第4話 初めてのお仕事

待合室には座り心地の良いソファーが置かれ暇つぶしの雑誌やらタバコの灰皿とか置かれている。ちなみに雑誌のページをパラパラとめくるが内容は過激な内容。


「お待たせしました~。どうぞこちらへ。」


妖しく色気のある声で現れたのはエルドラことエルザ・トライド。ジャッキー・ゾリッパーの魔の手から逃れられた人物。僕は固唾を飲みながらエルドラに案内されるがままに部屋に立ち入る。


部屋の中に入るとそこは薄明るい電気が1つだけ着いていてベッドがあり、奥には浴室がある。


「どうぞ座ってくださ~い。」


僕は無言のままベッドの上に座る。


「今日は指名してくれてありがとう。ここは初めて?」


「はい。初めて来ました。」


「私エルドラって言います。宜しくお願いします。」


「よろしくお願いします。エルザ・トライドさん。」


「え……?」


僕はエルザさんを源氏名でなく敢えて本名で呼んだ事によって、さっきまでの営業スマイルと猫なでの声からキョトンとした顔で僕を見る。


「どうして私の名前を?」


「僕は警察ではないですが、その関係でお客として貴女に話を聞きに来ました。」


「……」


「先日、貴女はジャッキー・ゾリッパーに襲われたただ1人の生存者。ジャッキー・ゾリッパーについて何か教えて頂けますか?」


「……」


エルザさんは顔を俯いたまま無言を貫いている。あんまり話したくはないのだろう。そりゃそうだ。彼女にとっては怖い経験だから出来れば1日でも早く忘れたいのだろう。


「僕は無理強いはしません。話したくないのなら、今、この場で立ち去ります。だけど、貴女が唯一の生存者であり事件の手掛かりを握っています。今後、貴女が再びジャッキー・ゾリッパーに狙われる可能性はありますし、もし狙われるなら僕が全力で貴女を守ります。」


「……本当に?」


するとエルザさんは何か思い詰めていたのかポロポロと涙を流し始める。


さらにエルザさんは涙を流しながら感情を押し殺すように続けて僕に話をしてくれる。


「ある日、私の元に宛名の分からない手紙が郵便ポストに入れられて、封を開けてみると赤いインクで『次は貴様が私の生け贄となる。ジャッキー・ゾリッパー』って書かれていて、怖くなって警察に相談したけどイタズラだって事で済まされて門前払い。だけど事件が起きてから警察は手のひらを返したように根ほり葉ほり聞いてきて、嫌になって覚えていないって行って出て行ったの。だけど入院先から戻ってくるとまた同じような手紙が届いていて、私どうして良いか分からなくて……」


どうやらエルザさんは警察に嫌気が指して何も信じなくなって何も言えない中で日々過ごしているようだ。


それにジャッキー・ゾリッパーはエルザさんの命を狙っている事も予告している。そんな中で日々怯えながら生きていかなくちゃいけないのは僕には出来ない。


「大丈夫です。約束しますよ。僕が貴女を守ります。」


僕はエルザさんの手をぎゅっと握り真っ直ぐな目で答える。


「坊やって年上の女を泣かせるのが上手ね。」


「僕、坊やって言われる年じゃないです。」


エルザさんは目は腫らしているけど何処か安心しきった顔で僕をからかい僕のオデコにコツンっと指を当てる。


それからエルザさんは僕を信じてくれたのか僕の聞きたい事を洗いざらい話してくれて、いつの間にか時間が来てしまったので僕はお暇する事に店を出る。


エルザさんはお店の外まで送ってくれてお店の前で僕を抱きしめる。僕は心の中で動揺しているけど顔はポーカーフェイスを装ってる。


「どうしたんですか?」


「今度また来たらいっぱいサービスをし・て・あ・げ・る。」


僕はドキッとして顔が熱くなるのが分かる。恥ずかしいなぁ……


「ウフフ。照れちゃって可愛い。」


「もう!馬鹿にしないでくださいよ!」

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