第5話 ジャッキー・ゾリッパー
「構いませんわ。責任は私が取りますわ。場合よっては戦闘の許可もしますわ。」
「分かったわ。爺や!すぐに向かうぞ。」
「かしこまりました。お嬢。」
シリアさんは爺やを連れて容疑者の1人マーティン・トスログの自宅付近で張り込みをする為にすぐにこの場から立ち去る。
「泰虎様。」
「はい!僕、頑張って守ります。」
「ウフフ。頼もしいですわ。」
カリファさんはその細く綺麗な手を僕の頰に添えて少し憂いた目で見つめながら言う。
「貴方様はとても強く頑張り屋さんです。だから必ず無理はしないで下さいね。では。」
そう言った後にカリファさんは踵を返してスタスタと現場から離れて行く。何か僕って心配されてばかりだ。そんなに頼りないって見えるのかな?
僕はエルザさんの護衛の為に向かうけど、お店以外の場所が分からないや……
「あら、どうしたの?こんなところで立ち止まって。」
「え?あ……」
僕はどうして良いか分からなくて少し立ち往生していたら、さっきの監察医であるアイリさんに話しかけられる。
「貴方はベルト警部と一緒に居た人の付き人?」
「はい。寺島泰虎と言います。カリファさんに頼まれてジャッキー・ゾリッパーの被害者の女性を護衛する事になったんですが、働いているお店以外が分からなくて……」
「あら、そう言う事ね。私はアイリ・ウォーノス。監察医で産婦人科医なの。ちょうど私は署に戻るから名簿がある部屋まで案内するね。」
「はい。ありがとうございます!」
僕はペコリと頭を下げるとアイリさんと一緒に馬車に乗せられながら道中、話し込む。
「寺島さんってまだ若いのね。お幾つかしら?」
「こう見えて22歳なんです。昔から見た目が子供っぽいから色々と大変でして……」
「あら、そんな事ないわ。こんな可愛らしい男の子が居ても良いと思うわ。それに私も寺島さんくらいの子供が居てもおかしくないわ。」
「アイリさんは、ご結婚されてないのですか?」
「ううん。結婚してたけど、事故で主人は亡くなって、その時も私のお腹にいた子供も……」
「え?あ……ご、ごめんなさい!!僕知らないで……」
「良いのよ。もう昔の話だし。それに……過去は消せないから私は今を一生懸命に生きるしかないのよ。主人やお腹にいた子供の分までね。」
なんか物凄く申し訳ない事をしてしまった。僕が無知なせいもあるのか無神経な事を聞いてしまった。アイリさんにとっては辛い過去を思い出させてしまった……
「そんな気にしなくて良いのよ。どうやら着いたみたいだし案内するわね。」
僕はアイリさんと一緒に馬車を降りて警察署内にある、あらゆる事件の被害者の名簿がある部屋へ案内されてからアイリさんは監察の仕事があるからという事で、この場から立ち去る。
「え~っと……エルザ・トライドは……あった。これこれ。」
僕はエルザさんの住所をメモしてから部屋から出ていくとアイリさんの事を考える。
人は誰でも幸福な人生ばかりを歩んできたとは限らない。誰しも忘れたい過去がある。だけど、その過去を乗り越えて今を一生懸命に生きている。
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