第6話 能力値(2)
--------------------
名前 ライホー
種族 人属
性別 男
年齢 20
魔法 生活魔法、空間魔法、重力魔法
【基礎値】 【現在値】
体力 8 8
魔力 10 10
筋力 8 8
敏捷 8 8
知力 11 11
-------------
合計 45 45
--------------------
令和X年、西暦弐阡弐拾X年、回教暦は……
ライホーを恐怖のどん底に陥れた極振り禁止令が発布され、「各項目は最低でも冒険者平均の8以上にすること」が管理者によって厳格に定められた。
そりゃないよ。
せっかく魔法のある世界なんだから強大魔法で無双するのを夢想していたのに……
ってか、これじゃぁ中途半端な魔法戦士なんじゃね?
ゲームとかじゃ一番やっちゃあなんねぇビルドだよね?
魔法戦士って最初はよくても、後半は器用貧乏で使えないキャラの典型だし。
俺もこの割り振りに至るまで幾つかのパターンを考えた。
例えば体力10、筋力11でほかが8の戦士系のビルドとか、敏捷が13でほかが8のNINJYAビルドとか。
でもやっぱり俺、魔法……使いたいんだよねぇ。それも少しでも強いのを。
別に魔王討伐とかを命じられているわけじゃないんだし、尖がった能力は必要ない。あっちの世界で有望なメンバーとパーティーを組めるのかも分からない。
独りでも生き残れること、そして少しでも強い魔法を使うことをメインに据えるなら魔法戦士も悪くないか。
ソロプレイもいけそうだし、コツコツ独りで育成するにはちょうどいいジョブなのかもしれないな。魔法戦士って。転移後はこの
育成ゲーマーの血が徐々に滾りだしてきた。
オラwkwkすっぞ!
そんな感じで魔法使い系のビルドを断念したライホーは、魔法使い寄りの魔法戦士にジョブチェンジした。
参考までにだが、あっちの世界にジョブ制度なんてものは存在しない。これもゲームじゃないんだから当然だ。無論、ジョブスキルなんて都合のいいものも存在しない。
魔法使いっぽい格好の奴が魔法使いで、戦士っぽい格好の奴が戦士である。
そんなん見りゃ分かんだろ?って感じだ。操作系に偽装した具現化系なんて存在しないから安心してほしい。
というわけで、その格好を整えるため、俺は武器と防具も寄越すよう管理者に要望した。
いきなり布の服とヒノキの棒で放り出されても困る……ってか、死ぬ。
俺は管理者が用意した幾つかの武器と防具の中から、鋼の片手剣と前腕部に装着するタイプの丸小盾、額から頬の上部までをカバーする鉢金付きの頭巾――ではネーミングが悪い。行人包にしよう。そして革の軽鎧と籠手、半長靴を選び、軽戦士っぽいスタイルでまとめた。
残念ながら支給品の素材には、ミスリルとかアダマンタイトとかヒヒイロカネとかオリハルコンとかの希少金属はなかったが、あっちの世界ではそれらを除けば武具の素材として鋼は最高位の金属である。
革の方も亜竜種のワイバーンの素材とのことで、数は少ないながらも一般に流通する革素材としては最上位に位置するものである。軽いながらも鋼と同程度の防御力と、高い火耐性も付与されているようだ。
何気に鉢金付きの行人包もワーム種のモンスターの繭から紡いだ稀少な糸で織られており、それなりの耐久性と中程度の麻痺と睡眠への耐性まで付与されているようだ。麻痺耐性と睡眠耐性は、行動不能がそのまま死に繋がるソロプレイヤーにとっては非常に貴重なものである。
「はじまりの町」から中盤レベルの装備でスタートできるのはありがたい……ってか、神レベルの管理者なんだからその程度の支給は当然だろう。
こちとらいきなり魔物が跋扈する異世界に放り出されるんだぞ!
そしていよいよ魔法である。
火や水などの属性魔法は端から棄てている。
全属性持ちのチート能力者ではないのだ。敵によって得手不得手があるであろう属性魔法は危険である。
ソロプレイも想定している俺としては、そんなリスクは極力避けたい。
なお無属性の魔力を放つ魔法もあったのだが、威力の割に魔力消費がエグイらしくとても使い物にはならないそうだ。
ステータス画面の魔法名の脇に簡単な説明も表示されていて助かったわ。
結局、遠距離系や属性魔法はパーティーを組まないと使いどころが難しいものばかりであった。
俺はたっぷり2時間ほど考えた挙句、空間魔法と重力魔法をチョイスした。
空間魔法は……正義。ロマンしかない。
チョイスしないという選択肢は存在し得ない。
説明書きによると、これは異空間を開く魔法で、魔力で紐付けしておけば物や生物を収納できるらしい。なお、時間停止機能はない模様。
もう一つの魔法は、近接戦闘に活かせるんじゃないかと重力魔法にした。
派手にブッパする系ではないが、重力を変化させ、敵を重くしたり、自分を軽くしたりできるらしい。いわゆる敏捷系のバフ、デバフ双方を使用できるのと同じ効果で、お得感もある。
いずれの魔法も、魔力と知力に応じた力を発揮できるとのことで、技術を磨くことはできるものの、スキルレベルなんてものはないらしい。魔法の使い方も個々人の工夫次第らしく、何か新たに派生スキルを覚える――なんてこともない。
ステータス画面はその魔法を使えるか否かだけを示すものであり、あとは知恵と工夫で自分なりに使いこなすしかないようだ。
ちなみに管理者が言うには、貴方の魔力と知力ならばそれなりに戦闘の役に立つと思いますよ……とのことだった。
あと、サービスでステータス画面に小数点以下の表示機能を追加してもらった。
能力として目に見えて大きく影響するのは整数部分からだが、小数点以下も全く影響しないわけではないようだ。
それに筋トレとかしたとき、どのくらい数値が上昇するか分かるのと分からないのではモチベーションが全く違う。
これは結構大きいんじゃないかな?育成ゲーマーの血が騒ぐぜ!
ただ、画面的に見にくいと困るので、小数点以下をどこまで表示するかは調節可能にしてもらってある。あざーす。
あぁ、最後にひとつ忘れていた。
ステータス画面には名前と種族、性別、年齢も表示されるのだが、名前は正式なものを読み取って表示するわけではない。
どうやらこのステータス画面、遺伝子的に刻み込まれたものや測定可能なものしか読み取ることができないようだ。
名前欄は相手から名前を聞いたときなどに自動的に記録されるもので、虚偽申告も見破れないらしい。
それでも、前世では年のせいか人の名前を覚えられなかったオッサンにとっては、一度聞いた内容をメモれるだけでも大変ありがたい。
相手の種族や性別、年齢は正確なものが分かるんだし、それで充分っしょ?
■■■■■
それにしても種族ってどのくらいあるんだろうか。ハーフエルフとかもいるのかしら?
なんてウキウキとしていたら、聞いてもいないのに管理者が教えてくれた。
「そうそう、ハーフエルフみたいな中間種は存在しません。種族が異なると受精しないので」
だそうだ。
なんだか夢も希望もない回答だったが、逆に言えば受精はしないってだけで、コトを致すだけならできるってことだ。エルフみたいな別種族であっても。
それはそれで楽しめる……
なにが?いや、ナニがだよ。分からん奴は分からなくてよろしい。
なんて思っていたら、管理者が聞きたくもない衝撃の事実を告げてきた。
「別種族と交尾すると極稀にですが、その種族固有のウイルスに感染する場合があります」
ウイルス……だと?
「そして可能性としては更に低いのですが、別種族のウイルスに感染すると最悪の場合、死に至ることもあります」
死に至る病……だと?
「経験知として蓄積されるほどの事例がないため、あちらの世界の人々は異種族間の交尾を全く忌諱していませんが、念のため貴方にはお知らせしておきますね」
……だそうで。
そんなほぼゼロの可能性ならあえて聞きたくなかったよ。知らないまま楽しみたかったわ。
知っちまったらいくら可能性が低くても、俺のマグナ……もとい、ニューナンブを使ったロシアンルーレットになっちまうじゃねーか。
なんで言わんでもいいことを言うかなぁ、このポンコツは。
はぁ……夢も希望も無くなったところで、そろそろ行きますかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます