第4話 バレー

クラス対抗戦当日

俺は酒井を応援しに体育館に来ていた。

ん、オセロ?なにそれ知らない。、、、まぁ、チーム戦なんて初戦敗退ですよ。

体育館に入り酒井を探しみつけた。酒井は髪をくくり、とても可愛らしくなっていた。俺がオセロをしている間に酒井は勝ち進み今から例の葵とやらのクラスと当たったようだ。葵という子はバレーがとても上手いらしく生徒間でも話されており、エース候補らしい。さて、この試合どうなるかな?


あの子はとっても可愛かった。私なんか比べ物にならないくらい。だけど、それ以上に体も心も弱かった。だから、私が守ってあげるんだ。


酒井「葵ちゃん」

私は試合が始まる前に小声で呟いていた。やっぱりあの頃から変わらない。元気で友達付き合いが多い子、高校生になって葵ちゃんの存在を知っても話に行くのが怖かった。だけど、やはりもう一回話したい。だから、私は試合が終わったら声をかけに行こうと心の中で決意した。


ある日、引っ越しが決まった。なんでだろう?やっとあの子と仲良くなれたのに、親しげに私を呼んでくれるあの子と、私が居なくなったら誰が彼女を守るのだろう?誰が一緒に笑い、時に泣いてくれるのだろう?私はそんな事を考えながら親に連れられこの町を後にした。


酒井「ッ!」

やっぱり葵ちゃんはバレーが上手い、仲間との連携もそして、バレーの技術もあの時よりも遥かに上がっている。点数が負けているのにバレーがどんどん楽しくなってくる、やっぱり葵ちゃんと一緒にやるのは本当に楽しい。


何も楽しくない中学校時代。一応バレーをやっていたがどの大会に行っても彼女の姿はない。私の事を友達と呼んでいる人たちがいるが、、、そんな事はどうでもいい。あっという間に中学3年がすぎ私は高校を選んだ。昔いた町で私の元家から一番近い高校ここならもしかしたら、、、。


信田「あの子本当にすごいな、、、」

俺は葵という生徒の動きを見てそんな言葉をもらしていた。しかし、酒井の動きも負けていない。勝負はラストスパートに差し掛かった。


懐かしい町並み私はようやくこの町に帰ってきた。もしかしたら彼女は私の行く高校にはいないかもしれない。だけど、私はあの本当の親友とこの町にいる限り再会できる事を信じている。


酒井「あっ!!」

葵ちゃんが最後の点を決めた。これで、私たちの負け、、、やはりスポーツで負けると悔しい。それと同時に私がどうしてバレーをやめたのかを思い出した。


やはり奇跡は本当にあるんだ。私は高校に入ってそれを感じた。やっと、あの子と再会できた。見た目も少し髪が伸びたぐらいであの頃と殆ど変わらない。話に行こうとしたが足が止まった。もしも、私の事を嫌いになっていたら?もしも、私の事を忘れていたら?そんな事を考えてしまうと、どうしても彼女のいるクラスに近づけなかった。


信田「酒井、お疲れ様」

俺は試合が終わりこっちに向かってきた。彼女に言葉をかけた。

酒井「暁斗くん負けちゃった」

酒井は笑顔で答えた。しかし、その笑顔は少し無理をしているように感じる。そして、もう一つ俺が感じとった事を言った。

信田「酒井、あの子に声をかけてきたらどうだ?」

酒井「えっ?」

酒井は驚いた表情をしたが、すぐに決意を固めた顔になり葵という子の方へ向かっていった。そして俺は、この後起こることになんとなく予測をつけながら彼女の背中を見守った。


バレーが終わった。負ける時彼女はいつも私に、、、


酒井「葵ちゃんッ!」

私は自分が出せる精一杯の声でその名前を呼んだ。彼女は驚き、泣き、そして笑い

葵「ただいま、かなかな」

私のあだ名を呼んでくれた。私は彼女に抱きつき思いっきり泣いた。


かなかなは試合で負けるといっつも私の胸で泣いていた。とても悔しいと


帰ってきてくれた葵ちゃんへの嬉しさとバレーで負けた悔しさが混ざり私はたくさん泣いた。本当に今まで出してきた涙と比べ物にならないくらいの涙を。


こうして、俺たちの初めてのイベントクラス対抗戦は幕を閉じたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る