第1話 僕のプロフィール

休憩しながら日曜のお昼番組をボォーっとしながら見ていると台所で洗い物を終えた母さんが居間にやってくる。


「泰虎。少しお願いがあるんだけど良い?」


「ん~?」


「お爺ちゃんの蔵を整理して欲しいの。」


「ジィジの?」


「結構、骨董品の収集癖があったでしょ?亡くなってから、だいぶ経つから片付けて市場で売ろうってね。蔵の中に閉まっておくより誰かに必要とされた方が良いと思ってね。」


ジィジは僕に古武術の体術と剣術の基礎を叩き込んだ人。稽古中は厳しかったけどユーモアがあって、出来た事には褒めてくれる人だった。


プライベートだと僕はいつも、ジィジにベッタリだった。僕が悪い事して父さんや母さんに叱られても、ジィジは『もう虎は反省してるから、それくらいにしてやれ。』っていつも味方で居てくれた。


ジィジがいつも言っていた事は『強きを挫き弱きを助ける男になれ。』『男がやっちゃダメな事は食べ物を粗末にする事、女の子を泣かせる事。』『優しくなるには自分が強くなる事。』


ジィジに着いて行くと何かと骨董市場に連れて行かれたな。壺やら器やら掛け軸に巻物に屏風絵とかさ。僕は詰まらなそうにしてジィジの骨董品の買い物をした後に『お父さんとお母さんには内緒だからね。』って言いながら、いつもファミレスのランチをご馳走になっていた。


うん。今で言う口止め料ってやつ。おまけに僕が成長して大きくなる事に知恵が付いてくると、ランチと一緒にお小遣い上乗せしたのも思い出。


ジィジが亡くなってから、もう何年か?10年近くかな?いつも日曜の稽古が終わってお昼ご飯を食べ終わった後は敷地内の隅っこに煙草を吹かしてたなぁ。


僕はジィジの蔵に向かいながら鍵をクルクル回し、下駄のカラン、カランと足音を立てて、ジィジの思い出にふけりながら歩いて行くとジィジの骨董品が眠る蔵にたどり着く。


まぁ、骨董品というかガラクタと言うか沢山あるには間違いないから着替えるのも面倒だし、胴着のまんまで良いかな。


鍵を差し込んで蔵を開けてみると長年放置していたせいか埃っぽいしカビ臭いしあちらこちらに蜘蛛の巣もはってるし何よりも薄暗い。


僕はあらかじめ持ってきたビニールシートを広げて手前からある骨董品を丁寧に並べていく事にはする。僕には骨董品の価値は分からないけど、こんな物にも高い価値のあるのかもしれないので一つ一つ丁寧に運び出す。


壺に器に巻物に屏風。水墨画に彫刻品。なにこれ?見てみると春画だった。因みに春画とは昔で言う18禁の絵である。ジィジめこんな物も買っていたのか……

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