第43話 ステータス画面
俺達がせっせと集めてギルドに納めていた魔核はこんな感じで使われていたんだな……
今回の依頼で俺達は旧領主家の詰めの城に踏み込み、更にその中でも秘匿されていた領域を暴いた。そこで俺達が見たのは、ギルドが冒険者から買い上げていた魔核の行きつく先――つまりは魔核を使った魔法陣の数々であった。
そこには硬質化した壁を構築するための魔法陣や武具の劣化を防ぐための魔法陣など、貴族クラスの連中が密かに伝承しているであろう幾つかの魔法陣があり、それぞれの魔法陣には魔素を供給するための魔核がふんだんに配されていた。
また、それらの魔法陣の片隅には魔核を大量に収めた函があり、そこからは魔力の流れを感じる一筋の線が走っていた。おそらく、地下1階のゴーレムを顕現したり、他にも何かしらの魔道具を稼働したりするため、城内の各所に魔力を供給していたのであろう。
どうやら魔核は魔法陣などを介在して魔法を行使するために使うらしい。動力という意味では前世における電気や石油のような存在のようで、貴族など一部の者が身を守るため、あるいは生活の質を高めるために充てているようだ。
彼らが魔核を買い取ってこのように使用していることは、ギルド職員のサーギルは勿論、パープルやモーリーなど魔法組は知っていたようだが、魔法陣の構成はこのような機会でもなければあまり一般人の目に触れる代物ではないようで、パープルは必死になって希少な魔法陣の構成を書き写していた。なんでも魔核を抜いて魔素の供給が途絶えてしまうと魔法陣は消えてしまうのだとか。
パープルの書写が終わると俺達は空間魔法に魔核を収納する。
既に魔素が枯渇して抜け殻と化しているモノもかなり多かったが、それらを差し引いても旧領主家が貯め込んでいた魔核はそれなりの量になり、サーギル曰く、伯爵家に献上すれば相当な貢献に値する……らしい。
□□□
魔核を収納した俺達は、改めて武具と宝飾品を品定めする。
そのとき俺はふと思う。――ステータス画面ってどこまで解析することができるんだろう?と。
俺がそう考えたのは、ゴーレムとの戦いでステータス画面を見ることができたからだ。
土や石を魔力で擬人化しただけの物体の能力値を測定できるのだ。もしかすると無生物のステータスも表示することが能うのかもしれない――
俺は旧領主家が秘蔵していた鎧のステータスを表示してみる。
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種 別 鎧
材 質 竜属ワイバーン種の革10
特殊能力 火耐性高
能力変動 敏捷-1
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 10
攻 撃 0 0
防 御 12 12
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おぅ、見えるじゃん!ってか、それなら教えといてくれよ……
なんかポンコツ神が魔物のステータスも見られます的なことをドヤって言っていた記憶が微かに残っているが、無生物でも見られるんじゃねーか!ポンコツが!!
毒づいた俺は、鎧の隣にあった盾のステータスも表示してみる。
ふつーに表示される。ヤベーな、この能力。ゲームとかじゃユーザーにとっては当然の機能に過ぎないが、現実世界で実装されると一般人との差がエグイことになる。
あのポンコツ、身体能力値の加算はエライ渋っていたくせして、この能力はイイんかい?って感じだな。まぁ奴にしてみれば至極当然の力でしかないんだろうが、もう少し神と羽虫との差を自覚した方がいいな。
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種 別 大盾
材 質 鋼8、ミスリル2
特殊能力 魔力浸透で攻撃・防御+6
能力変動 敏捷-2
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 10
攻 撃 7 7
防 御 13 13
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なるほど、材質の横の数値は割合のようだ。この大盾は鋼が8割、ミスリルが2割使われているってことだな。
んで、魔力を流すと攻撃と防御が+6か。魔力を流せるミスリル混の武具が重宝されるわけだ。
俺は次の鎚矛に目を移す。モーリーがスゲェ欲しがってたやつだな。
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種 別 鎚矛
材 質 鋼7、ミスリル2、魔核1
特殊能力 魔核使用で魔法増強+3
魔力浸透で攻撃+6
能力変動 なし
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 10
攻 撃 9 9
防 御 0 0
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ほう、魔核は魔法を増強できるんだ。魔素が尽きたら別の魔核に交換もできるようだし、なかなかの優れものだな。
そういやパープルも魔核付きの杖を持っていたな。あれってこの鎚矛の杖バージョンか?後で覗いておこう。
あと、攻撃値は純粋な意味での物理攻撃の値のようだ。魔法攻撃みたいな項目はなく、そういうのは魔核で増強されてるってことなのかな?
その意味では防御の値もそうなんだろう。魔法による攻撃ったって、結局は物理的な破壊に過ぎないんだから、当然と言えば当然だ。
投石による攻撃は物理防御値で判定され、土魔法の土塊を放たれたときは魔法防御値で判定されるなんて変だもんな。最終的には全部、物理的な衝撃に対する防御ってことに収斂されるのだろう。
まぁワイバーンの革鎧みたく、火耐性とかの特殊能力が付与されていれば火魔法には強いとかはあるんだろうけどさ。
さて、次のこの指輪がスゲェ気になってたんだよねぇ。
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種 別 指輪
材 質 ミスリル6、魔核4
特殊能力 魔核使用で魔力回復
能力変動 知力+1
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 10
攻 撃 0 0
防 御 0 0
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これは是非とも欲しいが、パープルと競合しそうだな。性能を知れば多分欲しがるんだろうが、この能力まで明かすのは少なくともサーギルがいるところではやりたくない。迷うところだ。
あとは――この品質ってのと基礎値、現在値ってヤツの検証だな。
俺は使い込まれた自分の片手剣と丸小盾のステータスを見る。
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種 別 片手剣
材 質 鋼10
特殊能力 なし
能力変動 なし
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 7
攻 撃 11 7
防 御 0 0
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種 別 丸小盾
材 質 鋼10
特殊能力 なし
能力変動 なし
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 7
攻 撃 5 3
防 御 9 6
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そういうことか。品質は10が最高値で、そこから劣化や破損などで数値が落ちていくようだ。そして落ちた分だけ攻撃と防御の値が低下するんだろう。
俺の剣も刃毀れが酷くなれば高い金払って研師に研いでもらってはいるんだけれど、どうしても研ぎ減りしたり金属自体が経年劣化したりするから、数値は低下してしまうようだ。
アケフがお師匠から贈られた剣はどうなんだろ?
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種 別 両手剣
材 質 鋼7、ミスリル3
特殊能力 魔力浸透で攻撃+9
能力変動 敏捷-1
【基礎値】 【現在値】
品 質 10 10
攻 撃 18 18
防 御 0 0
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斬れるはずだよ。この攻撃値だもん。しかも品質が落ちていない。さっき石ゴーレムを斬ったばっかだよなぁ?
そういやお師匠が言ってたっけ。魔力を流して硬質化しているときはほぼ刃毀れすることはないし、硬質化していないときに負った細かな刃毀れも復元師に依頼すれば復元できるって……。
お師匠は詳しい仕組みまでは言わなかったけれど、モーリーが言うには、ミスリルには形状を記憶して元の状態に戻ろうとする性質があるらしい。なのでミスリル混の武器は刃毀れしても研師が研ぐのではなく、補充する素材を用意して特殊な魔法陣に魔力を流して復元させるんだとか。そしてそれを行うのが研師よりも高給取りの復元師って職らしい。
同じくモーリー曰く、ミスリルはそれ自体然して硬度が高いわけではなく、武具に使用する場合は他の鉱物に混ぜるのが一般的だそうだ。
そしてミスリルの割合が高ければ高いほど魔力を流した際の効果は上がるとのことで、確かに混合率2割の大盾よりも3割のアケフの剣の方が攻撃や防御の上昇値は高い。しかし配合割合が高い武具を打つには相応の技量が求められるため、3割ものミスリルが混じった武具はなかなか存在しないそうである。なお、後に知ったのだが、鋼の場合は3割以上ミスリルを混ぜてしまうと逆に全体としての品質は落ちるそうで、アケフの剣は限界ギリギリを極めた逸品なのだろう。
最後にもう1つ、いや2つ気付いたことがある。
1つは同じ素材であっても数値が異なる場合があることである。
実際に、今回入手したワイバーンの革鎧の防御値は12であるが、俺のは13であった。おそらく同じワイバーンの革であっても個体差や使用した革の部位、あるいは鎧に加工する際の職人の技量などで差がつくのだろう。
もう1つは俺のワイバーンの革鎧、籠手、半長靴は、全て同じ防御値だったことだ。
同じワイバーンの革を使用している以上、防御値が同じになるのは一見すると自然なことのようだが、いわゆるRPGの世界ではそんなことはなく、同じ素材であっても防具の種類によって値が異なっていることが一般的だ。例えば鎧が一番高く、それ以外の防具は低めに設定されていることが多い。そして全ての防具の防御値の合計をそのキャラクターの防御の数値として見做すことが多かった。
しかし現実にはいかに上等な鎧を身に纏っていても、装甲がない部分を攻撃されれば致命的なダメージを受けるし、逆に最も装甲が厚い部分であればダメージは大幅に軽減される。現実世界ではどの部位に攻撃を受けても同じ防御値でダメージ判定が行われる――なんてことはあり得ないのだ。
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……ってか、何度でも言ってやるが、ステータス画面にこんな機能があるなら初めから教えておけよ!ポンコツが!!
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