クラス転移で得た、スキル『保存』がハズレだと思っていたけど、実はかなり強いらしい

岡 あこ

異世界転移と追放的なものは多分セット商品(プロローグ)

第1話 異世界転移

「おはよう、寺坂くん」


寺坂は僕の名前だ。寺坂 徹 多分、何処にでもいる、いや、何処かにはいる。クラスの中間ぐらいに位置するただの高校生1年生。退屈そうに眠そうにいつもしているただの一般人である。


「おはようございます。相川さん。」

そんな風に隣の席の相川さんに返事を返した。彼女はクラスのマドンナ?的な存在で誰にでも優しく、まあ容姿も低身長で可愛いらしかった。まあ、その容姿がなくてもクラスの人気者であっただろう誰にでも分け隔てなく接する優しい人物だった。


「同級生だよ、寺坂くん。タメ口で良いのに。あれ?これ昨日も言ったけ?」


「言いましたけど。まあ僕は誰にでも敬語なので」

そんな風に返した所に友人でイケメンな神崎 優斗がやってきた。まあこの2人が付き合うのは………時間の問題だと僕は予想している。


「おはよう、徹」


「おはよう」


そうタメ口で返すと隣の席の相川さんは少し口を膨らませて

「今タメ口でしたよね。嘘つき。」

そんな風なクレームを言ってきた。そんな朝の少し無駄話をしている時だった。

教室の床が光った。





「えっ」「きゃあ」などの悲鳴などが重なった頃にはもう教室は光に包まれていた。

そして次の瞬間にはストンドグラスなどが目に映った。気づけば教会の様な場所に僕らはいた。



クラスメイトは、恐怖なども振り切りただただ全員茫然としていた。良く見ると周りには中世の西洋の騎士を思わせる様な服装の人や貴族を思わせるような人がいて、そしてこれが夢であるのだなと勝手に自分で解釈した。


しばらくして、明らかに身分が高そうな人がやって来て、言葉を発した。


「混乱されていると思いますが異世界からきた勇者の皆様。私の話を聞いてくれませんか?」

その言葉で、ショックで思考を停止していたクラスメイトの思考が動き出して混乱が広まった。


「ねえ、2人とも何これ?」

そんな風に相川さんが僕と優斗に目をパチクリさせながら話しかけてきた。


「分からない、と言うか分かりたくない。夢であって欲しい」

そう僕が告げると優斗は自分で自分の腕をつまみ


「痛いから夢じゃないっぽい。どうやら異世界に来たっぽいな。」

そう少し乾いた笑いを浮かべていた。


「つまり、異世界って事は違う世界だから。家に家族に会えないって事だよね………それは、何と言うか。えっと」

飲み込みが早いのか、状況と現実を受け止めて少し絶望した相川さんは少し涙目になっていた。僕も涙は出なかったが、この状況はかなり、しんどかった。でも


「「とりあえず、話を聞いてみるしかない。」」

そんな風に優斗と声が重なった。その声は自分に強く言い聞かせる物であったためか、かなり大きな声になっていて、その声でクラスメイトの混乱は少し止まった。


それでも泣いている人や、震えている人、強がっている人、何故か喜んだいる人様々な様子が見てとれた。


そんな中で身分が明らかに高そうな人が

「私はこの国、エル帝国の第一皇女 エル=モミザです。皆様にはこの国のいえ、この世界の危機を救って頂きたいのです。」

そんな風に話し始めた。


いくつかの話を簡単に整理すると多分こんな感じだろう。

・予言の年に魔王が復活して世界を滅ぼすために動き出す。

・魔王を呼ばれる存在は定期的に現れるが今回は想像を絶する力を持つらしい。

・予言の年は正確には分からないが、これから5年以内だろう。

・予言によるとそれを止めることが出来るのは異世界から来た勇者のみ。

・勇者の僕達には通常よりも強いスキルが与えられているらしい。

・スキルはステータスオープンと念じると分かるらしい。

・異世界から勇者が来るのは2回目で1回目は、400年前程度らしい。

・手を貸すか選ぶのは僕達らしい。ただし、戻るには最低5年はかかるらしい。

・結論はすぐに出さなくても良いが、最低限の訓練はしてもらう。



その話の後で、今日はゆっくり休んで貰うと言うことを言われてそれぞれ部屋に案内されることになった。そんな中で最後の方まで残った相川さんと少し話をした。


「ねえ、つまり生き延びれば、元の世界に帰れるかもってことだよね。」

そう相川さんは少し笑顔で言ったが、そんな風に都合が良く行く気もしなかった。


「まあ……‥それを信じるしか無いと思いますよ。」

ただそう言うしか無かった。


「まあ、だよね……」

相川さんも分かっていたのか悲しそうにポツリとそう呟いた。その彼女のいつも見せない悲しげな表情が印象的で、異世界に来た少しの絶望感を感じた。



案内された部屋は1人で使うには少し広いぐらいの部屋で、内装もかなり豪華だった。部屋にはメイド服を来た金髪の綺麗な20歳前半に見える人物がうたた寝をしていた。


「えっと…………」

言葉に困った。これはどう言うことだろうか?


しばらく茫然と立っているとその女性は目を擦りながらこちらを見てしばらく硬直した後に何事も無かったかのようにキリッとした表情で

「異世界から来た方ですよね。アンナと申します。お困りの事があったら何なりとお申し付け下さい。」

そう言った。凄い図太い人だった。


「今寝てましたよね。」


「………瞑想をしていました。そんな事よりも紅茶なら用意出来ますけど。」

僕の質問に堂々とそう返すアンナと呼ばれるメイドさんはやはり図太そうだった。



まあ、とりあえず紅茶を貰う事にした。この異世界に来てトントン流れでここまで来た事はとりあえず忘れて、いろいろ騒いだり悲しんだりする事は後でする事にして、今の状況の整理をする事に決めた。だから何かスキルと呼ばれる物を確認する事にした。


ステータスオープン

スキル1 保存

スキル2 無限魔力 

スキル3 無し

スキル4 無し


なるほど全く分からない。スキルは4つあって、それで僕は2つしか持っていないって事か?それでスキルの内容は分からないとなるほど、なるほどな。


「何これ意味ないじゃん、何も分かんねえよ。」

思わず声を上げてしまった。


「急にうる………どうなさいましたか?急に大きな声を上げられて。」

そう部屋で一緒に紅茶を飲んでいるメイドのアンナさんが呟いた。この人は多分メイドに向いていないと思う。僕は別に良いけど、普通は紅茶を淹れて何も言わずに一緒に呑み始めたりするあたり、何でこの人雇われているか。とても不思議だった。


「ああ、えっと、スキル?の事が知りたいんですけど。分かったりしませんか?」

聞いても無駄な気もしたがそう尋ねると彼女は立ち上がり奥から数冊の少し分厚い本を取ってきた。


「ああ、本があります。と言っても私の私物ですから、そんなに凄く詳しい物は無いですけど。簡単な情報なら知る事が出来ますよ。」

何故そんな私物の本を持っているかは謎だったが、ありがたく借りる事にした。文字が読めるか不安だったが、言葉が通じている以上大丈夫だろうと考えた。それは予想通りで、文字は普通に読めた。多分スキルが手に入って(良く原因は分からないけど)その時に翻訳能力なんかを手に入れたのだろう。


本は全部で4冊あり

スキル辞典、世界地図とダンジョンについて、創世神話、予言の書

前半二つが辞典で後半2つが、物語の様だった。



「しばらく借りても良いですか?」


「もちろん借りて大丈夫です。ですが、しっかりと返して下さいね。」

そう言って一礼して再び座り紅茶を飲み始めた。

とりあえずスキルの本で自分のスキルとかでも調べる事にしよう。


それは、本というよりかは辞書のようなものでかなり分厚くて質量があるものであった。とりあえず初めに簡単なスキルというものの説明があったので読むことにした。



スキルについての概要 著者不明 スキル辞典から

 スキルとは、この世界にいる人間・魔物などの生物が4つまで所持することが出来る能力。基本的には状況に応じてスキルが新たに発現したり変化したりする。スキルを使用するには魔力と呼ばれるものが必要であり、その魔力量は人によって異なり、またスキル使用時の魔力量もスキルによって様々なことが分かっている。スキルの強さはその練度などによって同じスキルでも評価が変わることや、所持しているスキルの相性などによって変化するが、この本の中では基本的な一般的な場合におけるスキルの強さについて記述しておく。


まあ、あんまり良くわからないが僕はあと2つスキルを得ることが出来るってわけね。僕がいつ魔力などというものを手に入れたかは不明だが、多分それはなんかもっているのだろう。まあ、もっと詳しい本でも見つけて調べてみるしかないかな。とりあえず、自分のスキルを調べるか。僕のスキルは保存と無限魔力か。とりあえず明らかに強そうな後者から調べることに決めた。


スキル 無限魔力 (スキル辞典より)

文字通り無限に魔力を与えるものであり効果は永続的である、つまり他のスキルが無制限に使えるものである。スキルの強さは他のスキルに依存するが基本的に強いスキルであるとされる。しかし、スキルが無限に使えることにメリットがないようなもの、常時発動しているスキルでは特に意味を持たないことからこのようなスキルを持っているスキルとは相性が悪い。


つまりこのスキルは、これから僕が得るスキルと保存ってスキルによって意味があるスキルかないスキルかが変わるということか……すべてはもう一つのスキルに託された。


スキル 保存 (スキル辞典より)

魔力の続く限り状態を保存できるスキル。スキルを使用したい対象を指定することで発動する。戦闘性能は皆無だが、氷を解けないようにするお湯の温度を下げないようにするなど実生活では役に立つスキルである。


なるほど、僕は絶対に戦わないことを決めた。こんなの無理である。僕のスキルで魔王軍?と戦うのも無理なことだし、絶対に死ぬ。まあ、でも物は試しなので、とりあえず紅茶のポットで試してみることにした。……指定するって声に出したほうがいいのかな?まあとりあえず、声に出さずにスキルを使ってみようか。そう思い手でとりあえずポットに触れると『スキルが発動しました』そんなアナウンスのようなものが頭に流れた。なるほど、これすぐに成果が分からないじゃん。


そんなことで暇になったので残り3冊に目を通すことにした。世界地図とダンジョンについては文字通り世界地図とダンジョン(よくゲームや物語で見るのと大体同じやつ)についての説明が書かれている本であり、ざっくり見た感じこの世界には3つの大陸があり、ここが勇者大陸と呼ばれている大陸で、この世界に人族、魔族、獣人族、エルフなどさまざまな種族がいて、ダンジョンと呼ばれているものは有名なものが7つあるらしい。まあこの本は後で詳しく読むことにして(情報が多すぎるし)他の2冊に目を通すことにした。残り2冊は読む必要がない気もしたが、まあこの世界の伝説を読んでおくともれなく魔王とか元の世界への帰り方でも分かるかもしれない。そう思い二冊を読むことにした。


まあ時間はあるし、読書は好きだし、今僕に出来ることは目の前にある本を読むことぐらいなので、まあこの国が実は黒幕だったとかいう、転移系の王道パターンとかについては後で考えることにして、眠気がやってくるまで読み続けた。


 

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