第3話 パーティに加わる魔法使い(仮)

午後の貴族の生活は、狩り、鷹狩り、資産などの点検、視察。


夕食。夕方のお祈りを済ませたのち、晩餐はお城や領土内の邸宅のホールで開催。


夜。晩餐の後は、音楽、ダンス、ジャグラー、アクロバット、道化師などの娯楽で仲間たちや家族と楽しみ、主人や貴族が就寝時間を決め、お祈りして就寝。


朝は早起きで、領主としての重要でかつ難しい仕事は、午前中に詰め込んで終わらせ、午後は人脈構築のための行事で、現在の接待ゴルフ。そして夜は、もっと身近な人との交流・歓談って感じらしい。


午前は緊張感が高く神経をすり減らしそうだけど、午前、午後、夜になるにつれて、よりリラックスできる内容になっている。


それが中世貴族のワークライフバランスと呼ばれるもの。


ちなみにワークライフバランスとは『仕事と生活の調和』と訳され、『国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる』ことを指す。


つまり仕事をしながらもプライベートも充実させる今の社会には必要不可欠と呼ばれるもの。仕事ばっかりだと肉体的にも精神的にも疲れてしまうが、プライベートばかりではお金が無くなって生活が成り立たなくなる。


そこが難しい問題の世の中。話は逸れてしまったが改めてシリアさんの仕事って何だろうか?僕はシリアさんに質問をしてみる。


「あのシリアさん。シリアさんのお仕事って何ですか?」


「私の仕事はさっきも話した通り私は貴族であり領主もしている基本的には領土の業務、政治関係、穀物の収穫、供給の報告やお金に関する報告や家臣や小作人の不平不満を聞き現状を改善するって言ったのが仕事だ。」


やはりシリアさんは僕の予想通り世界史とかでいう、かつての封建制度でいう貴族や領主といった仕事をしている模様。しかし、シリアさんは続けて言う。


「さらに私の家のアント家は武芸貴族であり剣士の家系。マーロ帝国の皇帝バルガ様より時たま国内または同盟国での揉め事やキナ臭い案件を請け負う裏の番犬としての仕事もしている。泰虎が壊滅した賊の組織は本来は私が壊滅するはずだったんだが、だいたいそんな感じの仕事だ。それでも私のパーティに加わるか?」


つまりシリアさんの家は貴族でありながらも裏世界の番人としての役割をしているという事になる。つまりシリアさんのパーティに加わるって事は少なからず自分の身に危険を置くという事にもなる。


だけどシリアさん達には助けられた恩もあるし、何よりも行く宛もない。取り敢えず悪い人達じゃ無さそうだから少しでも自分の力になろうって思う。


「分かりました。僕は特に行く宛もありませんし、現にシリアさんに助けてもらった身です。助けられた命を何か恩で返したいと思います。貴族の風習や習慣はよく分かりませんが、宜しくお願いします。」


僕はペコリと頭を下げてシリアさんに改めてパーティに加わる事をお願いする。


「そうか。君はとても義理と人情に厚い男だな。そういう男は私は好きだぞ泰虎。」


シリアさんは僕の頭を撫でるとニシシと笑う。普段の僕なら子供扱いされる事に嫌な感じがあるけどシリアさんだけは何か違った。特別深い意味はないのかもしれないけど『好きだぞ』って言われて何か胸がときめいた気がする。

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