第3話 パーティに加わる魔法使い(仮)

「なるほど、それが賊を壊滅させたっていう技か納得した。」



すると礼拝堂の出入り口から、ひょっこりとシリアさんが出てくる。


「爺やに泰虎。こんな所にどうしたんだ?」


「はい。僕、ちょっと礼拝堂を見たくて爺やさんに道案内をしてもらいました。」


「そうか。至って普通の礼拝堂だが見学しても良いぞ。」


僕はシリアさんに案内されて礼拝堂の中へと入って行くと声が響くような造りと何か神秘的な趣き、正面にはアント家の紋章である剣に荊が巻き付かれて剣の柄には薔薇の花びらのステンドグラスが貼られている。


僕の居た世界のヨーロッパの聖堂や教会といった共通している部分も思わせるその造りには一種の芸術と捉えられる美しさもある。


「ここはアント家が代々、朝のミサとして祈りをしているのだ。祀っているのは神ではなく、アント家のご先祖だがな。天国で現世の私達が無病息災と健康に幸福であるように欠かさず祈っているのだ。」


毎日、祈りをしている事に少し胸が痛む僕。それは、忙しさを理由に中々、日本人である僕達はご先祖を大事に出来ていないというのがある。


何故、先祖を敬い大事にするのかと言うと僕なりの持論だが、ご先祖様は霊的な話だが少なからず現世にいる僕達を魔障と言われる簡単に言えば不運から守ってくれる時がある。


その不運は時として自分が生きるか死ぬかの九死に一生を体験する場合がある。ご先祖様の力があって不運から助けてもらうって話もあるけど、最近の僕らは忙しさを理由にご先祖の墓参りや敬いを忘れがち。


だからシリアさんは毎日、毎朝欠かさずにご先祖様を敬い、祈っている姿を見て僕は少し胸が痛んだ。


「そう言えば今日は泰虎の職業とパーティの登録をする日だな。朝食を食べ終わった後に占いお姐マカオの所に行く。」


「職業とパーティ登録するのに占い師の所に行くのですか?」


「まぁ職業とパーティを登録するだけでは生活が成り立たないので占いも生業としているのだ。マカオの占いは当たると言う噂だ。どうせだから占ってもらっても良いと思うぞ。」


「占いですか……」


占いは僕の居た世界にもあったモノ。それは吉兆を占いまたこれから起きる出来事の予測に対しての言動や慎みなどを予知すると言われている。


「マカオの占いは百発百中で当たると有名だ。そんなに疑ぐり深くならなくても大丈夫だ。」


「そうだ坊主。これはお前のか?」


すると爺やさんの燕尾服の上着の内ポケットからジィジの蔵から出てきた懐中時計を差し出される。


「あ!そういえば懐中時計!」


「やはり坊主のだったか、ほれ大事なモノなんだろう。」


「ありがとうございます!」


「さて、朝食にしよう。」


「そうですな。」


僕達は朝食を食べるためにアント家の大食堂へと向かって、その大食堂の中は兎に角デカイし広い。何処のお金持ちが持ってるかのような長く長方形のテーブル。


席に座る僕とシリアさんの近くにはメイドさんも食器を持ちながら立っている。なんか違和感しかないよ。本当に貴族の屋敷で働く人って執事が居たりメイドさんが居たりするんだね。

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