ!いいなぁ、仲良しだね!今日はどうして一緒に来たの?」

「こ、こいつに引っ張られて無理矢理…」

「いやいや、メアちゃ…メアリーちゃんが私の後ろつけて来たんでしょ!その上でナンパされてて一人にするのも心配だから連れて来たの!ごめんね京香?ちゃんと言いつけておくから」

「ふ、ふん!別にアンタの助けなんていらなかったわよ!」

「か弱い声でありがと…って言ってたくせにぃ〜」

「なっ…!?聞こえてたんじゃない!!」


 なにやら優里がお姉さんみたいに見えてきた。

 迷子になって強がる妹と頼れるお姉ちゃん。思わずおかしくて笑ってしまう。

 流石はナイトメアだ。こんな微笑ましいやりとり見せられたら心がお母さんになっちゃうよ。

 

「な、何笑ってるのよ…」


 メアリーちゃんが私を訝しんでいる。


「んー、メアリーちゃんも優里も可愛いな、って」


 そう言って二人の頭を撫でると「なっ!?」とか「うっ…」とか聞こえたけど、気にせず撫で続ける。

 メアリーちゃんがメアちゃんなら年下なはずなので、許して欲しい。私もお姉ちゃんをやってみたかったのだ。

 しばらく撫でて満足したので二人から手を離すと、真っ赤な顔で俯く優里と、同じく真っ赤な顔で固まるメアリーちゃんの出来上がりだ。

 優里にその顔を見られたくなかったのか、メアリーちゃんが先に立ち直り優里の方を見た。

 そこにはまだ真っ赤なまま俯く優里がいるので途端にニヤニヤとし始める。

 あー、これは始まるかな。と思っていると、案の定それを弄ったメアリーちゃんが優里にお仕置きされていた。


 今日は優里と二人でデートの予定だったけど、楽しいからオッケーだ。

 わちゃわちゃしている二人を放っておいてメニュー表を開き注文を選ぶ。

 ベルを鳴らすと可愛いエプロン姿の店員さんが駆け寄って来てくれたので、二人を止めて注文させる。

 

 なんだか本当にお母さんになった気分だ。

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