第2話 異世界王宮生活の始まり1

目が覚めると次の日だった。どうやら本を読んだまま寝ていてしまったらしい。まるで金曜日夜遅くまでゲームをして土曜日に起きれない学生のような動きを異世界でしてしまった。

ああ、ゲームしたいな。それから、家族は心配しているのだろうな、ということを思いつつも、思っていても何も変わらないので動くことにした。とりあえず一応、昨日のポットを見てみたが中身はもうすでになかった。寝落ちする前に確認しておけば良かったな。スキルの確認は出来なかったがまあそれは仕方ないか。


「……あのアンナさん。朝ごはんってどうなっているんですかね?」

腹が減っては戦は出来ない。今日は何をするかは知らないが、とりあえず二冊の物語(多分神話)を読んで、少し分かったことがあるからそのことを優斗と共有しておきたいな。


「ああ、えっと食事はダイニングルームで食べることは出来るのですが…厄介な……面倒な……高貴な方が部屋に乱入してきていまして、流石に一人で放置することは出来ないので。」

そうアンナさんは、下手したらクビになりそうな発言をしつつ少し苦笑いを浮かべた。


「邪魔しているぞ、異世界のもの。私は第三皇女エル=シャーリー分けあって逃げているのだ。」

アンナさんとは仲が良いのか、彼女の発言を気にも留めずに昨日の第1皇女と少し似ている12歳ぐらいの少女がそう言ってくつろいでいた。


「ただ、今日勉強がしたくないから隠れる場所を探していただけですよね。シャーリー様……」

あきれつつアンナがつぶやいた。


「ちちち違うのだ。」

そう皇女は言った。なるほど、勉強から逃げてきたのか、この子。


「それでどうなさいますか?私は元々シャーリー様を担当していたので匿ってあげたいのですが?」

皇女ね、この国のことを知れるかもしれないしな……

断る理由もパッと浮かばなかったのでそのアンナさんの提案を受け入れることにした。まあでもタダで匿うというかこれは匿うでいいのか良くわからないが、タダでは何か損をした気分になるので条件をつけることにした。


「いいですけど、一つ頼みを聞いてもらってもいいですか?」


そう僕が言うと姫は、何故か、少し慌てた。それからしばらくして侮蔑の目を僕に向けて

「ロリコン」

そうつぶやいた。どうやら想像力がたくましいらしい。


「いや、違います。ただこの国とかのことを知りたいだけなので。姫様から見た、この国の話でも聞きたいと思っただけなので」

僕はロリコンではなかった。


「……ほっ本当なのか?」

本当以外の何物でもなかった。


「本当ですけど。」


「…………それぐらいならよいぞ。」

彼女は少し顔を赤くしてそういった。なんでこの人は初対面の僕の前で自滅しているんだろうか?それをアンナさんはゲラゲラ笑いながら放置しているのもなんなんだろう。


「それでは、徹様。朝食は私が用意させていただきます。それと今日はシャーリー様のおもりがあるので、申し訳ないのですが、一人で訓練所などに行ってもらってもよいですか?」

あまり良くはなかったが、まあ皇女は仲良くしておくメリットしかないしとりあえずクラスメイトでも探して行くことにしよう。


「分かりました。ではまあ朝食をお願いします。」

アンナさんのメイドの適性の無さからひどいから少し不安だったが、しっかりとおいしい朝食が出てきて安心した。まあおいしかったが、なんか王宮的なところで食べる感じのごはんではなく、大衆食堂とかで食べるようなものだった気がしたけど。おいしいのでもはやどうでも良かった。それから今日行くべき場所のことをしっかりと教えて貰った。何をするかはどうやらよく分かってないらしい。



そんなことでいろいろあって、なんか皇女が部屋にやってくるっていう主人公ムーブを行ったが良いが。普通に訓練所に行けるかは不安だった。


案の定部屋を出て少し迷った。

そしてなんとかしようとして適当に歩き回ったせいあって今何処にいるか全く見当もつかなかった。

「迷子かよ。」


異世界に行って迷子とか。姉貴に言ったらめちゃくちゃ笑われそう。ああ、なんか、そんな横暴な姉すらも異世界に来て会えないと思うと悲しい気持ちになる。まあそんなことよりも迷子な方が問題だった。


「寺坂さん、こんな所で何をしているんですか?多分目的地と逆走していると思いますよ。」

下を向いて徘徊している僕にそんな風に声をかけたのはクラスメイトだった。まあ、この状況では救いの神か。


「委員長、ああいろいろあって迷ってしまって、何処に僕が向かえば良いか分かりますか?」

彼女はうちのクラスの委員長で眼鏡で三つ編みという真面目そうな見た目をしていて、真面目で面倒見もよいからまさしくクラス委員長って感じだった。


「もちろん大丈夫ですよ。」

まあ断られるわけなかった。でも何というか面倒見が良すぎる人も少し怖いものである。それを言った優斗もか。気にするだけ無駄だな。


「良く1人で場所とか分かりますね。すごいですね委員長。」


「すごくないですよ。ただ昨日あらかじめ王宮内を案内して貰って場所を把握しているだけですよ。」


ああ、確かに昨日そういうことも出来たのか。かなり感心した。

「すごいですね。そこまで頭が回りませんでしたよ。」


「急に異世界に来て、帰れなくなって、みんな不安だよ思うから、私に今できることからして置こうって思っただけですよ。」


そんな無駄話をしていると以外にもすぐに訓練所についた。道のりは結構まっすぐだった。

……もしかしたら僕は方向音痴だったのかもしれない。でも可笑しいな、流石にこんなシンプルな道のり間違える気がしないんだけどな。動揺しているの?自分が気がついていないだけでどうやら異世界に来たことに内心、動揺しているらしい。


「おはよう、寺坂くん。あれ?委員長と一緒って珍しい組み合わせだね。」

先についていた相川さんが軽快にそう声をかけた。声や態度は元気そうだったが、目が少し赤く腫れていたので、彼女が昨日家に帰れないことに泣いていたことがさすがの僕にでも分かった。まあ、でもここは、強がっている彼女のことも思って触れないでいつも通り接することにしよう。


「おはようございます。相川さん。ああ、迷っていたところを助けて貰ったんですよ。」


「そうなの?迷ったの?大丈夫?てか、同級生だよ、寺坂くん。タメ口で良いのに。」

朝からテンションを無理ありあげている彼女は明るくそういった。


「昨日も言いましたけど。まあ僕は誰にでも敬語なので」

そんないつもの会話をすることで少し日常を思い出した。そんな会話をしていると気が付けばさっきまでいた委員長はいなくなっていた。軽くお礼を先に言っておけば良かった。


「もう、またそんなこと言って。それはおいておいて、訓練ってどういうことするのかな。」


確かに訓練って何をするんだろうか?多分、僕こういうのあまり得意ではないんだよな。『知らないです』そんな風に答えようとした時に優斗がやってきた。

「訓練は基本的に4人1組で行うらしいな。うちのクラスは31人だから8グループに分かれるらしい。分けるのは自分たちで決めていいって」


「じゃあ、僕と優斗で二人は決まったな。」


「私はどうした。寺坂君、おーい」


「まあ徹はそういうこというやつだから。相川さんも含めて3人だな。」

優斗がそうにこやかに言った。まあ相川さんはまだ仲が良いほうなので、まあよしとしよう。しかし、三人になると優斗にいつこの国が少しきな臭いって話をするかを考えないといけない。相川さんに言うと流石に精神的にやられそうだからな。


「じゃあさ、二人とも私の友達呼んできてもいいかな?」

相川さんがそういうと優斗は即決で「大丈夫」と答えていた。まあ僕が喋らなくても相川さんが話すだろうから関係ないし、そう思い僕も首を縦に振った。


「じゃあ、呼んでくる。」

そう言って彼女は小走りでこの場から一時離れた。


そうか、今がチャンスか。

「なあ、優斗あとで相談したいことがあるんだが。」


「何?徹。徹がどうやって相川さんに告白するとか。」

優斗と相川さんが付き合うのは時間の問題だと思っていたが、どうやら優斗はかなりにぶいらしい。相川さんが相談してきたときに、普通にしてれば上手くいくと思うよ、なんていった頃の僕はどうやら間違っていたらしい。まあ……ある意味よかったのかも知れないが、ややこしい心境である。

まあ、そんな的外れな返しをする優斗に少しあきれつつ


「普通にこの国について気になることがあるから情報を共有したいんだけど。」


「ああ、そういうことな。じゃあ、この訓練が終わった後に俺の部屋に来ればいいよ。俺の分かったことを情報共有するか。」


「それでいこう。」

まあ異世界で何があろうとも優斗と協力すればそれなりのことだったら何とかなるだろう。


「二人とも連れてきました。辻堂 麗ちゃんです。」

そういって相川さんが戻ってきた。もちろんクラスメイトなので知っていた。

「よろしくお願いします。」

辻堂さんはそう言って頭を下げた。



「知ってる。クラスメイトだから。」

そう僕が言うと相川さんは


「そういうことじゃないじゃん。」

そんな風に睨みつけてきた。そんな様子を見ながら辻堂さんはクスリと笑っていた。


「とりあえず、そんな口論は後でも出来るから、みんな集合しているみたいだし。とりあえず集合して訓練が何かを聞きに行こうか。」

その様子を見ながらそうまともなことをいう優斗の言葉に従うことにした。

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