第3話 幼馴染で親友はファン


 優里の見たことないテンションは、もしかすると配信用のテンションなのかもしれない。

 一番仲が良い自信があるだけに、私の知らない優里がいると思うとなんだか悔しい気持ちもする。

 こっそりどのチャンネルか調べようと思い、観察を続ける。

 よく見るとPCモニターの上部に取り付けられたスマートフォンにボーイッシュな女の子がいて、優里の動きに合わせてゆらゆらと揺れたり笑ったりしている。

 なんだろうあれは…?

 優里が見ている正面のPCモニターには無限に遊べることで有名なクラフトゲームが映り、もう一台のモニターには配信画面が映っている。先ほどのボーイッシュな女の子もそこにいた。

 漫画やアニメなど、いわゆる二次元コンテンツに詳しくなかった為、何かのキャラクターなのかどうかも判断できない。

 ただなんとなく、優里に似ているな、と感じた。


「それでまぁ、その後体育とかあって疲れちゃったんだろうね。最後の授業でうとうとしてたから肩貸したらさ、安心したように目を閉じて眠っちゃって…!」


 どうやら私の話は続いているらしい。


「なんだろう、なんて言えばいいのか、天使ってこういうことなんだなって…思わずキスしそうになったよね」


 …。


「流石にやばいかなぁ?逆におでこならいいかな?大丈夫?起きないよね?一瞬で色んなこと考えた結果、ビビって何も出来ませんでした。どうもチキンです」


 …。


「ちなみにそんな私の友人が、後ちょっとしたら来るので今日はこの辺で終わりー!ホラー映画苦手だけど、どさくさに紛れて抱きつく正当な理由が出来たと思えば楽しみでしかないね!」


 私はなんだか見てはいけないものを見た気がして、こっそりとドアを閉める。

 そのまま静かに玄関、エレベーター、マンションエントランスへと戻る。

 さっき聞いたこと、部屋の風景を思い出す。

 テンションの高い優里、私のことを楽しそうに話す優里。

 そして実は一番衝撃だったこと、


「なんで私のアイドル時代のCDとポスターあんなにあったんだろう?」


 これまで遊んだ部屋にもCDは置いてあった。グループ・ソロ問わず、私が歌っているCDは全部揃えて飾ってくれていた。だがそれらは一枚ずつで、ポスターなんて貼ってなかった。

 だからこそあの配信部屋に山ほど積み上げられた私のCDと、吸音材のない壁や天井全てに私のポスターが貼ってあるのを見て、なにか見てはいけない気になったのだろう。

 さらに配信で言っていた、私のこと。

 配信用にオーバーに表現しているかもしれないけれど、それでも少しは自惚れてもいいのかもしれない。

 優里って結構私のこと好きなんじゃない?


 

 スマホを取り出しUtubeを開く。部屋で見た画面を頼りに、クラフトゲームを入力、ライブ配信中を選択し検索にかける。

 出てきた候補のうち、見覚えのある顔が目に入る。

 ボーイッシュな見た目の女の子。間違いない、これが優里のチャンネルだ。

 【ライブスターズ所属】プリンセス・ナイト

 チャンネル名を確認してチャンネル登録をしておく。

 チャンネル概要欄に飛んで詳細な説明文を見ると「virtualアイドルグループ livestars三期生 騎士」とだけ書いてあった。


 優里は今アイドルをやっているらしい。

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