第8話 行き先はヘブル連邦
「そうだったんですね。僕には兄や姉、また弟や妹が居ないので分かりませんが、家族が離れて行く事は悲しい事です。もしかしたら、これから数年、数十年と長い時間をかけて、いつか弟さんがシリアさんの元へ戻ってくれれば良いかな?って思います。」
僕は自分でも何を言っているんだろうって思う。でも、なんかいつかシリアさんの弟さんが帰ってきそうな気がする。おまけにひょっこりと帰ってきそうな気がする。
「そうね。泰虎が言うなら、そう信じて待ってみようかな?でも、私が皺くちゃのお婆ちゃんになって弟が帰ってきたから、この剣でぶっ叩いてやるかな。」
「それは流石に怖いですよ。」
僕は苦笑いを混じらせながら言うとシリアさんの顔は思い詰めた顔から何処か吹っ切れて前を見詰めて歩き出した人の様な顔をしている。
だけど、この和らいだ雰囲気をブチ壊すかの様に豪華客船内で突如として警報が鳴り響く。
【ジリリリリリリリッ!!警報、警報!ただいま遠くより海賊船を発見!繰り返します。海賊船がこの船に向かっております。お客様は至急、安全の為、我々の指示の元、至急落ち着いて避難してください!】
「お嬢!」
「シリア様。」
警報と同時に急いで駆け付けた爺やさんとアーニャさんが勢いよくドアを開けるとシリアさんは黙って頷きながら部屋を出る。そしてシリアさんは僕達3人に指示を出す。
「泰虎、爺や、アーニャ。客船内の乗客の安全を確保しながら海賊を迎え撃つわよ!」
「はい!」
「ハッ!」
「はい。」
シリアさんを先頭に僕達は豪華客船から外に出て地平線を見たところドクロにピエロの旗と帆を張り巡らした海賊船が3つこちらに向かってきているのが分かる。
「アレはオーギュスト(愚かな道化)海賊団。」
「最近、巷を騒がせる海賊団の様子。なんでも一般の商業船や豪華客船を狙って物資を盗み出す様ですの。」
「なんか、ピエロのペイントをしたのがいます……」
「どれどれ。」
僕はアーニャさんから望遠鏡を受け取ると船のど真ん中で如何にも船長って感じのピエロのペイントをした海賊が1人。さらには何かキメラの様な猛獣使いと太刀を携えた剣士が1人と幹部らしき人もいる様子。
「シリアさん。どうやって撃退しますか?」
「うーん……」
まずはオーギュスト海賊団の船にどうやって乗り込むかが問題だろう。僕達の船から海賊船までは距離があるから僕のスキルであるシュリンゲジ-縮地-だと距離が遠すぎる。
奇襲には小型のボートで行くしかないけど、周りを見た所、乗客の避難に小型ボートが使われている為、恐らく小型ボートは僕達にも廻せないし、死角となる物陰がないから奇襲が難しい。
【フェフェフェフェフェッ!!この船の物はこの俺様オーギュスト海賊団の船長である道化のヨッキーがもらう!お前らすぐさま避難しろ~!こう見えて人殺しは嫌いなんだ。】
スピーカーを使い怪しい笑い方をしながら真正面から僕達の船に向かって言ってくるのがオーギュスト海賊団の船長であるヨッキーだ。海賊らしくない意外にも人殺しは嫌な様子。
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