第24話 強欲1

ドラゴンが倒されたことでダンジョンの構造が変化したのか、ダンジョンの一部の床が光っていた。恐らく、あそこに行けば、次の階層に行けるのだが、まあ無理だろうな。そんなことを考えていた時に突然現れた人物は口を開いた。

「俺は、戦いを望みここにやってきた。俺は力を望むもの、だが、俺も極悪非道で手当たり次第ぶっ殺す訳ではない。どちらか一人は助けてやろう。」


やはり、敵だった。間違えなくその謎の人物は化け物である。見た目は普通の青年のように見えるが、それは、見た目だけで、醸し出される気迫は、およそ、人のものだとは思えなかった。


「あなたは誰ですか?」


「つまらないことを聞くな。俺は戦いを求めるもの強さを求めるもの、我は強欲なるもの。つまらないことを聞く前にどちらが生き延びるか決めるがよい。」

僕の質問にそうその人物は答えた。まともじゃないことは分かった。それなら、まあ



「「ルナさん(徹)」」

そんな風に声が被った。


「あっ、えっと先にどうぞ」

そう僕が言うと彼女はじっとこっちを見てそれでニッコリと笑いながら


「徹が逃げなさい。ここは、年上に、お姉さんに任せればいいですから。」

そんな風に呟いた。どうやら、ルナさんとは気があうらしい。全く逆のことを考えていた。


「嫌です。ルナさんが逃げてください。僕はまだここに来てあまり時間がたっていません。それに、僕なら絶対に死なないので、どうにか出来るので」

そういって僕も笑ったがルナさんはこっちを睨みながら


「あんだけ、このダンジョンから出たがってたでしょ。それなら先に進みなさい徹」

そうかなり語気を強めて彼女は、つぶやいた。

そりゃまあ、僕はこのダンジョンから抜け出したいし、この死なない状況に、ダメージを食らわなくなってしまった体を戻す方法を知りたいし、元の世界に戻りたい。でも、400年ぐらい閉じ込められている人を前に、まあ。


「無理です。というか、ルナさんを残してきたっていう後悔でどうせ前には進めません。」

そうキレ返していた。ああ、これは平行線か。


「徹が行きなさい。大丈夫すぐに私も追いつきますから。これでいいんですよね。」

ルナさんもかなりヒートアップしてきた。


「でも、これあれですよね。一度次の階層にいくやつが閉じれば、またドラゴン復活しますよね。ルナさん一人で絶対に倒せませんよね。だから、僕が後から追いつきますから。」

僕も止まることなくそんな風に反論していた。


「それも、無理じゃないですか。こうしましょう。徹。死ぬときも生きる時ももうここまで来たら一緒です。」

ルナさんのその言葉でひとまず、一緒に謎の青年と戦うことを決めた。

その言葉が事実じゃなくとも。


「どちらが逃げるか決めたか。どちらが俺の成長の糧になるか決めたか?」

青年がそういった瞬間に僕はルナさんをルナさんは僕を指さして


「ルナさん(徹)が」

そう声を揃えた。



「はぁ?徹」


「ははは、ルナさん」

知っていた。それなりに長く一緒にいるから分かる。ほとんど特訓をして過ごしていたが、それでもルナさんが自分より僕を優先することは知っていた。


「徹………ここは一緒に挑むってことになりましたよね。」

ルナさんよくそんなことが言えたものだ。


「それは、ルナさんも同じではないですか?」


「…………俺はどっちでも良いが。普通、スッと決めるものだろ。なんで俺が待たないといけないんだ。」

謎の青年は少しまともだった。


「「あなたがいきなり来たのが悪いですよね。」」

多分僕とルナさんの主張のほうがよりまともだと思う。


「二人とも俺の力の糧となるというのか。ははは、では殺そう。」

そう青年が言った。そして青年は肩を回していた。


よし、逃げよう。ベストは、僕がルナさんを運んで二人でダンジョンの下の階層に行くことだ。でも無理なら…………


「ルナさん」

僕はそう叫びながら彼女の手を引いた。


「えっ、徹。」

ルナさんの少し混乱した声を聴きながらも無視をして光る床をめがけて走った。


「二人で逃走か。強欲だな、君たちは。」

青年はそう言いながらあくびをしていた。二人で逃走は無理だな。

光る床の近くまで来ていた僕は、決断した。

ルナさんを信じて、決断した。多分、ルナさんの表情を見るに大丈夫だろう、この賭けは


僕はルナさんを光の床と反対側に押し、自分は光の床に向かって、後方に飛んだ。

それと同じタイミングでルナさんが

「場所入れ替え」

そうつぶやいた。予定通りだ。


それによって僕とルナさんの場所は入れ替わり、ルナさんが光る床の上に乗った。

「僕だけ、逃げようとしたのにしてやられましたよ。」


そう笑って僕が言うと、涙声と怒りの混じったルナさんの

「嘘つき。徹。分かって私を…………」

そんな声が聞こえて、そしてルナさんは消え去り光る床は元に戻っていた。


後悔はしていない。まあ、僕はどうせ死なないのだから、それにたまには格好をつけたいものであるから。


「俺は約束は守る主義だ。それに強欲に、その両方で逃げる可能性を捨てずに自身の主張を押し通す強欲さには敬意を示そう。」

青年はそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「それでは、強欲に一つ聞いてもいいですか?貴方は誰ですか。」


「またつまらない事を聞く。まあ良いだろう。力を求めし強欲なもの、世界を力で救うものそれが俺だ。」

そう青年が言ったが全く分からなかった。でも、まあ、ここから地獄が始まることは分かった。


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