第46話 最年少Bランク冒険者

 翌日、ギルドへと赴いた俺達に、伯爵との謁見の日取りが伝えられた。

 ってか、明日なんだってさ。随分とバタバタだな……

 基本的にギルドから全ての報告は為されているので、改めて俺達から話すことはなく、伯爵から問われたことにだけ粛々と答えていればいいらしい。


 それと箔付けのため、どうせなら謁見前に冒険者ランクを上げておいた方がいいということで、俺のCランクへの昇格が早々に決まった。

 一部のギルド職員からはアケフのDランクへの特別昇格なんて提案まであり、協議の俎上にも乗ったそうだが、そこはどれほど才能があっても最低でも18歳にならないとDランクには昇格させない――とするギルドの方針は堅持されることになり、昇格はそれまで持ち越しとなった。

 まぁ俺と違いアケフなら、DランクになればすぐにでもCランクの昇格試験にも受かるだろうから、俺が追い付かれる日もそう遠くなさそうだ。


 そうそう、これまで言い忘れていたが、歳の話が出たのでついでに。

 この世界では新年とともに皆が1歳年をとる制度になっている。所謂、数え年というやつだ。前世では近世以前の東アジアを中心に運用されていたこの制度は、こちらでは全世界共通の制度となっているようだが、効率的ではあるので俺はそれで構わない。


 ……ってか、それがいい。


 なんたって前世での俺の誕生日は、なんとあの大震災が発生した日だ。

 この気持ちは同日に生まれた日本人にしか分からないだろう。あの未曽有の災害が発生したとき、俺は既に誕生日を祝うなんて歳ではなかったが、それでもその翌年から俺の誕生日は黙禱と共にあった。多分8月15日生まれの人とかも同じ思いなんだろうが、そっちの方は既に80年近くが経過し、歴史の一部になりかけている部分もあるので、俺の方とはまた感覚が違うのかもしれない。

 いずれにしても、誕生日がいつであろうと、日本では4月生まれも翌年の3月生まれも同学年として義務教育を施しているのだから、全員が新年に1歳年をとる制度で何も問題はないのだ。



 さて、どーでもいい前置きが長くなってしまったが、本日の主役はイヨである。


 彼女は今日、Bランクに昇格した。


 これでアケフと俺が加入する以前からのハイロードのオリジナルメンバーは全員がBランクになった。最早押しも押されぬBランクパーティーと言っても過言ではない。


 そしてその昇格に華を添えたのは、コペルニク伯爵領史上……という肩書だった。

 これまでに23歳でのBランクは存在したようだが、イヨは23歳まであと3か月も残している。

 更に付言すれば、彼女は、派手な手柄を立て難く昇格には不向きとされる中衛の斥候職である。一般に昇格に向いているのは前衛の戦闘職であり、その戦闘職は概して男性向きである。事実これまでの最年少は戦闘職の男性であったという。

 

 そんな中で彼女は若くから斥候職としての研鑽を積み、数々の実績を挙げ、今回の依頼では隠し階段の入り口を発見するという手柄を挙げた。更に弓の腕も確かであるし、能力値においても俺がこれまでにステータス画面を見た冒険者の中で、彼女以上の敏捷値を持つ者は存在しなかった。

 ギルマスの推薦が必要とされるBランクへの昇格に当たり、多くの魔核を伯爵に献上することに繋がった隠し階段の入り口発見は、斥候職の資質として高く評価されたそうだ。もしかするとサーギル辺りが特に推してくれたのかもしれない。


 ――パーティーメンバーに恵まれたな。


 そんな心無いやっかみも聞こえてきたが、あのパーティーで共に戦える者などそうは存在しない。嘘だと思うなら何体ものオーガを同時に相手取るようなパーティーで一緒に戦ってみればいい。少しでも気を抜けば一撃必殺のオーガの拳が中衛職はおろか後衛職にまで迫ってくるのだ。前衛職ならまだしも、中衛や後衛にとってそれが如何に恐ろしいことかは、経験者である俺が一番分かっているつもりだ。


 いずれにしてもイヨは最年少Bランク冒険者という偉業を成し遂げた。

 多分、順当にいけば数年後にはアケフがそれを大幅に更新し、タイトルホルダーはまた男の戦闘職に戻ってしまうんだろうけど、それでも彼女の偉業は色褪せることはないだろう。



■■■■■



 さて、既に述べたように俺はCランク冒険者になった。


 イヨのように俺と同い年で最年少Bランク冒険者に昇格するようなレアケースは別にしても、22歳でのCランクは決して悪くない昇格スピードである。まして冒険者稼業に就いてからたった2年半であることを考えれば、これは快挙と言っても過言ではないだろう。


 そんなわけで今晩、パーティーの皆がイヨのBランク昇格と俺のCランク昇格を祝う会を急遽催してくれることになった。

 そんな仲間達の気持ちはとても嬉しかったのだが、昨晩もギルドで遅くまで吞んで、明日も伯爵との謁見が控えていることもあり、俺は1時間程でその宴の席を立つと、残りの時間をウキラと過ごすべく早々に家路へと就いたのであった。



「帰ったよ、ウキラ」

「お帰り、ライホー。Cランクに昇格したんだって?おめでとー!」

「おぅ、知ってたのか?」

「へへっ、さっきおねーちゃんに聞いちゃった」


 チッ、トゥーラのヤツめ。俺の口から伝えたかったのに……


「あっゴメンね、ライホー。やっぱり自分で伝えたかった?」

「あぁ、いいんだ。ウキラが悪いわけじゃないからな」

「でも――だからって、おねーちゃんをイジメないでね?」


 ウキラが甘えるように銀色の瞳を潤ませ、上目遣いで見詰めてくる。カ、カワイイ……

 とても今の俺より4つも年上の未亡人とは思えん。


「今日はパーティーの皆がお祝いしてくれるんじゃなかったの?」

「それもトゥーラに聞いたのか?」

「うん……」

「俺だけ早めに切り上げてきたんだ。昨日も遅かったし、明日も分からないからな」


 ――嬉しい!と言ってウキラが抱きついてくる。


 ウキラから女性特有の甘い香りが漂ってくる。公実きみざねじゃない方の息子が元気になってきた。

 俺は抱きついてきたウキラをそのまま強く抱き寄せると、奥の間に連れ込んで押し倒した。


 ――ちょっ、まだお客さんが……起き…て…る……


 そう言って僅かな抵抗を示すウキラであったが、明らかに本気の抵抗ではない。

 俺はウキラの服を無理矢理剥ぎ取ると荒々しく彼女の薄い胸を揉みしだき、ここ数日間の冒険中に貯め込んでいた精を吐き出したのであった。

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