第9話 友人の告白



―買い物(決行(14:45))―


買い物袋がいっぱいになってきたそんな頃だった。



もうそろそろ告白をしないと入り口に戻ることとなり失敗に終わってしまう。


残り45分もないぞと言う顔を樹に向けてアイコンタクトした。


樹は、分かってるという顔をしていた。


そして、




樹「せんせい、あのお店に行ってみたいです」それは人が明らかに少なそうな店であった。


男①「いや、もういいから次の場所行こうぜ」




ここはさすがにこれ以上は時間がないのでサポートした。


隆之「そんなに急がなくてもみんなもう、5000円に近いお金を使ってるけど、いつきは、まだ2,3000円しか使ってないから協力しようよ」




先生「そうですね では、樹さんの言っているお店に行きましょうか」


隆之「ありがとうございます」


樹「ありがとう」小声で俺にそういった。





だが、この様子だとみんなこの店に興味なさそうだからすぐに外に出てきてしまう。



これは、計画を変更しなければならない。




そこで、俺は、


隆之「俺が全員を外に出るように呼び掛ける あゆみは、中にいさせるようにするから 告白は室内で誰もいなそうなところで決行するしかない」小声で言った。


樹「確かに 他の店にしたとしても、みんなもうお金を使ったから外に出るのが早くなる それに時間が経つにつれてお客さんも増えるから このタイミングしかないのか」





隆之「もう少し早くこの店についていればよかったんだけどな…」



樹「仕方ないよ ありがとな」



俺は、樹に応援することはできなかった。



一番近くにいながら何もできなかった。




―買い物(決行(14:52))―



俺は、みんなに樹は、人に見られながら買い物するの苦手だと嘘を言い、店の外に出した。


みんなごめん。


先生にも同様のことを言い外に出てもらおうとした。




でも、


先生「だめです 樹さんがどこか違う店に行くかもしれませんから」


隆之「でも、みんな外に出てるからどちらかと言うと外の生徒の方が見ていた方がいいんじゃないの? それにこの店の出口は1つしかないからそこを見とけば大丈夫だし」


先生「..... 分かりました では、樹さんにはできるだけ早くと伝えてください」


隆之「分かりました」 



これで残るは、美咲と歩だけだ。


俺は最初に美咲の方へ向かった。


隆之「みさき あのさ、いつきは、人に見られ」



俺の言葉を遮るように


美咲「何しようとしてるの?」


隆之「? 何のこと?」俺は、とぼけた。


美咲「たかゆきの動きがおかしかったから ...なにか企んでるの?」


隆之「ごめん 言えないけど頼む 外に出てくれ」


美咲「まぁ、言えないのはお互い様ね 分かった 外に出とく」


美咲はあっさり外へ出ていった。





俺は次に歩の方へと向かった。


隆之「.....なぁ」


歩「びっくりした! 脅かさないでよ」


隆之「あぁ、 ごめん そのさ」


歩「なにどしたの?」







隆之「.....」俺は、言葉が詰まった。






俺はこの後楽しく歩と樹と話せれるのか、どうなるんだ。









考えても答えが出るはずない。







歩「ねぇ、たかゆき」


隆之「!?」


歩「私たちってどれだけ悩んでもいい答えなんて出ないんだよね」



俺の心を見透かしたようにそう言う。



歩「だから、その時の気分次第なんだなって思うの 後のことは分からない だったら、今の気分を大切にすることにしたの」




隆之「.....」





今の気分。




俺は、どんな気分なんだ。





緊張。後悔するかもしれない。






その時、脳裏によみがえるあの言葉が、美咲「たかゆき 私たちはまだ子どもなんだよ」





俺は、子どもだった。






どんだけ考えても気分が先行する。






気持ちが高まり、低くなる。







その一瞬を俺たち子どもは大切にしてる。







だから、楽しい。






気持ち優先に動くから怒られることもたくさんある。


たくさん間違える。






だったら、俺は








隆之「店のあっち側でいつきが買い物してたから相談に乗ってあげなよ」


歩「..そうなの?じゃあ、行ってくるね」


俺は、背中を見送り、告白が見れ、且つこちらを意識できないところに向かった。




この選択が正しい答えかは、分からない。



そして、その地点に到着した。





―買い物(決行(14:56))―


2人は対面してキャラクターのグッズで談笑している。


そっちに夢中になっていたら。


美咲「なるほど そういうことね」


隆之「うわぁ...っ」咄嗟に口を押さえた。


美咲「まさか こことはね」


隆之「え?何でここにいる?」


美咲「気になっちゃって(笑)」


隆之「てか、気づいてたの?」


美咲「まぁ、なんとなく まさか、たかゆきがサポートしてるとは思わなかったけど」


隆之「..このことは、あゆみ知ってるのか?」


美咲「.....なんでこういうときだけ言うのよ.....」


隆之「ん?」


美咲「あぁごめん あゆみは知らないよ」


隆之「そか」 良かったと安心した。





この告白は俺が決めるべきものじゃない。







告白をする方とされる方が答えを出すべき。







だから、俺は、この決断をした。







美咲「そろそろ言うんじゃない?」 




確かに、樹の顔が真剣を帯びた顔つきになっていた。





そして、耳を澄ますこととした。




歩「このぬいぐるみ可愛いね これにしたら?」


樹「あのさ 聞いてほしいことがあるんだ」


歩「え?..... 今?」


樹「うん」


歩「分かった」




 俺はじっと男のいう言葉を待つ。






樹「俺さ... あゆみと3年生の時に初めて会ってさ そこでいろんなことを話して、たくさん笑って 本当に楽しくて平日になるのが楽しみだった」






歩「…」






樹「そして、好きになっていた 俺は、日向歩のことが好きです」







俺は、かっこいいと素直に思った。







歩「..........ん 




こういうの初めてで、









急だからどうすればいいのか分からないのだけど 















ごめん、今は返事を返せないかな 





まだ、修学旅行中だから」






樹「そう だよ な うん、わかった また、学校に戻ったら答え欲しい じゃあ、先生のところ先に戻るわ…」


歩「..うん.....」



そして、樹は外に出ていった。


そして、歩も少し経ってから先生のいる外に向かった。


隆之「俺たちも戻ろ」


美咲「..うん」


こうして告白は終わり、先生とともに他の店にも行ったが、歩と樹に声をかけることはできなかった。


そして、俺たちは、入り口に戻った。


先生が点呼をして、荷物をバスに詰め、全生徒がいることを確認し、バスに乗った。


俺は、告白を知る生徒が樹にそれを聞かないか不安だったが、みんな自分の買ったものを見せ合ったり、どんな乗りものに乗ったかを共有していて一安心だった。


その後、みんなは疲れから眠りにつき、起きた頃には学校についていた。



そして、親御さんが迎えに来ていて、親御さんが早く来ている生徒から順に帰った。


その時、樹と歩の顔を見たが、浮かない表情だった。



当然だ。



こうして長い修学旅行が終わった。



明日が土曜日でよかったと思った。

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