第7話 竜騎士の乙女

簡単に言えばワガママや贅沢は言えないと言う感じだ。


「お待たせいたしました……。」


表情を何一つ変えずクールな顔をして、か細い声のメイドさんであるアーニャさんが料理を運んで来てくれる。


「おぉ!アーニャ。久し振りだな。また大きくなったな!」


「いえ……私はまだまだ……。」


アーニャさんはユーリさんの料理を置いた後、調理場に戻りながらアーニャさんは胸をさすりながら少し悲しげな様子。


あっ、アーニャさん。自分の胸が控えめなのを気にしてるだ……。


甲冑を脱いだユーリさんは普段から鍛えているのだろうか、肩幅はしっかりしていて、身長も高くてグラマラス体型って言うより屈強なファイターって感じだ。だけど、筋肉質なボディーラインに女性らしさもあるから、きっとアーニャさんは少しばかり気にしているのだろう。


そんな感じで料理が運ばれて来て現れたのは緑黄色野菜の炒め物、アッサリと鶏ガラの出汁が効いたスープ、特大級の骨付き肉、恐らく僕の世界で言う炒飯だろうか。いつもと違う晩御飯が食卓に並ぶ。


「さすがマスキュラーさんにアーニャ。私の好物ばかりではないか。」


「はい、ユーリ様。今日はお嬢との久し振りの再会。なので、ワシとアーニャが特製の料理をおもてなしをさせて頂きます。」


「うん。」


爺やさんは料理を運び出した後に深々とお辞儀をした後にアーニャさんはコクリと首を縦に振り頷く。


「では頂きます。」


ユーリさんは両手を合わせて頂きますをしてからなんとスプーンとフォークを片手にムシャムシャと豪快に食べ始める。なんかめちゃくちゃ貪り食う野獣のようだ……


「こらこら、ユーリ。食べ物は逃げないからゆっくり食べなよ。」


「お腹が空いてしまったのだ。ウチの胃袋はご機嫌が斜めなんだぞ?」


「もう昔からアンタは食い物の執着は凄いのね。」


僕は呆然とユーリさんの豪快ぶりと食欲旺盛に驚きを隠せないって言うか軽く引いている。


「あぁ、泰虎。気にしなくて良いからね。あの娘は昔からそうなの。食べる事が至福の時って言うか、食欲全開って言うか。竜騎兵って戦場では常に前線で戦うから体力勝負だから食べる時に食べないとスタミナが持たないのよ。」


「え……まぁ。」


「おかわり~!」


え?いつの間にか全部綺麗に無くなってるんだけど……あのお肉は僕の顔サイズくらいあったよね?食べたって言うより丸呑みだよね?てか、お代わりまでするの?!


食べる事に集中すると一切無言で空腹の獣が餌にありつける事に生きると言う本能が全面に推し出ているような絵面。


ユーリさんは粗方お代わりをして空腹が満たされた後、やっとシリアさんと僕との会話に混じる。あんなに食べてお腹とか苦しくないのかな?


「ところで少年。」


「はい?」


「君はどうやって、この世界にやって来たのだ?」


僕は口の中に入っている骨付き肉を飲み込んでから服の中からジィジの蔵の中にあった西洋を思わせる黒い懐中時計を取り出しテーズルの上に静かに置く。


「僕は祖父の蔵を整理していた時にこの懐中時計を見つけて、ネジを巻いた途端、針は反時計回りに動き出して気が付いたら、この世界にやってきました。」


「この懐中時計って……確か、あの伝説の人斬り半治郎が持っていたとされるやつなのか?」


「やはり知っていますか?」

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