第2話 魔法使い(仮)

「おいおい仲間達が死んでるじゃねぇーかよ。」


「まさかガキに殺されたとか?」


「このガキをどうやって殺す~?」


「ヒャッハー血祭りに上げようぜ~」


「人身売買の競売でもいいんじゃねぇ?!」


「そりゃ良いなぁ!」


「顔の良いガキは高値が付くし!」


「何処ぞの偉い国の人の慰み者とかさ!」


「それか俺達の奴隷とかさ!」


「あぁ!それも良いよなぁ!憂さ晴らしにもなりそうだわ!!」


「さて、どうやって痛め付けてやろうか?」


さっきから怒号の如く世紀末の賊達はゲスく醜いこの他ない真性なクズのような顔をしては、もはや人とは思えない非道徳的な発言。聞いていて胸糞悪い。


僕が聞く分には胸糞悪いで済むけど小さい女の子の目の前で大人がそういう発言をするとは、どんな教育をされて生きてきたんだ?って疑問に思う。


「その口、閉じろ……」


「あん?なんだって……」


僕はその瞬間に下段の構えから【無拍子突き】を下腹部に繰り出す。簡単に言えばノーモーション突き。


剣は賊の身体を貫通してドクドクと血を流して力無く倒れこむと一瞬だけ賊達が何が起きたのか訳が分からず立ち尽くす。


少しだけ間を置いた後に賊達は気付く、僕のやった行為は仲間殺し。つまりは宣戦布告を意味する。


「やっちまえぇぇええッ!!」


すると賊達は一斉に僕に斬りかかろうとするが正直な話だが動きが遅い……門下生の中学生より動きが遅い。


僕は剣の柄を1人の賊の顎に打ち込むと綺麗に入ったのか目が白眼を剥いて倒れこみ、また別の賊が上から剣を振り向いた時、そのまま右側に入り身をしながら【しのぎ】という受け流しの技で賊の右脇へ切り込む。


僕は女の子の手を取り走り出す。このままだと女の子を巻き込んじゃうかもしれない。そうなると知らないとは言え夢見が悪いし胸糞悪い。


「お兄ちゃん!」


「チッ!」


賊の1人が弓矢で射殺そうと背後から狙ったが女の子の一声でなんとかギリギリで避けられた。女の子を連れて林の中に逃げ込む。


手を繋いで逃げるのは少し面倒だからこうする!


「え?!お兄ちゃん?!」


「良いから少しだけ!」


うん。お姫様抱っこである。おんぶだとさっきみたいに後ろから弓矢で刺される可能性がある。走って行くと洞窟を発見し女の子をその中に入れる。


「良い。絶対に自分から出てきちゃダメだよ?」


「お兄ちゃんは?」


「僕は外の悪い奴等を成敗しに行く。」


「お兄ちゃん……」


すると女の子はお父さんの事を思い出して怖くなったのかクリっとした可愛い目から涙をボロボロと流す。


「お兄ちゃん……死んじゃ嫌だよ?」


「約束する。絶対に僕は死なないよ?」


段々と賊達の声が近付いてきたので、そろそろ僕は賊の元へと顔を出す。

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