第7話 訓練

木刀を構えてアンナさんと僕は向き合っていた。アンナさんはニコニコ笑っており、全く武道に通じているイメージが無かった。


僕らは、木刀を構えながら数10メートル離れて向き合っていた。

今までした実戦形式での訓練を思い出していた。

内容はシンプルで手加減したアルベルトさんと戦うものだった。まあ一回も勝ててないが、それで、その中で言われて意識しておかないといけない事は、確か『考えすぎないことか。考えることも大事だが動きがそれで停止してしまうのはダメだ。適度に考えろ。まあそれが難しいんだがな。ガハハハッ』まあつまり、とりあえず、まずはアンナさんの動きを見て、考えて。それをしっかりと実行に移す。考えすぎて止まることが内容にしないといけない。


「では、アンナ、徹。準備は良いですか?徹、まあ頑張ってください……」

そう言ってシャーリー様が声を上げた。



「「大丈夫です、シャーリー様」」

そんな声が重なり、


「いざ尋常に勝負」

そんな風にシャーリー様が言った。まずは、アンナさんの……はっ?

始まった次の瞬間にアンナさんを認識することが出来なかった。正確に言えば彼女がいると見ていたところがズレていたのだ。彼女は、始まった次の瞬間には、僕と距離をかなり縮めていた。僕とアンナさんの最初の距離の半分になっていた。違う、もうその瞬間には僕の目の前近くにいて、反射的に木刀を構えたが……


気が付けば手には木刀がなく、空を見上げていた。

…………意味が分からなかった。というかどうして今倒れているのかも良く分かってはいない。近づかれて、僕が認識できないぐらいの速さで何か攻撃されて、うん?


…………何にこの人、つよーー。確実にはなんとも言えないが、僕がこの世界に来て出会った人物の中で一番強いかもしれない。急成長している友人の優斗や僕をボコボコにした月野よりも、訓練をしてくれているアルベルトさんよりも多分強い。なんでこの人メイドしてるんだろうか?もうこれ冥土だろ。言葉遣いにきを使えなかったり、掃除が出来なくて結局僕がしたり、もちろん助けてもらっているところは大いにあるが、メイドするよりも武人にでもなったほうがいいと思う。


「あっ、だ大丈夫ですか?すいません、ああでもこれで良い特訓相手になることが分かりましたよね。」

そう言って倒れる僕にアンナさんは声をかけた。特訓の相手には十分すぎるぐらいむしろ余裕で練習相手になった。……まあ、とらえず相手の実力を測れない僕がまだまだだと言うことも分かった。


「もう、アンナさんが魔王軍?倒せばいいんじゃないですか?」

そう思うぐらいには強かった。すると彼女は笑いながら


「そういうのは1400年前にやめました。」

そう冗談を言っていた。なんで1400年前かは理解できなかった。


「大丈夫だよ、落ち込まないで徹、だってアンナは馬鹿みたいに強いのだから。」

そんな風にシャーリー様は必死で励ましてくれた。まあこのぐらい実力差があると悲しくもないが。


「……それで、とりあえず、アンナさん聞いてもいいですか?」


「何でも聞いてください。徹様。」


そう言ったので僕はこの場で自分のスキルと相手のスキルなどをアンナさんらに話してから。疑問をぶつけた。

「僕は、勝てると思いますか?」


その疑問に彼女は笑顔で。

「分かりません。」

そう即答した。


それに近くのシャーリー様はアンナさんをポコポコ殴りながら

「そこは、勝てるっていうものだぞ。」

そう言っていたが少し僕はそのアンナさんの回答が嬉しかった。勝てないとは言っていないのだ。


「えっと、その理由を聞いてもいいですか?」


「もちろん……ゴホン、もちろんです。まず、徹様の剣術の才能は正直に言って凡庸で、それに加えて練度は足りていません。お相手の実力は知りませんが、そこで勝つことは困難だと思います。スキルは私はそこまで詳しくはないですが、徹様が劣っていると思います。ですが、それで勝負は決まりません。戦いは情報量と工夫と作戦でどうにかなるものですから。まあこれは知り合いが言っていたことなんですけどね。」


「そう、だぞ。徹、頑張って勝つぞーー。でも、『戦いは情報量と工夫と作戦でどうにかなるもの』なんかその言葉聞いた気があるぞ?あれ?」

一人シャーリー様は騒がしかった。


「それじゃあ、」

僕がアンナさんに言いかけたときに彼女は何かを察したのか笑顔で


「ですが、作戦の相談とかはしないでくださいよ。私そういうの苦手なので、なので。でも徹様も何か策があって戦いを挑んだんですよね。それの準備とか練習には付き合いますよ。」

異世界に来てしばらくたって、アンナさんは普段はメイドとして、人として信用はしているし、いい人だと思っているがが、しかし、尊敬をするのほどの部分はなかった。メイドの仕事は、少し雑だし、まあいろいろ雑な部分もあって、手伝うのは楽しかったが、メイドとして尊敬は出来なかった。でもなんというか、大人ってすごいなそう少し感じた。それと同時に自分の語彙力の無さを痛感した。



「私も付き合うぞ。徹、まあ見ておくだけだけどな。」

そう相変わらずな感じのシャーリー様にも少しの安堵感と元気を貰い。明日に向けて少し訓練を行うことにした。まあ、訓練相手のほうが月野よりも強いし、それに2回負けて、負ける恐怖とかも、もう薄くなってきたので、ある意味よい準備になったのかも知れない。

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