第26話 ルナという人物1(ルナ視点)
場所は変わってダンジョンの100階層。
そこは、真っ白な空間が広がっていた、ほとんど何もない空間に一つの木製のドアがあり、その手前でルナは座り込んでいた。
「私だけを助けても」
呟く声がただ響くだけであった。
私はまた一人になってしまった。
徹は変な人であった、意味が分からない。何で、私を助けて徹が一人残ったのか?初めからダンジョンを進むのに消極的だった私じゃなくて、自分が進めば良かったのに。自分を犠牲にして………
進む気にも動く気もなれず私はその場に座り込んだ。
それから多分1日ぐらい経過したと思う。
「1日ってこんなに長かったですね。はぁあ」
つぶやいても何も返ってこなかった。
一人でいると今まであったことを思い出す。
私はハイエルフの一族に生まれた。その中でも私の家族は族長的な家柄で、そんな中で生まれた。私、ハイエルフの中でも異常な量の魔力を持ち、異常な再生能力を持った呪われた子。特別な力を持つ人は優遇されることがあるが、しかし限度がある。異次元の力を持った子供を両親は恐れて、一族は恐れて、大衆は恐れて深い洞窟の中に閉じ込めた。何も感じずに、死ぬことも生きることもせずただただ牢屋にいた。
牢屋から出る日は突然だった。しかし、それがさらなる苦痛の始まりだとは思わなかった。
「両親のアホどもはお前の有用性に気が付いていない。俺が、お前を使ってやるよ。」
それは、初めて見る兄だった。この時、私に弟と妹がいることを知った。兄は両親を殺して一族の全権を握ったらしかった。最初は救われたと思った。
私は兵器なった。魔力を供給する兵器。兄が作った魔法道具を動かすための道具。兄はそれを使って他の民族を征服していった。兄はこの世界の王になりたいらしかった。私は、兄の兵器として、多くの人々を殺した。私は………でも、少しの自由があり、少しの言葉とこの世界のことを少し知ることが出来た。
兄はこの大陸をすべて支配して、それで、他の大陸を攻める準備をしていた。兄はこの大陸に一つの独裁国家?と呼ばれるものを作ったらしかった。
その国は、一人の魔法使い、師匠によって滅ぼされたのだが。
「もう少し来るのが早ければ良かったかもしれないですね。申し訳なかった。」
その人物は少しの笑顔を浮かべながら私の前に突如現れた。後から知ったのだが一人で全ての人物を捕縛したらしい。
「だれ」
片言にそういうと師匠は優しい笑顔で
「私は、英雄のなりそこないですよ。友を救えなかっただけの。あなたの名前は」
「名前なんて知らない。」
そう私は確か答えた。その時は名前を知っていた、でも、その名前が嫌いだった。
「………私の弟子になりませんか?力の使い方を教えますよ。一人ぼっちにはしません。そうですね、名前は月ちゃんでいいですか。」
「いや。名前はいや。」
その時断ってしまったことはのちに後悔した。
そこから師匠との生活が始まった。
師匠には言葉を教わった。
師匠には生活について教わった。
師匠にはこの世界について教わった。
師匠に魔法を教わった。
はじめは魔法は全く分からなかった。魔力も上手く使えなかった。
たくさん失敗した。出来ないこともあった、今でも全ての自分の魔力は上手く使えないから、師匠が私にかけた魔力を制限する魔法は解けていない。「上手く使えるようになったら、封印は解けるらしい」多分、無理だろうな。
師匠は私の母であり、父でもあった。
初めて家族を得て一人じゃなくなって私は幸せを知った。
その幸せは何年続いただろうか。でも幸せが終わった時は知っている。大体400年前のことだ。
師匠は突然
「私は、多分もうすぐしたら死ぬ。自分の命をかけてもしないといけないことがあるんだ。だから…………」
私はその師匠の言葉を遮って
「嫌です。私を一人ぼっちにするんですか?師匠が命をかけなくても良いです。誰かと戦うんですか?私も力になります。私も力になれます。だから」
師匠は出会った頃と同じように助けてくれた頃と同じような笑顔で
「私は、あなたの師匠で、それで私はあなたのことを娘のように思っていて、それで、だから、そう言うことは分かってました。」
気が付けば足元が光っていた。転送魔方陣。
「何をするんですか?師匠…………」」
「私は君の事を守りたいんです。大事な娘のことを守りたいんです。少し過ごし辛いと思いますけど、一通りのものは先に送っています。一人ぼっちにしてしまってごめんなさい、結局、私は良い母親を目指して見たけど出来なかったみたいですね。これは、昔の友人の言っていたことが当たっていたらしいですね。」
師匠は、涙目でそういった。
「そんなこと、ないです、師匠…………マーリンお母さん。」
もう転送魔法からは逃れることが出来なった。
「それが聞けて、嬉しかったです。今は一人ぼっちになってしまうかも知れないですけど。でもいつか、あなたを助けてくれる人が、共に競う仲間が、気兼ねなく話せる人が、喧嘩できる人が、尊敬出来る人が、尊敬してくれる人が、嫉妬する人が現れますよ、私の予言は良く当たるの知ってますよね。」
師匠は、母はそう言って涙目のまま笑った。
「そんなの知らない。いやだ、お母さんともっと長くいたい。お願い。お願い」
そんな癇癪が無駄なことは分かっていても、もう駄々をこねることしか出来なった。
「愛してるよ。私の娘」
その母の言葉を聞いたとほぼ同時に私はダンジョンにいた。師匠が母が説明書きを用意していたものを読み、この空間を結界を大きくして、居住できるスペースを確保することとここが、何処かを知った。それで私はすぐさまダンジョンを出るためにダンジョンを死ぬ気で攻略することにした。母を助けるために必死にもがいた。でも無理だった。無理だった。
結果は出来なかった。それでも絶望とかすかな希望を抱えながら、とりあえず師匠の母の言葉に従って居住区を広げた。
そして100年前にボスのドラゴンに出会って殺されかけて、死にかけて、それでも呪われた私は死ぬことが出来ずに、惰性で生きていた。魔法で殺せないならと剣を作って見たこともあった。でもそれも無駄に終わった。もう、師匠が生きているかも知れない、師匠は強いのだから死ぬわけがないというかすかな希望もほぼ消えていた。
大体ここにきて400年が経過した。
それでなんとなく、ダンジョンをウロチョロしていた。
「今日も今日とて私は1人。」
そんな風に呟きながら、妙に群がっているクマの魔物を焼き払った。
そして、焦げた魔物の中に、無傷の青年が意識を失って倒れていたのを見つけた。
それが人なのかどうか分からなかった。
しばらく、迷って、もしかしたら、このダンジョンを攻略してやってきた人で、強いなら、今更かもだけど、このダンジョンから出られるかも知れない。そう思って、拠点に運ぶことにした。
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