第7話 竜騎士の乙女

なんだか僕とユーリさんでジィジの話で盛り上がっているとブスーっとしながら詰まらなさそうな顔をしたシリアさんがご機嫌が悪い様子。


「どうした?シリア。大好きなダーリンがウチと楽しく話しているもんだからヤキモチ妬いたのか?」


「ち、違うわよ!バカ……」


するとシリアさんは椅子から立ち上がりズカズカと食卓から離れて行ってしまった。


「やれやれ。昔から強情というか意地っ張りはならないようだ。悪いな少年。少しシリアを慰めてやれ。」


「少し行ってきます。」


僕も椅子から立ち上がり食卓を出てシリアさんを追いかける。


食卓を出て大理石で作られた渡り廊下を見るとシリアさんは膨れっ面で月を眺めていた。


「シリアさん。」


「なによ?」


ヤバイ。まだ機嫌が悪い様子。


「あ、あの……。」


「別に泰虎が悪いわけじゃない。」


「でも……。」


「私が大人げなかっただけ。だから……。」


シリアさんは僕に抱きしめるとシリアさんの柔らかい肌と優しい温もり。脈打つ鼓動を感じる。


「泰虎だけは何処にも行かないで……」


「何処にも行きませんよ?ここ以外は帰るところはないですし。」


「バカ……違うわよ。」


「すいません。」


こうやって僕はシリアさんの気が済むまで抱きしめられてから先に大浴場のお風呂でゆっくりと湯船に浸かる。


「明日も朝が早いなぁ~。確か明日は領土の穀物の収穫や供給の報告を聞いて纏める仕事かぁ~。同じ姿勢だから肩が凝りやすくなるんだよね。」


僕は身体を湯船に沈めて口元まで湯船に浸かり独り言を続けて呟く。


「その後、武芸の稽古に野生動物の狩り。結構仕事があるなぁ。」


貴族の生活って華やかなイメージがあるけど、それなりに責任ある立場であり社交的でなければ勤められないって最近はそう実感している。


まだ慣れないせいもあるのだろうか少し疲れ気味だったりするし、ゆっくりと湯船に浸かってから早く寝ようかな。


「それにしても、いつ見ても広い浴場だな。」


「そうかしら?私はいつもだから慣れちゃってるけど。」


「ウチは基本的にシャワーで済ましてるからな。」


「ダメよ。ちゃんと湯船に浸からないと疲れが取れないのよ?」


聞き覚えのある声に僕は物陰からそっと覗くとシリアさんとユーリさんが産まれたての赤ちゃんの様に一糸纏わぬ姿で浴室に入ってきた。


ちょ……ちょっと、どうしよ?こんな姿で見られたら僕は完全に変態扱いだよォォオ!


待て待て、落ち着け。落ち着くんだ。寺島 泰虎。何か、この危機的状況を脱出して穏便にかつ迅速に対応するには冷静さが必要だ。


だけど出入り口は1つしかない。どうしてもコッソリと抜け出すにはシリアさんとユーリさんと鉢合わせにならなければならない。


そうだ。思い付いたぞ!僕のスキルを使えば良いんだよ!


僕のスキルディストラクション-気配消し-を使う事で湯気で周りの視界はあんまり良くない。僕が相当ヘマをしなければ穏便にかつ迅速に危機的状況を抜けられるんだ。


「ディストラクション-気配消し-。」


僕はスキルを唱えてゆっくりと物音を出来るだけ立てずに湯船に上がり、抜き足、差し足、忍び足でユックリとスキルを発動させているのかシリアさんとユーリさんは僕に気が付かない。

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