第24話 エルフ種
少し、エルフ種について触れておこう。
エルフ種に限らず、亜人属は人属よりも少数である。また、異種族間では子を生せないという特性もあるため、彼らは同種族で固まって生きる傾向にある。
とはいえ、彼等も全く人属と交流せずに生きるわけではない。
例えばエルフ種であれば森林内にエルフだけの集落を築き生活するのが一般的であるが、森林近くにある人属の街とは必要に応じて交易や交流を持ち、比較的移住する者も多い。イヨもそうしたエルフの一人である。
特に若いうちはそうした経験を積み、5年、10年してから集落に戻る者が多く、集落内で彼らは人属のしきたりや考え方、国家間の動向などの情報を口伝するのだ。
ここ、バルティカ王国コペルニク伯爵家が治める領都コペルニクは、北の大森林の南限に位置し、そうしたエルフ達が比較的多い街として有名である。
故に他領では滅多に見られない「女エルフ冒険者」というレアケースに遭遇することもままあるのだ。
さて、遥か昔、俺が地球で読んだ□ードス島戦記やその他のファンタジー物語、あるいはファンタジー系ゲームにおいては、普通に何百年も生きる種として紹介されているエルフであるが、この世界ではそうでもなく、その平均寿命は100歳前後といったところだ。
それでもこっちの世界では一般的な人間の平均寿命が50歳そこそこといった感じなので、それと比較すると充分に長命種と捉えられている。
あのポンコツ神が見せてくれた「図解!パンゲア超大陸解説之書」によると、亜人族であるエルフ種の細胞は癌になりにくく、また、その身体は病原菌等への強い抗体を有しているので、身体構造的には然して人属と変わりはないのだが、結果として平均寿命が大幅に伸びる傾向にあるのだという。
まぁ、地球でも医療技術の進展で癌や病原菌などによる死亡者が減少することで平均寿命が伸びているのだから、元々の体質的にそれらに強いのであれば長命であるのは当たり前か。前世では50歳にして膵臓癌で死んだ俺としては羨ましい限りだ。
また、これも種族的な特徴として、紫外線にも強い耐性があるようで、どれほど屋外で活動してもその白磁のような肌は日焼けすることはない。なので結果として老化も遅く、50過ぎまでは普通に若々しいらしい。
なお、美男美女揃いなのは
実は俺もポンコツ神に身体を再構築してもらったとき、視力や聴力等を冒険者の平均値よりも少し高く設定してもらっているが、これらについてもエルフ種並とは言わないまでも、それなりに強化してもらっているので、前世のように50歳で癌で死ぬ可能性は低くなっているはずである。
それと、緊急依頼の後、イヨが俺に送る視線に多分に好意の成分が含まれるようになったのだが、俺にはウキラがいるのであの超絶美貌のイヨに迫られても心変わりすることなどない。キリッ!
「別種族と交尾すると極稀にですが、その種族固有のウイルスに感染する場合があります」
「そして可能性としては更に低いのですが、別種族のウイルスに感染すると最悪の場合、死に至ることもあります」
「経験知として蓄積されるほどの事例がないため、あちらの世界の人々は異種族間の交尾を全く忌諱していませんが、念のため貴方にはお知らせしておきますね」
決してこんなポンコツ神の
絶対に違う!多分違うと思う。違うんじゃないかな?ま、ちょっと覚悟はしておけ……
■■■■■
昼を過ぎた頃、俺達はすでに10体近くのオーガを狩った……ゴメン、俺は0体だけどね。
概ね強力な種は駆逐され、街道方面に迷い出た魔物も領兵によって制圧されたようだ。
ホッと一息、こんなときこそ危ないんだよねぇ、
突如として大森林深層部の方向から4つの強大な魔素が迫ってきた。
その4つはどれも、あの3体のオーガ中最も強力でイギーが最初に相手をしていたオーガに匹敵する魔素であった。
「北東から気配4!いずれもオーガ級!それも強!」
俺は鋭い声で叫ぶ。
「逃げられそう?」
「無理だ!奴ら素早い!」
「なら、私とイギーで1体づつ!パープルも1体頼む。最大火力で!残り1体は3人で何とかして!」
キコは素早く指示を出すとイギーと共に駆け出す。ふと見るとパープルはすでに膨大な魔力をその手に集中し始めていた。
俺はイヨとモーリーを庇うように前に出て剣を握り締める。
オーガ4体かよ……マジで勝ち筋なんてないんだけど?死んじゃうよ、俺。ポンコツ神はそれでいいの?
「ライホー、キコとイギーは心配するな。死にはしない。パープルも1体は確実に仕留める――が、そこで魔力切れだ!暫く使い物にはならない。ボク達で庇いながら戦うんだ!」
「それならイヨはパープルを守って距離を取れ!無理はするな」
「でも……」
逡巡するイヨに俺は怒鳴る。
「委細キコに聞いた。今日のお前さんはダメだ!逃げろ!」
やはりオーガだ!2体そっちに行くぞ――そんな叫び声が聞こえる。前方でキコとイギーが戦い始めたようだ。
2体がこちらに迫る。そこにパープルが練り上げた魔法が放たれた。
耳を劈くほどの大音声と共に、焔が風を纏い踊り狂うが如くオーガに迫る。
なんだ?火魔法と風魔法の同時発射か?んなこともできるのかよ?火力スゲェな……風が酸素を取り込んでるからか?
その魔法をモロに受けた先駆けのオーガは、風に切り裂かれ焔に焼かれ一瞬にして倒れた。
そして同時にパープルも崩れ落ちる。辛うじてイヨがそれを支えて後方に退いていく。
さて、ここからが俺達の出番だな――
残ったオーガも無傷ではなかった。
パープルの魔法の残滓だけで身体中に裂傷と火傷を負い、動きはかなり鈍っている。
俺とモーリーは決然としてイヨたちの前に出る。そして俺は心の中で叫ぶ。
俺たちの戦いはこれからだ!
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