第8話 行き先はヘブル連邦
「ねぇ。泰虎。」
「はい?」
「女が貴族の領主で国家の裏の番犬をやってる事は変じゃない?」
「変っていうより僕自身は凄いと思いますよ?」
「そっか~……泰虎は凄いって思うのかぁ。」
「急にどうしたんですか?」
今のご時世は男性は外で働き、女性は家を守るって言う古臭い考えは無くなってきてるし、むしろ女性が社会に出て活躍する事は微笑ましい事だし何か可笑しな事なのだろうか?
「ローズ・アント家。まぁ私の家系はね騎士であり、貴族であり代々国家の裏の番犬として受け継がれてきてね。」
「確か前に聞きましたね。」
「本当はその領主って言うか家督は私ではなかったのよ。」
「それはどういう事ですか?」
「本来はローズ・アント家の家督は長男が継ぐと言うのが先祖代々と言われてきて、その家督は本来は私の弟が継ぐはずだったのよ。」
「……」
初めて聞くローズ・アント家の事実。そしてシリアさんから今まで僕が不思議には思ってたけど敢えて聴けなかった真実が語られる。
「私には少し年の離れてた弟が居てね。剣の才能はあまりなかったけど、頭が良くて優しくて領民思いの気遣える子だったの。」
「年はどれくらい離れてたんですか?」
「私とは6歳離れていたから大人になってれば、ちょうど泰虎くらいかしら。でも弟は生まれた時からローズ・アント家を継ぐ運命だったから、今は亡きお父様やお祖父様も騎士になる為の剣術や騎士道精神を学ばせてたのよ。でもね……やはり剣術だけはどんなに努力しても苦手みたいで、周りからはローズ・アント家も終わりだって噂されてたのよ。」
「……」
「もちろん。私もお父様やお母様とか他の家族はそんな事は思ってなかったわ。大事な家族ですもの。だけど領民の心無い大人達が噂していただけなの。でも、弟はそれを聞いてしまってから塞ぎ込んでしまってね。」
「……」
「それから、ある日ね。弟は1枚の書き手紙を置いて出ていてしまったのよ。『もう疲れた。探さないで下さい。』って……」
「つまり家出をしたという事ですか……」
「えぇ、すぐに警察に捜索願いや身内でも探したけど手掛かりが1つも無くてその間にお祖父様は他界して私が成人する前にお父様とお母様は流行病で亡くなって、実質ローズ・アント家を継いだのは唯一の血筋である私。」
「そう言う事でしたか。」
「本来だったら私は見た事もない顔の貴族の家に嫁入りするはずだったけど、ローズ・アント家の跡継ぎとして、また国家の裏の番犬として生きる事を私は決めたわ。初の女性が上に立つのも悪くはないって思ってる。だけど心残りは弟の事だけ……生前もお父様もお母様も弟の事だけはずっと気に掛けていたから、死んでも死にきれないって爺やに本音を漏らしていたわ。」
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