第15話 道場入門編(1話完結だけれど……)

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 名前 アケフ(ガッキー)

 種族 人属

 性別 男

 年齢 15

 魔法 生活魔法、土魔法


    【基礎値】 【現在値】

 体力    8     5

 魔力    7     6

 筋力    9     7

 敏捷    9     6

 知力    7     5

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 合計   40    29

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 うん???その名前の後ろの括弧書きヤメロ!俺の?ガッキーはそんなんじゃない。


 俺の潜在下の意識は、このステータス画面にかなりの影響を与えるようだ。


 それにしてもガッキ……もとい、アケフ君のステータスは15歳にしてはやはり前途有望だ。

 今は身長も160cm台後半とこの世界の成人男性と比べれば低い方だが、まだ成長期。この先身体が逞しくなり同時に剣術の腕も磨いていけば、魔法持ちということもあり、相当な使い手になるだろう。


「えぇ、お師匠。昨日ギルドで会ったんです」

「おお、お主がコテンパンにやられて逃げ帰ったアレか。なんだかんだとあの豚野郎はそこそこ強いからのう」


 あぁ、やっぱ「オークリー」は「豚野郎」で正解なのか。

 俺のステータス画面が次から「オークリー(豚野郎)」になっていなければよいのだが……


 そんなどうでもいいことを考えつつ、俺は肝心なことを訊ねる。


「それで、入門の方はどうなんだ?実は剣は素人で、基礎から学びたいんだが」

「そうじゃろな。お主の歩き方を見ればその程度は言われんでも分かるわ。手間はかかりそうじゃが、まぁギルドの紹介状もあることだし金さえ払えば構わんぞ」


 流石は銀貨1枚も払った甲斐があるというもの。素晴らしい効果だ。

 そして、かなりの能力値を持つ剣の使い手に教えてもらえるのはありがたい……が、道場主には確認したいことがあるようだ。


「じゃがその前に1つ訊いておきたい。お主、剣はほぼド素人のクセしてなんじゃその装備は?剣と盾は鋼で革鎧の方はワイバーンじゃろ?それ。いいトコのボンボンか?こっちも厄介事には巻き込まれたくはないんでな。できれば少し素性を明かしてもらえんかの?」


 困った……な。こんなことにならないようにギルドの紹介状ってあるんじゃないのか?


「この武具はちょっとした神の伝手で入手したものだ。詳しくは明かしたくないが、明かさなければ弟子入りはできないのか?銀貨1枚もしたんだぜ。その紹介状は」


 俺は期待薄ながらもギルドの威光に縋ってみたが、意外にも効果は覿面であった。


「……まぁ、ギルドからの紹介ならば仕方あるまい。儂もお主が話せるのであれば知っておきたいって程度じゃ。明かせぬのであればそれでも構わん。何かあればギルドも少しはケツを拭いてくれるじゃろうて。いずれ気が向いたら教えてくれればよいわ。指導料は月に金貨1枚。お主ほどの身形の者であれば然程高くはあるまい?」


 ふぅ、助かった。ギルド様々だ。銀貨1枚程度ケチるもんじゃないな。


 にしても、このワイバーンの革鎧ってヤバくねーか?トゥーラといいこの道場主といい、見る者が見れば分かるし、相当の価値なんだろうな。

 早いトコ安モンの革鎧を買って、俺の腕が上がるまでの間の普段使いはそっちに切り替えるとするか……



■■■■■



 俺は、ガッキー改めアケフと対峙している。

 素人とはいえ、とりあえずの力は見たいとのことで、一番下っ端のアケフが俺の相手をしてくれている。


 ちなみにアケフの月謝は銅貨1枚だという。対して俺は金貨1枚。なんと100倍である。


「アケフはまだ15じゃぞ。それに才能もあるしの。儂は取れるところから取る主義じゃ!」


 道場主のBJも真っ青の御立派な思想には涙がちょちょぎれそうになる。

 それにしても周囲の弟子達と比べても、やはりアケフの能力は頭一つ抜けている。

 道場主の筋力13やその他の能力と比べてしまうと見劣りはするが、人属ならば1つでも15ポイント以上の項目があれば超一流ですよ……って言ってたな。あのポンコツ管理者が。

 であれば15歳にして能力値9の項目が2つもあるアケフは充分強い部類なのだろう。



 アケフとの勝負はあっさりとついた。無論、アケフの完勝である。

 オークリーの豚野郎も見る目のないことだ。アケフなんかじゃなく俺の方が圧倒的に弱いのに。

 とは言え、俺もこのまま引き下がるわけにはいかない。このままほかの弟子共に舐められると今後の居心地が悪い。


 パシリ君にはなりたくない。少しはできるところを見せておかないとな……


「スマンが魔法を使ってもいいのか?」

「なんじゃお主、魔法持ちか?無論構わんが、派手なモンをぶっ放して道場を壊すなよ」

「俺の魔法は地味なんでな。残念ながらそんなド派手なコトはできないさ」


 自嘲気味に言うが早いか、俺はアケフに向けて重力魔法を立て続けに4発放った。無論、アケフが重くなるように。


 ゴブリンから逃げたときのように自分を軽く素早くすることもできたが、早くなったときの動きに自分自身の感覚がまだ追い付かない。

 ただ走るだけならば然程影響はないのだが、剣を振るって戦うような細かい動きが求められるものについては、もう少し慣れが必要なようだ。

 それに自分の手の内を全て晒すことを控えたいという理由もある。いつかここにいる連中と命の遣り取りをしなければならない日が来ないとも限らないのだ。

 無論、そんな日が来ないよう祈りたいところだが、あのポンコツ神にそんな祈りは通じないのだから……



 さて、突如として身体が重くなったアケフは明らかに戸惑っていた。

 その隙を突いた俺は、素早く懐に飛び込むと木刀を横薙ぎに一閃する。勝負ありだ。

 やはり魔力消費さえ躊躇わなければアケフレベルにも負けないようだ。


「ほっほ、面白い魔法を使うな、お主。一瞬でアケフの動きが鈍くなったぞい」


 流石は道場を構えているだけはある。道場主には俺の魔法の効果は即座に見抜かれていた。


「その魔法にそこそこの剣の腕が合わされば、タイマンならば相当なところまで行けるの、お主」

「とりあえずはそれが俺の目的だ。よろしく御指導御鞭撻のほどを……」


 俺は道場主改め、お師匠に深々と頭を下げた。



 転移してここまで24時間。

 魔物との初戦闘、冒険者ギルドへの登録、宿屋の確保、そして道場への入門を果たし、俺は充実しまくりのチュートリアルを終えたのであった。

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