203号室 林太光之(1)

 203号室の住人林太光之はやしだみつゆきの部屋は今日の晴天にも関わらずほとんど真っ暗闇だった。

 それはカーテンが締め切られているだけではなく、窓全体がダンボールとガムテープで目張りされているからである。ただそのダンボールも所々劣化したり、叩いたか蹴ったか何かが齧ったかで穴が空いている箇所があるため、そこから漏れる薄明かりを頼りにしばらく目を凝らせば、うずたかく積み上げられたゴミ袋や本の山、液体が入ったままのペットボトルの輪郭だけがかろうじて見えてくる。


 その暗くじめじめとした山の窪みに、なにか黒い塊がモゾモゾと蠢いている……。

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