第6話 パーティーと因縁

それから、時間は流れて、パーティーの日になった。特に何もなかったが、その間に月野を倒せる可能性があるかもしれない方法を一つ思いついたことと、僕のスキルを使ってちょっとした嫌がらせが出来ることに気が付いた。


嫌がらせの方は、パーティーでめんどくさく絡んできた成瀬に使うことが出来た。まあ非常に下らない嫌がらせである。僕のスキル保存で高温にした液体を常温のコップに入れたとしても、中の液体の温度は変わるがなぜかコップの温度は変化しないのでそれを使って、冷たいコップにあったかいお湯をいれて渡してあげただけだ。案の定、熱いとか言って騒いでいたので効果的であることが分かった。まあ仕方ない、隣のシャーリー様の悪口を言いまくって半泣きにさせた、成瀬が悪いのだから。


他には、武術を教えてくれるアルベルトさんがめちゃくちゃお酒に弱くて潰れて会場の端っこで座っているところを見たことや、優斗を探していた第2皇女を優斗の元に案内したりだとか、それぐらいのことをしながら、姫とシャーリー様とうろちょろして分かった。


パーティーが基本的に暇だってことが分かった。

「パーティーってこんなに退屈なものなんですね。シャーリー様。」

豪華な会場で豪華な食べ物が並びそれはまあまあ美味しかった。

大量のお世辞と異世界転移者、クラスメイト達に対する大量のよいしょがあった。それがわざとらしすぎて、そんな空気に耐えることが出来なかった。


「私が隣にいて、退屈とかいい度胸しているんだぞ。徹」

そう言えば、シャーリー様はいつも着ている動きやすそうな服と異なりちゃんとした豪華なドレスを着ていた。こう見るとちゃんと皇族っぽいな。うーんどうでもいいな、今は。


「シャーリー様は楽しいですか?パーティー」


「……楽しくないに決まっているぞ。うん?そう言えば、アンナは何処に行った?」

シャーリー様は無い胸を張ってそういった。それから一応僕の担当のメイドを、自分のメイドの用に探してそういった。まあそこはどっちでもいいが、しかし本当のシャーリー様の担当のメイドさんは何処にいるのだろう。まあ今はそんなことよりもいつの間にか消えたアンナさんの方だった。


「ああ、さっきまでいたのに不思議ですね。ああ、普通、メイドさんは呼ばないらしいですね、パーティーの場に、でもまあそんなの僕の知ったところじゃないですけど。」

この会場に、パーティーを運営するメイドさんとか執事以外はいなかった。この世界の一般常識だから異世界出身の僕が守る通りなどなかった。郷に入っては郷に従え?知らない、知らない。内気な人間は周りを知り合いで固めたい生物なのだ。


「よし、暇だから料理を食べるんだぞ。もうお腹いっぱい食べたけど。でもそれぐらいかしか時間をつぶす方法思いつかないぞ。」

姫はそう言って辺りを見渡した。


「まあ料理もおいしいですけど、なんか高すぎて口には合わないし、ここは思い切って、部屋に帰り………パーティーから脱走しませんか?」

部屋に戻って本とか読んだほうがためになりそう、ここの皇族や貴族から話を聞けば、この国のことが分かるかもしれないが、まあどうせくだらない機嫌取りをされて終わりなので、そんな話を聞く気にはならなった。


「……流石にまずいぞ、徹。皇帝陛下の挨拶が終わってないのに帰るのはまずいぞ。本当にそれだけはまずいぞ。」

ああ、そういうもんか。怠いな、めんどくさいなこういうの。死んでも、生まれ変わっても貴族や皇族にはなりたくない。ここまで姫がいうのだから多分よっぽどまずいことなのだろう。


「そんなまずいことなんですか?絶対たいく……すいません父親の悪口を言いかけてしまいましたね。」

彼女は皇女なのだから、酷いことを言ってしまった。


「大丈夫です。あんなやつの悪口いくらでも言ってくれても大丈夫だぞ。」

どうやら親子関係はあまり良くなかったらしい。そんな事を話していた皇帝陛下の挨拶が始まりそうだった。


少し後ろのほうではっきり、見えないが皇帝陛下は見た目は50代程度に見える。隣の姫と多少は似ているように見えた。

「異世界から来た勇者の諸君、挨拶が遅れてすまない。それから」

そういうと皇帝陛下は両膝をついて土下座をして

「我々に、我々に力を貸して欲しい。」

そう叫んだ。皇帝陛下の周りの陛下は、陛下の土下座を止めようとしているのを無視して頭を下げながら言葉を続けた。


驚いた、普通に驚いた。ここまで本気で頼んでくるなんて。どうやらいろいろ僕が悩んでいたのは杞憂だった……


隣の姫の表情は何故か険しくて

「おかしい……あんなことする人じゃない。おかしい怪しい。私の母様が死んだときも、表情を一つ崩さなかったのに、おかしい」

姫の真剣な口調で考え直した。少なくともよく知らないおじさんの言葉より、仲良くなった中学生ぐらいの少女の言葉が信用できた。


そん中でクラスメイトの一人が

「皇帝陛下、お顔上げてください。俺が勇者であるがこの国をこの世界を救ってあげましょう。」

どっかの成瀬の声だった。


また他のクラスメイトが

「選ばれし俺がこの世界を救ってやるよ。」

どっかの月野の声だった。

それがきっかに多くの生徒が


「そうだ、私だって」

「もちろん、任せてください」

「やるぞおお」

「そうだ、そうだやるぞ。」


何か異様な狂気の渦に包まれるように多くの生徒が声を上げて、それに賛同するように周囲の人物が声を上げた。


「ありがとう。勇者の皆さん。」

そういった皇帝陛下の表情が一瞬笑ったように見えた。しかし、その後、見ると感動かなにかの涙で崩れた表情だったから、それはたぶん気のせいだと思うが……ただ、やはり何かがおかしい気がしてきた。ただ、この異常な状況で呆然と立ち尽くしていた。


そこに優斗は駆け寄って来た。

「徹、おかしくないか?いや、徹。君はあまり社交的ではないから、知らないかもだけど。最近までクラスメイトのほとんどは戦うことにかなり消極的だった。それなのに、急に……こんな風になるのは」


マジかよ。やっぱりおかしいじゃん。

「寺坂くんに優斗、私も世界救えるかな?」

そこにやってきた相川さんが言った。この世界に来て泣いていた彼女がそう言ったのだ。おかしい何かがおかしい。


そんな時に声が響いた。それはクラスメイトの月野の声だった。

「皇帝陛下、選ばれし俺と使えないゴミどもが一緒に一緒の異世界から来た勇者にされるのは腹が立つのでここで掃除をさせてください。」

辺りがその言葉で凍り付いた。


クラスメイトのいつも明るい生徒が

「月野、ゴミって俺らの事か?まさかな」


「そうだよ、ゴミ。じゃあ。まずは、お前からか。俺がゴミ掃除をしてやる。」

そう月野が言った。何か性格の崩壊具合が悪化していた。それを遮ったのは、成瀬だった。


「月野君、君は間違っている。確かに彼は才能がない可哀想な人間だが、だからこそ選ばれし俺らみたいな存在が保護してやる必要があるんだよ。」

こちらもなかなか最低だった。


「二人とも何を言っているんですか?みんな平等に仲間じゃないないですか。」

そうその二人に委員長が反論した。


「「黙れ」」

そんな力を持った小学生のような人々が叫んだ。それを見て優斗が声を上げようとした。それを静止した。まあここは少し僕に譲って貰うことにした。


まず近くでただ茫然としている姫に

「僕が何かあったら、個人的に雇ってもらえますか?騎士とか良くわからないですけどさせてもらいますか?シャーリー様。」

そういうと彼女は無言で頷いた。これで、ここを追い出されそうになっても安心である、これで月野に勝つための低い可能性を実行することが出来る。


「僕らクラスメイトがゴミかどうかは、僕と試合でもして確かめてみるか?月野。君の言うゴミかどうかの判断は強さでだろ、じゃあ、もし君がゴミという、クラスメイトの一因の僕に負けたらどうする?」

そう声を張り上げた。


「……まだ生きていたのか?お前はもう選ばれし俺様にボコボコに敗北しただろ、でしゃばるなゴミが。」

まあ負けたのはそうなんだけどさ。まあ


「負けるのが怖いのか?」

まあ自尊心の塊に対する挑発としては十分だった。


「ゴミが。もう一回、もう一回ぶっ殺して見せしめにしてやるよ。」


「勝負は明日の夕方、正面から正々堂々と不意打ちなしで行こうぜ。」

そういってこの場を僕は去ることにした。まあそうだな、これで負けるとかなり恥ずかしいし、みじめだ。そうなんだけど、たぶん勝てる可能性のほうが低いんだよな。さて、準備をしないだな。もう少し時間に猶予を求めれば良かった。



「カッコイイですね。徹。」

そうシャーリー様が僕に話しかけてくるので


「それは、普通にセンスが悪いと思いますよ。シャーリー様」

そんな風に返して軽く震えながらパーティー会場を後にした。


とりあえず、姫を部屋に送るために歩いているとなぜか息を軽く切らしているアンナさんと出会った。


「何してるんですか?」


「ああ、いえ少し野暮用があって、申し訳ありません。それでなんでお二人は会場の外に?」

どうでもいいけど、アンナさんが息を切らしているのを初めて見たかもしれない。


「それは、パーティー会場に居づらくなったからですね。」

そう僕が言うと隣の姫が事の成り行きを説明していた。


「それで、なるほど、徹様。訓練の相手ならできますけど」

話を聞いて、いつの間にか息を整えていたアンナさんがそういった。


「いや、でもアンナさんメイドさんですよね。」

ありがたい提案だったが、流石に訓練の相手として適当だとは思わなかった。


「まあ、そうだけど、そうですが。私はメイドの仕事より武道の方が自信があるので、疑わしいなら一戦試合をしますか?」

それはどうかと思う。自信があるならそれなりの実力だろうし、まあ僕の今の実力を把握するのにいい機会かもしれないし、彼女の提案を快諾した。


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