第21話 助っ人

 ギルドから緊急依頼が発せられた。


 それは街に危機が迫ったときに限定されるが、領主からの依頼を受けギルドが冒険者に動員をかけるものである。

 数年に1度は発令されるものであるため、然程珍しいわけではないが、俺が転移してからは初であった。ちょうどアケフに安物の革鎧を譲り、俺はワイバーンの革鎧に変えた頃であった。

 今回の依頼は、大森林の深層部に生息するはずの魔物が街道にまで多数出現したことを受け、その駆除と原因の特定、そして可能であれば解決までを求めるものだった。



 俺が転移したこの街はバルティカ王国の貴族、コペルニク伯爵家が治める領都である。

 パンゲア大陸北西部、バルティカ王国の西海岸に迫り出した小半島に位置するこの街は、南東に位置する王都とは大河で結ばれ、北東方向は大森林を経て北方諸国家群へと至る街道が通じる交通の要衝である。


 領主であるコペルニク伯爵は、この北方諸国家群へと通じる北国街道の危機に際し、即座にギルドに緊急依頼を発した。


「AランクとBランクは森の深層部で原因を調査。可能であればその解決を。現場での細かい判断は各々に一任!」


 ギルドの食事処に集まった冒険者達を前に大音声をあげたのは、ギルドマスターのマールズである。彼の前には各パーティーのリーダーと俺のようなソロの冒険者合わせて50人程が集結し、その指示を待っていた。食事処に入りきらないほかのパーティーメンバーは、依頼の掲示ボード前や屋外の通りにまで屯して聞き耳を立てている。


 総勢で300人になろうかという冒険者達が集う中、ギルマスは続ける。


「ほかの連中は浅層部に展開して可能な限り魔物を狩れ!だが無理はするな。全てを仕留める必要はない。街道に出たのは領兵に任せろ!」


 単純明快である。冒険者達にはこのくらいの指示でちょうどよい。どうせ緻密な指示を出しても守ることはできないし、彼らの持ち味も殺してしまう。


「但し!Fランと18歳以下、そして元D以上のギルド職員は俺と共に北門で待機。領兵を抜けて門に迫る魔物がいれば防衛!」


 既にコペルニク伯爵は北門前方に領兵を展開しつつある。伯爵自身も親衛隊と騎士団を率いて兵士達の後方に陣取っている。

 兵士は集団戦。騎士団は機動戦。それが彼らの持ち味であり、森林や荒地での乱戦には適さない。

 こういう戦いは冒険者の十八番である。常日頃、大森林で狩りをしている彼らには地の利もある。



「ライホー、あんたは私たちのパーティーに入れとさ。ギルマスからの指示だ。アケフの代わりだとよ」


 有無を言わせぬ口調で俺に語りかけたのは、アケフが加入しているパーティー「ハイロード」のリーダー、キコであった。


 いくら腕が立つとはいっても、アケフは未だ17歳である。彼は北門の待機組に入れられている。ここら辺はギルド組織の硬直性というよりは、待機組にも少しは手練れが必要――という事情もあるようだ。つい先日冒険者稼業から足を洗った元Cランクのギルド職員オークリーなども、一般的なEランクの冒険者より余程戦力になるが、あくまでもギルド職員として待機組に属している。


 アケフもその辺は弁えており不満を吐くことはないが、ギルマスも注目の若手有望株であるアケフが抜けることで、ハイロードの戦力は確実に落ちる。大森林の深層部の魔物を相手にするには、安全のためにもアケフに代わる前衛がもう1枚は欲しい。どうやら俺の役割はそれであるらしい。

 アケフに比されるとは俺も随分と高い評価を受けているようだが、ギルマスとしてはこの機会に謎だらけのソロ冒険者の真の実力も把握しておきたい……ってトコなんだろう。


 キコは続ける。


「あんたにはウチの魔法組の護衛に付いてもらう。アケフと比べると剣の腕は数段落ちるようだけど、ホントは強いんだって?アケフがよく言ってるよ」

「無論足手纏いになるつもりはない……が、俺の戦い方はちょっと特殊でな。あまり余所で吹聴してほしくはないんだが」

「あぁそれは当然だね。臨時とはいえパーティーを組んで命を預け合うんだ。その間に見聞きしたことは無闇に口外しないさ」

「助かるよ。俺は武器持ちと飛行系をメインで相手取りたいんだが、それで構わないか?」

「構わないよ。ちょこまかと煩わしいゴブリン共がウチの後衛に襲い掛からないよう、よろしく頼むよ。ゴブリンスレイヤー!」

「あぁ、大物はあんたらに任せるさ。よろしくな」


 俺はハイロードの面々と握手を交わすと、北門前に展開する領兵達の間を通って大森林へと向かった。

 普段は門番をしている顔馴染みの兵士2、3人が俺に気付くとサムズアップをしてくる。


 諸説あります……ってやつだが、地球での元々の意味は「敗者を許せ」だったっけ?善意でやっているのは分かるが、今はあんま嬉しくないぞ。こっちの世界じゃどんな起源があるんだろうな?


 俺はそんなどーでもいいことを考えながら大森林へと歩を進めたのであった。



■■■■■



 現場につくまでの間、俺はハイロードの連中のステータスを確認していた。


 流石はこの街で最も前途有望とされるCランクパーティーであった。皆まだ若いので、能力値はまだ伸びるだろう。そして個々の能力が高いのは勿論であるが、なんといってもパーティーとしてのバランスがいい。ここにアケフが加わればBランクパーティーと比較しても遜色はないであろう。

 ってか、アケフも入れると6名中、4名が魔法持ちって……スゲェな。



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 名前 キコ(アタッカー、美人だがボサボサの赤毛が残念、すっげー勝気)

 種族 人属

 性別 女

 年齢 25

 魔法 生活魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力   11    10

 魔力    7     6

 筋力   11    11

 敏捷   12    12

 知力    8     8

 -------------

 合計   49    47

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 名前 イギー(タンク、デカブツ(190cm位ある?)、とっても寡黙)

 種族 人属

 性別 男

 年齢 26

 魔法 生活魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力   12    11

 魔力    6     5

 筋力   13    13

 敏捷    7     7

 知力    9     9

 -------------

 合計   47    45

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 名前 イヨ(弓使い、美貌エルフ、多分平坦(要確認!)、体調不良?)

 種族 亜人属 エルフ種

 性別 女

 年齢 21

 魔法 生活魔法、空間魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力    8     6

 魔力    6     5

 筋力    9     8

 敏捷   14    12

 知力    8     7

 -------------

 合計   45    38

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 名前 パープル(魔法使い、スカシイケメン、間違いなくイヤミ野郎あくまで個人の見解です

 種族 人属

 性別 男

 年齢 27

 魔法 生活魔法、火魔法、風魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力    7     6

 魔力   13    12

 筋力    5     5

 敏捷    8     8

 知力   15    15

 -------------

 合計   48    46

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 名前 モーリー(治癒師、穏和、聖職者のお手本のよう)

 種族 人属

 性別 男

 年齢 23

 魔法 生活魔法、治癒魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力    7     6

 魔力   11    10

 筋力    7     7

 敏捷    8     8

 知力   12    12

 -------------

 合計   45    43

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 ……ってか、何気に名前欄、便利だなー。特徴とかもメモれるなんて。

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